【記事38162】東電元幹部らへの業務上過失致死傷事件についての起訴議決解説(脱原発弁護団連絡会2015年8月4日)
 
参照元
東電元幹部らへの業務上過失致死傷事件についての起訴議決解説

 7月31日に公表された東電元幹部らへの業務上過失致死傷事件についての起訴議決にあたり、福島原発告訴団弁護団であり、脱原発弁護団全国連絡会の共同代表でもある海渡雄一弁護士より議決の解説書を掲載いたします。

市民の正義が東電・政府が隠蔽した福島原発事故の真実を明らかにする途を開いた!
海渡 雄一
(福島原発告訴団弁護団)

(中略)
4 原子炉が浸水すれば致命的であることはわかっていた

 東京電力では,1991年10月30日,福島第一原発において海水の漏えい事故が発生し,タービン建屋の地下1階にある非常用ディーゼル発電機等が水没したという事故を経験し,2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では,柏崎刈羽原発1号機の消火用配管の破裂による建屋内への浸水事故を経験していた。海外では,1999年12月のフランスのルブレイエ原子力発電所の浸水事故,2004年12月のスマトラ島沖地震の津波によるマドラス原子力発電所2号機の非常用海水ポンプが水没する事故が発生していた。これらの事象は2015年6月のIAEA総会に提案された、福島原発事故に関する最終レポートにおいて、東電の責任を基礎付ける事実として引用されていたものであり、告訴団がレポートを翻訳して提出していたものが議決に活かされている。
 「スマトラ島沖地震の津波によるマドラス原子力発電所の事故や2005年8月に発生した宮城県沖地震を受け,保安院と独立行政法人原子力安全基盤機構は,2006年1月以降,設計上の想定津波水位を超える津波が襲来した場合の原子力発電所の設備・機器等に与える影響等を把握すること等を目的として,内部溢水・外部溢水勉強会(以下「溢水勉強会」という。)を継続的に開催した。東京電力の土木調査グループの担当者らも溢水勉強会に参加した。」
 「2006年5月11日に開催された第3回溢水勉強会では,福島第一原発5号機において敷地高を1メートル超える高さ(0.P.+14メートル)の津波が無制限に襲来した場合には,非常用電源設備や各種非常用冷却設備が水没して機能喪失し,全電源喪失に至る危険性があることが明らかとなった。」
 このような経過を総括して、議決は、「当時の知見として,推本の長期評価やそれに基づく想定津波水位の試算結果,貞観津波やそれに基づく想定津波水位の試算結果が重要であったといえる。ただし,これらはその信頼度等が必ずしも高いとはいえず,その取扱いについては意見が分かれていたことは否定できない。
 もっとも福島第一原発に10メートルの敷地高を超える津波がひとたび襲来した場合には電源喪失による重大事故が発生する可能性があることはその時すでに明らかになっていた。」と述べている。
(後略)

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