【記事25871】福島第1原発、10メートル超の津波想定 東電が08年試算 震災4日前に保安院へ報告 (日経新聞2011年8月24日)
 
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福島第1原発、10メートル超の津波想定 東電が08年試算 震災4日前に保安院へ報告

 東京電力は24日、福島第1原子力発電所に最大10.2メートルの津波が来て、押し寄せる水の高さ(遡上高)が15.7メートルになる可能性があることを2008年に社内で試算していたことを明らかにした。東日本大震災後、東電は福島第1原発を襲った津波の大きさを「想定外だった」と説明してきた。試算を踏まえて対策していれば原子炉が炉心溶融するという最悪の事態を回避できた可能性があった。
 東電は試算結果の存在を震災後5カ月半も公表してこなかった。事故調査・検証委員会も経緯を聴取しており、今後、事故を招いた重大な原因として争点となりそうだ。
 東電は02年の土木学会の津波評価をもとに、福島第1原発での想定津波の高さを最大5.7メートルと設定していた。08年に、869年の貞観地震や国の地震調査研究推進本部の見解などをもとに、巨大地震時の津波の規模を試算。福島第1原発の5〜6号機に来る津波が10.2メートル、防波堤南側からの遡上高は15.7メートルという結果をまとめた。
 実際に大震災による福島第1原発の遡上高は14〜15メートル。試算に基づいて、電源やポンプなどの重要施設の防水対策をきちんととっていれば、全電源喪失から原子炉を冷却できなくなる事態を防げた可能性がある。
 この試算結果を08年6月に経営陣も把握していた。東電は同年秋、土木学会に同学会の津波評価の見直しを求めたが、現在まで改定はされなかったとしている。
 試算を想定津波に反映しなかった理由について「試算は試算であり、想定ではない」(松本純一原子力・立地本部長代理)と説明した。
 東電は試算結果を今年3月7日になって保安院に報告した。保安院は東電に対し、試算結果を反映した耐震安全性評価報告書を提出し、早期に設備の改修などの対策をとるよう口頭で指導した。実際には4日後に震災が起き、対応できなかった。

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