[2019_02_13_03]「燃料デブリ」接触調査 初めて実施 福島第一原発2号機(NHK2019年2月13日)
 
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「燃料デブリ」接触調査 初めて実施 福島第一原発2号機

 福島第一原子力発電所2号機で13日、デブリとみられる堆積物に直接触れる調査が初めて行われました。大きなトラブルはなく、堆積物に触れることができたということです。東京電力は、調査結果をもとに具体的な取り出し方法を検討することにしています。
 福島第一原発2号機では、去年1月、原子炉を覆う格納容器の底に溶け落ちた核燃料と構造物が混じり合った「燃料デブリ」とみられる堆積物が確認されていて、東京電力は13日、この堆積物に直接触れる調査を初めて行いました。
 調査は13日午前7時すぎから始まり、最大15メートルの長さまで伸ばせる棒状の装置を原子炉の真下のエリアまで入れたうえで、先端部分を釣り糸のように格納容器の底まで垂らし、堆積物をつかむ装置で硬さや動かせるかどうかなどを調べました。
 調査は午後3時すぎに終わり、東京電力によりますと、装置の故障など大きなトラブルはなく、堆積物に触れることができたということです。
 2号機では、来年度後半に、別の装置を使って少量の堆積物をサンプルとして取り出す計画で、今回の調査結果は堆積物の具体的な取り出し方法を検討するうえで重要です。
 調査の詳しい結果について東京電力は、13日午後8時から会見を開き、説明することにしています。

前例のないデブリ取り出し

 廃炉に向けた最大の難関とされる福島第一原発の燃料デブリの取り出しは、世界でも前例のない取り組みです。
 旧ソビエトで1986年に起きたチェルノブイリ原発の事故では、原子炉建屋に核燃料およそ170トンが溶けてコンクリートなどと混ざり合い燃料デブリとなって残されているみられますが、「石棺」と呼ばれるコンクリートの構造物で覆うなどしてデブリの取り出しは行われていません。
 また、アメリカペンシルベニア州で40年前に起きたスリーマイル島原発事故では、カメラを使った原子炉内部の調査などを経て事故の6年後に燃料デブリの取り出しを始めました。
 大きな損傷を免れた原子炉を水で満たすことで放射線を遮り、水中でデブリを砕いて専用の容器に詰める方法で取り出し作業が進められました。
 一方、福島第一原発の1号機から3号機では、溶け落ちた核燃料が原子炉を突き破って格納容器に達しているとみられ、燃料デブリの総量はおよそ880トンに上ると推定されています。
 さらに、事故で損傷した格納容器の修理が難しいことなどから、格納容器は水で満たさず、水位は低いままで空気中で取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸に進めるとしています。
 しかし世界でも前例がなく、放射性物質の飛散を防ぐ対策や放射線量が高い環境で安全対策の徹底を図ることが必要で、具体的な計画を立てられるかが課題になります。

どんな装置でどう触れる?

 13日の調査で使われた装置は、最大15メートルの長さまで伸ばせる棒状のもので、調査装置の先端部分には、堆積物をつかむ部品のほか、カメラや放射線量を測定する線量計が取り付けられています。
 堆積物をつかむ部分は最大8センチまで開き、2キロの重さの物まで持ち上げることができるということです。
 調査では、去年1月の調査でデブリとみられる堆積物が確認できた場所の近くの40センチ四方ほどのエリアで行われる計画で、小石状や粘土状になっている堆積物をつかむなどして、硬さや動くかどうかを確認し、その際の映像を撮影することを目指しました。

これまでの調査と各号機の状況は

 福島第一原発の廃炉に向けては、溶け落ちた核燃料が構造物と混じり合った「燃料デブリ」の取り出しが最大の難関とされていて、取り出しに向けて、原子炉を覆う格納容器内部の調査が各号機で進められてきました。
 このうち2号機では、去年1月に行われた調査で格納容器の底で「燃料デブリ」とみられる小石状の堆積物が見つかったほか、原子炉内にあった核燃料を束ねるケースの取っ手が落ちているのが確認されました。
 2号機では、今回の調査を踏まえて、来年度後半には別の装置を使ってさらに詳しく内部を調べ、少量の堆積物をサンプルとして取り出すことを計画しています。
 また3号機では、溶け落ちた核燃料を冷やす水が、格納容器の底からおよそ6メートルと、ほかの号機に比べて高い位置までたまっています。
 このためおととし7月、魚のマンボウに見立てた水中を進むロボットを原子炉の真下に当たる範囲に投入し、内部の状況を調べました。
 その結果、事故の前にはなかった岩のような黒い塊などが堆積しているのが見つかり、東京電力は燃料デブリの可能性が高いと評価しました。
 3号機の燃料デブリ取り出しに向けては、この水をどうするかが課題になっていて、今のところ、サンプルを取り出す調査は予定されていません。
 また1号機は、おととし3月に行われた調査で砂のような堆積物は見つかりましたが、燃料デブリとみられるものは確認できておらず、来年度、改めて調査が行われ、少量の堆積物のサンプルを取り出すことを目指します。

実際の取り出しは2021年からの計画
 国と東京電力は、福島第一原発の廃炉の工程表の中で、来年度、「燃料デブリ」を最初に取り出す号機とその方法を決め、2021年に取り出しを始める計画を示しています。
 デブリの取り出しに向けては、来年度、数か所から、2020年度、数十か所からデブリのサンプルを取り出し、そのうえで2021年に小規模の取り出しを始める計画を示しています。
 また取り出す方法については、格納容器内の水位は低いままで空気中で取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸として、小規模なものから始めるとしています。
 福島第一原発では、1号機と3号機でも格納容器内部の調査が行われていますが、デブリとみられる堆積物が確認され、サンプリングが予定されているのは2号機だけで、調査や検討が最も進んでいます。

専門家「次のステップに行けた」
 日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、福島第一原発2号機で燃料デブリとみられる堆積物に接触したことについて、「今までの調査は見ているだけだったので、接触できたということは、一歩進んで、次のステップに行けたということだと思う」と話しました。
 一方で、13日の調査はあくまで廃炉の一歩で、今後の詳しい調査が重要だとして、「今回は表面を触っただけだが、どれくらいの量がどのように広がっているのかなどを分析していくことが必要だ」としています。
 そのうえで、宮野客員教授は「燃料デブリの取り出しは、世界でも初めてのことで、超えなければならない課題は多い。調査で得られた情報はしっかり公開し、さまざまな知見を集め、議論しながら作業を進めてほしい」と話しました。

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