【記事69640】元副社長、保留根回し指示 津波対策で元社員証言、強制起訴公判(福島民友2018年4月25日)
 
参照元
元副社長、保留根回し指示 津波対策で元社員証言、強制起訴公判

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長(78)ら旧経営陣3人の第8回公判が24日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、東電で津波水位を計算する部署の責任者だった元社員の男性が証人で出廷した。
 元社員は、社内会議で被告の一人の武藤栄元副社長(67)が津波対策の保留を決め、国の有識者会議のメンバーを納得させるよう根回しを指示されたと証言した。検察官役の指定弁護士の尋問に答えた。
 社内会議が開催されたのは2008(平成20)年7月。元社員や第5〜7回公判で出廷した別の社員は社内会議に先立ち、津波地震に関する政府見解(長期評価)に基づくと、最大15.7メートルの津波が第1原発を襲う可能性があるとの試算結果を武藤氏に伝えていた。
 元社員は、長期評価の妥当性について社外に検討を依頼するとした武藤氏に対し、有識者が長期評価を重視している点や、当時の原子力安全・保安院に耐震チェックの結果を報告する期限に間に合わないと説明。
 武藤氏は、社外での検討後に対策するので、保安院への報告内容に長期評価を反映しない方針を有識者に伝え、同意を得るよう指示したという。
 その後、元社員らは耐震チェックの審査員を含む5人の有識者に対策保留の方針を伝えた。元社員は法廷で当時の対応を「時間稼ぎとも言える」と証言、「この会議以降、津波対策は進まなかった」と話した。
 元社員は、長期評価を重視する姿勢は部署内で共有されていたと説明し、武藤氏からの指示後も「否定できない認識は変わらなかった」などと話した。また元社員は「(15.7メートルの津波高の)計算があったので、無邪気に事故が想定外とは思いづらい」と述べた。
 次回は27日午前10時から証人尋問を行う。

KEY_WORD:FUKU1_: