[2009_03_18_01]耐震新指針を評価 志賀原発訴訟 住民逆転敗訴 審査体制に疑問符(毎日新聞2009年3月18日)
 北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを求めた訴訟で、住民側が逆転敗訴した。名古屋高裁金沢支部は、国が1審判決後の06年に改定した新しい原発耐震指針の信頼性を認定。北陸電が実施した耐震評価も妥当だとした。だが、過去の事実に照らして違和感をぬぐいきれない。
 1審判決は旧指針について、揺れの過小評価の恐れを指摘し、信頼性を否定した。
 実際、07年3月の能登半島地震=マグニチュード(M)6・9=では、志賀原発で揺れの一部の強さ(加速度)が、北陸電が旧指針に基づいて想定した値を超えた。同年7月の新潟県中越沖地震(M6・8)でも、東京電力柏崎刈羽原発が最大で想定の4倍近い揺れに見舞われた。
 新指針は、未知の断層が起こし得る原発直下地震の想定規模を旧指針の最大M6・5から6・8程度に引き上げた。それでも「断層が確認されていない場所でもM7クラスは起きる」と批判する専門家は少なくない。
 電力会社による原発耐震評価を国が審査する体制も問題だ。これまでも会社の評価を指導した学者が、国の委員となって審査した例があった。これでは公平性が疑われる。渡辺満久・東洋大教授(変動地形学)は「抜本的な審査体制の刷新が必要だ」と指摘する。
 原子力安全・保安院は今月ようやく、4月から各原発の審査に際し、その原発と利害関係のある専門家は委員にしないと決めた。しかし「利害関係がある」と認定する基準は作成中という。地震国・日本で53基の原発が稼働。電力会社と国は過小評価を反省し、厳格な評価、審査体制を構築すべきだ。【野上哲】
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