[2019_06_03_01]「特重施設」が未完成の原発は直ちに停止させよ! 特重の工事計画の申請さえまだの東海第二原発は再稼働できない 規制委は最低限「法・規定を遵守せよ」と世論の圧力をかけよう(渡辺寿子(原発いらない!ちば)(たんぽぽ舎2019年6月3日)
 
参照元
「特重施設」が未完成の原発は直ちに停止させよ! 特重の工事計画の申請さえまだの東海第二原発は再稼働できない 規制委は最低限「法・規定を遵守せよ」と世論の圧力をかけよう(渡辺寿子(原発いらない!ちば)

1.「特定重大事故等対処施設」完成せず  規制基準不適合の原発は停止させよ

 原子力規制委員会(以下規制委)は、4月17日被規制者(注:電力会社のこと)の原子力部門責任者との意見交換会を開いた。
 原子力プラントに対する意図的な航空機衝突やテロ攻撃などを想定したバックアップ施設である「特定重大事故等対処施設(以下特重施設)」が議題。
 事業者側は5発電所、10基の特重施設について、設置期限に対して約1〜3年完成が遅れるとの見通しを明らかにした。
 このまま設置期限を迎えた場合基準不適合」の状態となる。規制委は定例会合の場で規制上の対応を今後議論する(電気新聞4月19日付)。おおむね以上のような報道が日経、大新聞、地方紙などでも一斉に流れました。
 9.11同時多発テロ以降この施設がなければ原発の運転はできません。本来は運転時に完成していなければ意味がないのです。
 しかし設計と建設に膨大な時間と資金を要するとして、電力会社に配慮して、規制委は新規制基準適合性審査書を決定した後の工事認可計画書を承認した時から5年間で作ること、と規制を緩めたのです。
 これだけ完成時期に余裕があったのに、それにもかかわらず完成しない。決められた日までに完成しなければ運転できないとすべきなのです。
 4月17日の意見交換会では一部の委員から「原則として期限の延長はありえない」などと厳しい意見が出たという。

2.規制委員会の土壇場での裏切りを許すな!

 再稼働をしている5原発9基については、そもそも特重施設の審査が終わってるのは、川内原発しかありません。他の4原発はすべて審査中です。その川内原発が1年遅れで1号機が20年3月17日、2号機が3月21日を過ぎても完工しなければ、運転条件を満たせず、施設の使用停止を求めることになると、規制庁は今のところ言っています。
 しかし規制委・規制庁が本当に川内原発の運転停止を命令するか油断できません。規制庁は、「規制上の対応を今後議論する」などといい、業者側の都合に配慮する姿勢を示しています。規制委・庁は電力事業者に厳しい態度を示し、国民に公正な機関だと期待を抱かせることが、過去に何度かありました。
 しかしそれらはすべて土壇場でひっくり返され、電力事業者の立場で決着したことばかりです。今回の特重施設問題では絶対そのような轍を踏ませないように、国民世論の圧力で、5年後に完成という、規制委が自ら決めたルールを守るよう迫り、裏切りを許してはなりません。この問題は再稼働を止めていく大きな力になり得ると思います。規制委に攻勢をかけましょう。

3.特重施設問題で日本原電を追い込む

 東海第二原発は工事計画申請においても、特重施設についてはまったく検討されておらず、2018年10月8日に工事計画が認可されて半年経ってもなお特重施設の工事計画の申請さえできていません。他社の「見通しの甘さ」以前の状態です。
 東海第二差し止め訴訟原告らは以前から「特重施設を含めれば3000億円が必要でしょ」と主張していましたが、規制委は何らの回答もせず、「1740億円が調達できればよし」として、再稼働を許可してしまいました。
 日本原電に対して、「特重施設の設計・施行計画も準備できておらず、その資金調達の確実性もない以上、早々に再稼働を断念せよ!」と迫りましょう。
 「どう見ても再稼働など無理ではないか?」という雰囲気作りに向けて様々な手段を駆使して、世論を高めていき、6市村首長会議・県へも働きかけて再稼働を断念するよう原電を包囲しましょう。
 「特重」は2001年9月11日に起きた「同時多発テロ」の後、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が原発事業者に対して出した行政命令に端を発しています。
 その後日本の規制委が「特重」の設置を新規制基準に取り入れ、義務付けたのです。これはテロ攻撃の時などに放射性物質の拡散を最小限に抑える役割を持ち、電気新聞が書いたような単なるバックアップ施設ではありません。
 最悪の事態を少しでも軽減させるための一連の設備であり、これが機能することで初めて「新規制基準に定める放射性物質の拡散量の基準を満たすことになっている非常に重要な施設なのです。
 特重施設を「屋上屋を重ねる無駄なもの」とか「念のため」に設けたもので、現在の安全対策で十分放射性物質の拡散防止ができると主張する電力事業者や「専門家」がいるようですが、それは間違いです。
 特重施設がないまま稼働を続ける原発がいかに危険か、たんぽぽ舎の副代表山崎久隆さんは指摘し、強く警告を発しています。
 原発を再稼働させたいなら、新規制基準に設置の義務が明記されている特重施設を整備してからにせよと規制委は電力事業者に強く迫るべきです。
 規制委は何のためにあるのか。
 まさか再稼働にお墨付きを与えるための機関ではないでしょう。

4.福島第一原発の事故対応4つの大問題

 たんぽぽ舎が毎日出しているメールマガジンに、最近副代表の山崎久隆さんが書いた「福島第一原発事故の現在と加速される原発再稼働の問題」と題する論文が載りました。
 前述の特重施設問題でもたんぽぽ舎のメルマガに載った山崎さんの文章をかなり参考にさせていただきましたが、今回の福島第一原発事故の処理問題の文章も山崎さんの問題点の指摘と具体的な提言が参考になり、納得できる点が多くありりました。
 福島第一原発の事故収束(実際は収束などできないが)作業と事故処理は大きな4つの問題があると指摘しています。
 中でも「汚染水の処理」と「デブリ取出し」は、方法を誤ると大規模な放射能汚染を引き起こす難しい問題ですが、提言がなされています。以下はその要点。

 汚染水は海洋投棄せず、陸上で保管すべき。
 東電の敷地内に保管されている汚染水は生物に悪影響を及ぼすトリチウムを含んでいるので海洋投棄せず、陸上で保管する。
 トリチウムは半減期の10倍の時間が経過すれば放射線量はほぼ1000分の1になるという。
 デブリ(溶け落ちた核燃料)は石棺で密封。
 デブリの正確な状態も不明な中でデブリをいじりだすのが一番危険である。
 取出しだけで労働者と住民を被ばくさせ、大事故が起きるか予測できない。取出しは絶対やめるべき。 


(「原発いらない!ちば ネットワークニュース」2019年5月号より了承を得て転載)


KEY_WORD:SENDAI_:TOUKAI_GEN2_:FUKU1_:墜落落下事故_: