[2014_03_26_01]福島原発地下水バイパス 消費者の不安どう払拭 国、東電 説明責任重く(東奥日報2014年3月26日)
 
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 東京電力福島第1原発事故による汚染水を減らすため、地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス」計画の実施を福島県漁業協同組合連合会(県漁連)が容認した。東電は実施時季の検討に入るが、魚を食べる消費者の不安を払拭(ふっしょく)できるかが最大の課題となる。隣接する宮城、茨城の漁業への影響も避けられず、国の責任はますます重くなる。
 「汚染水があふれて海に流れると、福島全体がだめになる。海に流すのは安全な水だとアピールしなければ、どんどん誤解される」
 25日開かれた県漁連の組合長会議。居並ぶ国や東電の幹部に対し、いわき市漁協の矢吹正一組合長はこう訴え、国と東電が責任を持って消費者に説明するよう求めた。
 本格的な漁の再開を目指し試験操業を続ける福島の漁師にとって、消費者に受け入れられるかどうかは死活問題。矢吹組合長は「計画容認は命を削るような選択だった」と苦しい胸の内を明かした。
 いわき市小名浜港の商業施設「いわき・ら・ら・ミュウ」。魚介類を扱う「まるふと直売店」店長の伊藤幸男さん(60)は地下水放出について「汚染水処理の必要性を考えると仕方がない。放射性物質濃度の基準を守るのが最低条件だ」と注文を付けた。試験操業では検査をした上で出荷しており「消費者にPRして元気なところを見せたい」と言う。

 「漁師がかわいそう」

 福島の漁業が復活するには首都圏への流通拡大が欠かせない。  東京・上野のアメ横。鮮魚店の店長、日向野正さん(65)は「安全な地下水だと言われても正直信用できない。うちも商売なのでお客さんが不安に思うものはやっばり出せない」としながらも「漁師がかわいそう。福島はいい魚がたくさんいるのに本当に残念」と話した。
 買い物に来た東京都杉並区の柴田文男さん(65)は「やっぱり不安。本当に安全だと確信できて、みんなも食べるようになったら買うようになると思う」。墨田区の久保田正則さん(76)は「きちんと検査して、安全だということで流通している魚なら信頼していいのではないか。おいしければ気にせず買うつもりだ」と反応はさまざまだ。
 小売り大手、イオンリテールの奥井範彦・水産商品部部長は「今まで通り検査で安全を確認した魚の販売を続ける。一方で、消費者にきちんと説明できるよう、売る側としても地下水バイパス計画について情報を集めたい」と語る。

 隣県の海にも影響

 原発の汚染水問題の影響は、境界のない隣県の海にも及ぶ。茨城県内の漁師でつくる県漁業士会の大内庸敏会長(54)は「茨城の漁業は風評被害がようやく改善しつつある。計画の理屈は分かるが、汚染水漏れが相次いでいる中、賛同するのは難しい」と説明。
 一方、宮城県漁協の菊地伸悦・経営管理委員会会長は「原発を廃炉にする過程で、地下水バイパスの必要性を認識している。排水は法令基準よりも厳しい基準を設けており、それを守ることを大前提に国の判断に従う」と述べた。
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