【記事78880】検察官役指定弁護士「情報収集怠り、重大な結果招いた」 東電強制起訴の論告公判(毎日新聞2018年12月26日)
 
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検察官役指定弁護士「情報収集怠り、重大な結果招いた」 東電強制起訴の論告公判

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人に対する東京地裁(永渕健一裁判長)の論告公判で、検察官役指定弁護士は26日、「原発事故を防ぐための積極的な情報収集義務を怠り、重大な結果を招いた」などとして勝俣恒久・元会長(78)と、武黒一郎(72)▽武藤栄(68)の両元副社長にいずれも禁錮5年を求刑した。
 指定弁護士は冒頭、「3被告は原子力事業者の最高経営層に身を置きながら、なすべきことを何もせずに(原発の)運転を継続し、多くの人を死に至らしめた」と指摘。その上で「大津波襲来に関する情報を自らの権限で取得し、的確な対策を実行していれば、重大事故を防げた」と述べた。
 東電は2008年、政府の地震調査研究推進本部の「長期評価」に基づき、第1原発に「高さ最大15・7メートル」の津波が襲来すると試算。武藤元副社長は試算結果の報告を受けたが、専門家に長期評価の信頼性を再検討してもらうよう指示し、対策を実施しなかった。
 この「長期評価」について、指定弁護士は論告で「科学的根拠があり信頼できる」と評価。津波対策担当者による報告などから、3被告は第1原発に10メートルを超える津波が襲来する可能性を認識できたと主張した。
 その上で、武藤元副社長による再検討の指示について「指示自体が誤りで、その後の検討状況の確認すらしなかった。その対応についても『担当者から報告がなかった』と弁解している」と批判。武黒元副社長も少なくとも約2年前には試算結果を知ったとし「勝俣元会長に報告するなど対応すべきだった」と指摘した。勝俣元会長は09年の会議で巨大津波が襲来する可能性を認識できたとし「担当者に対策を検討させ、(対策)完了までは(原発の)運転を停止すべきだった」と述べた。
 情状面は、(1)結果の大きさ(2)3被告の地位(3)注意義務を怠った程度の大きさ――のいずれも刑事責任は極めて大きいと主張。禁錮刑で法定上限の5年を選択した。【蒔田備憲、柳楽未来】

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