[2021_02_08_01]ALPSの仕組みは妥当か−仕組みに、大きな落とし穴はないのか カルシウム41の放射能半減期は約10万年である 平宮康広(信州大学工学部元講師)(たんぽぽ舎2021年2月8日)
 
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ALPSの仕組みは妥当か−仕組みに、大きな落とし穴はないのか カルシウム41の放射能半減期は約10万年である 平宮康広(信州大学工学部元講師)

 東京電力は、来年のどこかで、福島第一原発の冷却で使用した多量の海水=放射能汚染水を海洋投棄するつもりでいる。
 東京電力は、「鉄共沈処理設備」と「炭酸塩共沈処理設備」、「吸着剤交換設備」という一連の仕組みを「ALPS」と呼び、ALPSで放射性核種を除去できる、と豪語した。
 そして除去する放射性核種の一覧を開示した。
 だが、その一覧にトリチウムの記載がない。
 トリチウムを除去できないことが、放射能汚染水の海洋投棄に反対する大きな理由になっている。
 だが、トリチウムだけでなく、炭素14を除去することもできない。
 炭素14が放出する放射線=ベータ線の量は、トリチウムより多いと考える専門家たちは、たとえトリチウムを除去できたとしても、放射能汚染水を海洋投棄してはならない、と論じている。
 東京電力が開示した「一覧」に記載されていない放射性核種が他にもある。
 だが、それを指摘する前に議論すべきことがある。
 放射性核種を除去する上で、ALPSは妥当な仕組みといえるのか。
 ALPSの仕組みに、大きな落とし穴はないのか。
 東京電力は、「鉄共沈処理設備」と「炭酸塩共沈処理設備」がどのような「設備」であるかを説明していない。
 それら「設備」が、放射能を帯びた鉄や銀、コバルトやニッケル、バリウム等を「共沈法」で沈殿させ、除去するものであるとすれば、放射能汚染水に多量の水酸化ナトリウムや炭酸カルシウムを投入する場面がおそらくある。
 その場合、ALPSは放射能を帯びたナトリウムやカルシウムを素通しする。
 現実に、「一覧」にはナトリウム22とカルシウム41の記載がない。
 ナトリウム22の放射能半減期は約2.6年、カルシウム41の放射能半減期は約10万年である。
 ナトリウム22もカルシウム41も食物連鎖し、体内被曝の原因になる。
 とりわけカルシウム41は、ストロンチウム90並みの有害放射性物質である。
 第五福竜丸の船員で亡くなられた久保山さんの死因は、ストロンチウム90であるといわれているが、カルシウム41であるという人もいる。
 カルシウムに中性子線を放射すると、カルシウム41が生じる。そして、中性子線を遮蔽する原発のコンクリート遮蔽壁は多量のカルシウムを含んでいる。
 したがって、放射能汚染水は多量のカルシウム41を含んでいる。
 だがALPSは、カルシウム41を素通しする。
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