【記事35690】検察審査会が「起訴相当」 東電・勝俣元会長が有罪になる日(日刊ゲンダイ2014年8月2日)
 
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検察審査会が「起訴相当」 東電・勝俣元会長が有罪になる日


 東京第5検察審査会が出した「起訴相当」の議決に拍手喝采が起きている。
 福島県民ら約5700人は2年前、勝俣恒久元会長74など東京電力元幹部ら42人を業務上過失致死傷などで告発したが、東京地検が昨年9月に出した処分は「不起訴」。検察審査会はこれをひっくり返し、勝俣元会長と、原子力担当だった武藤栄、武黒一郎両元副社長について「起訴相当」と議決をした。
 東京地検は再捜査した上で、起訴か不起訴か改めて判断するが、再び不起訴としても、検察審査会がまた「起訴相当」の判断をすれば、強制起訴されて裁判になる。
 日大教授の船山泰範氏刑法がこう言う。
「たくさんの被災者から生活を奪った原発事故の被害の大きさを考えれば、東京電力には重大な注意義務がある。回避措置が不十分だったというのが市民感覚です。旧経営陣の誰がいつ、どのような情報を得て、判断できる立場だったかを明らかにするうえでも検察審査会の議決には意義があります」

■有罪なら最高で禁錮5年か懲役刑
 審査会は、東電が事故前、政府機関の予測に基づき「15・7メートル」の津波を試算していたのに、対策を怠ったと指摘。そのうえで、「従来の予想を大きく超える津波が襲来する可能性に関する報告に接していると考えられ、重要な点について知らなかったという説明は信用できない」と勝俣元会長を一刀両断にした。
 これから焦点になるのは、勝俣元会長らが有罪になるかどうかだ。
 元検事で関西大特任教授の郷原信郎弁護士がこう言う。
「強制起訴したとしても有罪に持ち込むのは至難の業です。審査会は<適切な対策をとるべきだった>と指摘しますが、だったら、どんな対応をすれば津波被害を防げたかを細かく立証しなければなりません。それだけの知識と情報があるのでしょうか」
 もっとも、前出の船山教授の見方はちょっと違う。
「恐らく追加の証拠集めが必要になりますが、勝俣元会長らが有罪になる可能性はあると思います。ポイントは審査会が、<勝俣元会長は巨大津波の予測の報告を受けていたのではないか>など、個別具体的な問題に絞っていることです。<元会長は知っていたのに回避措置をとらなかった>と証言する東電関係者が現れるかもしれません。業務上過失致死傷は最高で5年の禁錮か懲役刑です。同じ過ちを2度と繰り返さないためにも、刑事責任の所在を明らかにすることが必要です」

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