[2014_04_30_03]福島原発 凍土壁着工不透明に 規制委、実現性強い懸念(東奥日報2014年4月30日)
 
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 政府や東京電力が福島第一原発の汚染水問題の抜本的対策と期待する「凍土遮水壁」の工事の行方が不透明になっている。東電は6月にも本格着工し、7年後までに建屋への地下水の流入を止めたい意向だが、前例のない大規模な計画には、安全性を審査する原子力規制委員会からも「説明不足」などの声が漏れ、実現性への懸念も強い。
 規制委の田中俊一委員長は23日の記者会見で「凍土壁が安全にどういう影響を及ぼすかきちっと見る」と強調。事務局の原子力規制庁も「(審査は)スケジュールありきではない」としており、審査が難航すれば、着工が遅れる可能性がある。
 凍土壁は1〜4号機の周囲の土壌を凍らせた壁で、原子炉建屋などへの地下水流入を抑える。汚染前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」や、建屋周辺で地下水をくみ上げる井戸「サブドレン」とともに、汚染水対策の柱とされる。
 建設費約320億円を国が全額補助。1〜4号機の周囲約1・5キロを取り囲むように埋設した配管に、冷却材を通して周辺の土壌約7万立方メートルを凍らせる。2014年度中の凍結開始を目指す。
 東電などによると、凍土を造る工法は、地下鉄工事などで実績があるが、今回ほど大量の土壌を長期間凍結させた例はない。凍結中に、建屋内を除染して原子炉や建屋を補修し、水漏れを止める必要があり、作業は難航が予想される。
 凍土壁の影響で建屋周辺の地下水位が下がり、建屋内の汚染水の水位が高くなると、建屋から汚染水が流出してしまうため、水位管理にも細心の注意が必要だ。
 このため規制委は慎重に審査を進める構えで、更田豊志委員は「建設するとなった場合に注ぎ込む人員、予算は大きく、後戻りできない。ある程度時間がかかるのは仕方がない」と指摘した。
 規制庁は25日、必要性や効果などに関する質問事項を東電などに示し、回答を要求。工事を急ぎたい政府や東電との温度差も目立っている。
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