[2007_07_20_02]東電、トラブル続々 放射能放出やまず 微量「人体に影響なし」 地震計データ一部消失(朝日新聞2007年7月20日)
 
 新潟県中越沖地震で緊急停止した東京電力柏崎刈羽原発ではトラブルや故障などが10日も、続々と見つかった。排気筒から放射性物質が大気中に出ていた問題では、確認された17日以降も放出が続いていた。地震発生から日がたつにつれ、被害の詳細が次第に明らかになってきた。
 7号機の排気筒からは、17日昼から18日夜までの間も引き続きヨウ素が検出された。大気へ放出された放射能量は約2千万ベクレル。放射線量は合計で1千万分の2ミリシーベルトで、法に定める公衆線量限度の500万分の1。人体や環境に影響はないとしている。
 東電は、タービンの軸を封じる部分から、復水群にたまっていた放射性物質が含まれた空気が排気筒に流れ出たことが原因とみている。原子炉停止で手動で止めるペき機器が動いたままになっていたなど、操作手腕の誤りと機器の故障が重なって起きたという。
 原子力運営管理部の鈴木良男部長は「地震発生後も何日にもわたって放出を止められなかったのは遺憾だ。1日も早く止められるよう全力を尽くす」と話している。
 6号機から、使用済み核燃料プールの放射性物質を含む水が海に漏れたのは、原子炉建屋内の電線を通す菅を伝って、下の階に流れ出たのが原因だったとわかった。
 1号機の原子炉建屋では消火用配管の損傷による水漏れが止まらず、地下5階に深さ40センチまで水がたまり、葉の損傷が懸念されている。この水は、床にあった放射性物贅で汚染されていることもわかった。
 4号機と7号機のプールでは、使用済み核燃料が入った囲いの上に水中で機器類を載せる鉄製の作業台(重さ200キロ)が落ちていたことも判明した。燃料に損傷はなかったが、「結果として大事に至らなくても安全性の検証は必要だ」と経済産業省原子力安全・保安院原子力発電検査課の根井寿規課長は話す。
 さらに東電は、中越沖地震の震源から柏崎刈羽原発までの距離は23キロ、震源の真上にあたる震央からは16キロと訂正した。これまでは14キロ、9キロとしていた。気象庁による震源の変更を反映した結果、距離が延びた。

 地震計データ一部消失

 東京電力は19日、新潟県・柏崎刈羽原子力発電所に97台ある地震計の記録のうち63台分の本震の波形データの一部が消えていたと発表した。想定を超える揺れのデータの一部が欠けたことで、安全性の解析に影響が出ることも考えられる。
 東電によると、失われたのは金7基の原発のうち、1、5、6号機にある地震計の波形データの大半だ。原発の重要機器や建物がどのように揺れたかを解析する上で必要だが、地震発生から最大で1時間半のデータが消えた。ただし、解析で重要とされる最下階の地震計のデータは全基とも残っていたという。
 地震が起こった16日、東京の本店にデータを送るための電話回線がつながらず、余震が多発したことでデータをためる記憶装置が満杯になった。.このため、はじめ記録されたデータの上に、後で起きた地震のデータが上書きされる形になった。
 東電では残りのデータや04年の中越地震のデータからの類推で、耐震安全性に関する解析は可能としている。今回観測された中で最大の680ガル(ガルは加速度の単位)を起す揺れがあったとは考えられないという。
 今年3月の能登半島地震の際、北陸電力志賀原発でも、同じ理由でデータが失われていた。東電は、今年度から来年度にかけて新しい装置を設置する予定だったが、その前に地震が起きた。 経済産業省原子力安全・保安院の森山善範・原子力発電安全審査課長は「東電から提出される報告を厳しく精査したい」と話している。
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