[2021_04_16_12]“特高”体質の菅政権の核汚染水海洋放出「決断」 「処理水」「風評被害」は御用メディアのウソ 放出反対の中国・韓国を「反日」意図と曲解するメディア 世界の人民が許さない原発マフィアの殺人行為 「メディア改革」連載 第60回 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)(たんぽぽ舎2021年4月16日)
 
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“特高”体質の菅政権の核汚染水海洋放出「決断」 「処理水」「風評被害」は御用メディアのウソ 放出反対の中国・韓国を「反日」意図と曲解するメディア 世界の人民が許さない原発マフィアの殺人行為 「メディア改革」連載 第60回 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ 菅義偉政権は4月13日午前に開いた東京電力福島第一原発のトリチウム汚染水についての関係閣僚会議で、
1.汚染水は多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)で再び処理し、海水で薄める
2.放射性物質の濃度を法令の基準より十分低くした処理水にした上で、海に流す
3.政府は東電に約2年後をめどに放出を始められるように、設備の設置などを求める−という基本方針を決めた。

 菅首相は閣僚会議で、「政府をあげて風評対策の徹底をすることを前提に、海洋放出が現実的と判断した」と述べた。
 菅首相はまた、「政府全体で懸念を払拭し、説明を尽くす。そのために徹底した情報発信を行い、広報活動を丁寧に行う」と述べている。
https://www.asahi.com/articles/ASP4F327MP4FULFA005.html

 菅首相は今月7日、記者団に汚染水について「近く決断する」と突然、表明。12日正午前の衆議院決裁委員会で、共産党の高橋千鶴子議員に「13日の会議で海洋放出を決めるのか」と聞かれて、「現在、検討中だ」としか答えなかった。その20時間後の13日午前8時から開いた会議で決めた。国会軽視だ。

 菅政権の「決断」は、日本学術会議新会員の任命拒否と同様、元公安警察官僚の杉田和博官房副長官(内閣人事局長兼任、元神奈川県警本部長)、北村滋国家安全保障局長(元兵庫県警本部長)、瀧沢裕昭内閣情報官(元滋賀県警本部長)の3人らが進言したと思われる。
 内外から批判があっても、キシャクラブメディアを情報操作して、突破するという「特高」的なやり方だ。

◎ 日本政府の決定について、韓国政府は「わが国と十分な協議および了解なしに行われた一方的な措置だ」と批判した。韓国の31の市民団体でつくる「脱核市民行動」は声明を出し、「日本政府の決定は『核テロ』だ」と表明した。
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20210413001900882
 海峡を挟んで日本と向かい合う韓国南部の済州特別自治道の元喜龍(ウォン・ヒリョン)知事は、海洋放出が行われた場合、日本政府を相手取った民事・刑事訴訟を起こし、国際裁判所にも提訴する方針を明らかにした。

◎ 一方、米国務省のプライス報道官は「透明性を持って決定した」などというコメントを発表。国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は動画で、「廃炉に向けた重要なステップ。管理されたうえで放射性物質を含む水を海に放出することは、世界の原発で日常的に行われているものだ」と述べた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3339016913508da622aaa02a88211cd596982279

 首相は13日の会議の後、記者団に「IAEAにも、ここは評価してもらっている」と胸を張った。
 日本政府はIAEAに多額の分担金を支払っている。IAEAは原発マフィアの元締めだ。日本政府が米政府やIAEAに事前に根回しし、菅氏の「決断」を支持するメッセージを出すようアレンジしていたのだ。

◎ 菅首相は東電から巨額の広告費を受け取っているテレビ・新聞が強く反対することはないと見込んでいる。
 早速、「原発再稼働安全神話」マフィアの一員であるキシャクラブメディアが原子力マフィアの「専門家」、御用文化人が汚染水の海洋放出には問題がないと宣伝を始めた。
 4月13日のNHKの正午のニュースは、「薄めれば安全」と強調。地元福島の街頭インタビューの3人のうち2人は「やむを得ない」と述べ、「反対」は1人だった。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210413/k10012971161000.html

◎ 福島県の漁業者は「どうして菅首相一人が勝手にこんなひどいことが決められるのか」「私たちに寄り添おうという気持ちがないのか」という厳しい声があった。
 NHKはその後、御用学者の「トリチウムは大量にあれば体への影響もあるが、非常に薄ければ影響がない」「廃炉作業を進めるうえで必要な処分方法だ」などという「専門家」の説明を報じた。

 キシャクラブメディアは「風評被害を懸念する声がある」「政府は風評対策や丁寧な情報発信に努める」などと、相変わらず「風評被害」と書いている。
 「風評」とはあらぬ噂のことだが、汚染水にはトリチウム以外の猛毒物質も含まれる。
 今も原子力緊急事態宣言が発令されたままの原発事件による未曽有の被害は「実害」であり「風評」ではない。

◎ 4月13日夜のジテレビ「THE NEWS Alpha」で、萱野稔人・津田塾大学総合政策学部国際関係学科教授(哲学、ホリプロ所属のタレント)は「韓国、中国も自分たちの原発から出る汚染水を海に流している。日本を貶めるための政治的目的の批判だ」と言い放った。菅野氏は「中韓の不当な非難を許さず、科学的なデータに基づいて冷静な判断しなければならない」と強調した。
 萱野氏の発言は、加藤勝信官房長官が13日の記者会見での「中国、韓国、台湾を含む世界中の原子力施設においても、国際基準に基づいた各国の規制基準に沿ってトリチウムを含む液体廃棄物を放出している」という発言の受け売りだ。

 産経新聞によると、<政府高官は「中国や韓国なんかには言われたくない」と憤る>とある。この高官は誰なのか書くべきだ。櫻井よしこ氏ら極右活動家が激しく中韓を非難している。
https://www.sankei.com/smp/life/news/210413/lif2104130037-s1.html?utm_source=newsletter&utm_medium=20210413&utm_campaign=20210413&utm_content=news

◎ 4月15日朝の日本テレビ「スッキリ」は、トリチウム汚染水について、復興庁がホームページで13日に公開した「ゆるキャラ」を使った動画を削除したことを取り上げた。
https://www.asahi.com/articles/ASP4G74WCP4GUTIL03F.html
 司会の加藤浩次氏は「動画の内容は正確」と述べ、世界各地の原発から出るトリチウム汚染水をパネルにして出した。
 ジャーナリストのモーリン・ロバートソン氏は「カナダは東電福島の4倍出している。中韓の批判は政治的意図を持っている。原発に反対と決めつけている人たちは相手にする必要はない」と言い放った。経営コンサルタントの坂口孝則氏は、処理水のことを「汚染水」と書いている新聞があると非難した。

◎ 核汚染水を垂れ流しても何の問題もないと言い切る日本のテレビ。
 「事前の連絡もない決定」を遺憾とする近隣諸国の声を「政治的企み」と非難する御用文化人。
 10年前と同じ、「安全神話」をばらまく日本政府とシャクラブメディアを世界の人民は許さない。
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