[2023_02_17_12]トルコ・シリア地震で建物崩壊 04年以降は耐震化も… 以前の建物はそのまま 耐震基準強化進む日本にとっても”他山の石” 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その481 島村英紀(地球物理学者)(島村英紀2023年2月17日)
 
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トルコ・シリア地震で建物崩壊 04年以降は耐震化も… 以前の建物はそのまま 耐震基準強化進む日本にとっても”他山の石” 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その481 島村英紀(地球物理学者)

 2月6日、トルコ・シリア地震が起きた。ビルが崩れ多くの死者が出ている。大地震は2回起き、マグニチュード(M)は7・8と、200キロメートル以上離れたところで起きた誘発地震(M=7・5)だった。ともに震源が浅かったため、それ以上の震度はない震度をもたらした。日本では震度7という最高の震度だ。
 日本の地震では隣国にまで地震被害が及ぶことはめったにないが、トルコ南部で起きたこの地震は国境を越えてシリアにも甚大な被害を及ぼした。シリアは12年も続く内戦で、アサド政権派と反体制派の支配地域に分断されて人道危機に陥っている。救助もままならないうえ、死者の正確な数も不明だ。
 死者と負傷者の数は、シリア側で分かっていないこともあり、いまだに不明だが、死者は4万人を優に超えている。
 2000年以降だけでも死者・行方不明者が2万人を超えた地震は7回もある。不名誉だが東日本大震災も名を連ねている。
 具体的には2001年のインド西部地震(M7.7)は2万人が死亡したし、2003年のイラン・バム地震(M6.6)は4.3万人、2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震(M9.1)は主に津波被害で他国も合わせて22万人、2005年のパキスタン・カシミール地震(M7.6)は8.6万人、2008年の中国・四川省地震(M7.9)は6.9万人、2010年のハイチ地震(M7.0)では31.6万人、そして12年前に起きた東日本大震災(M9.0)の犠牲者数2.1万と続く。地震はもっとも恐るべき災害なのだ。
 今度のトルコ・シリア地震で耐震構造の不備を嘆く声が聞こえる。
 だがトルコでは耐震の法制化は急速に進んだ。耐震建物の推進は政治的な優先課題となり、2004年以来は日本並みだ。
 しかし、法制化は遡(さかのぼ)れない。今回倒れた家屋はどれも耐震化以前に建てられたものだった。
 建築に手抜きもあったのではないかともいわれている。
 トルコ・シリア地震は人ごとではない。日本でも大地震のたびに強化されてきた耐震法(建築基準法)。しかし最新の耐震法以前に建てられた家屋は多い。
 阪神淡路大震災(1995年)での建築研究所の調査がある。震災で倒れたり大破した家屋は、1971年以前に建てられた家が圧倒的に高かった。つまり日本の建築基準法は1972年に強化されたのだ。なお建築基準法は1982年にさらに強化されて1972年から1981年までに建てられた家屋はそれなりに強くなった。(※)
 日本でも手抜きがある。コンクリートの中に空き缶などのゴミが入っていたのは氷山の一角だろう。阪神淡路大震災でビルが倒れて、はじめてわかったことだ。
 今回トルコ・シリア地震があった地区では数百年間、これほどの地震はなかったという。1000年以上前に建てられた砦(とりで)の遺跡も今回の地震で壊れた。
 日本にも熊本や北海道などで起きる地震と同じで、地震国では地震はどこにでも起きる。どこに地震のエネルギーがたまっているかを知る方法は地震学にはない。
 トルコ・シリア地震は日本にとっても他山の石として心すべきだろう。
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