[2019_08_25_01]第一原発汚染水 集中豪雨の対策急務 タンク満水早まる懸念も(福島民報2019年8月25日)
 
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第一原発汚染水 集中豪雨の対策急務 タンク満水早まる懸念も

 東京電力福島第一原発事故に伴う汚染水の対策が進み、発生量が低減している中、政府の汚染水処理対策委員会で集中豪雨への対応が議論となっている。東電は豪雨対策に着手する計画だが、原子炉建屋への雨水の流入は汚染水を増大させ、保管するタンクの満水となる時期が早まる懸念も出ている。専門家は確実な対策が必要だと指摘する。
 汚染水は東電福島第一原発1〜3号機の原子炉建屋内にある溶融核燃料(デブリ)に触れた冷却水と、建屋に流れ込んだ地下水や雨水が混ざり合うなどして発生している。
 建屋周囲の地盤に氷の壁をつくる凍土遮水壁など地下水の流入対策を進めた結果、二〇一八(平成三十)年度の発生量は一日当たり約百七十トンとなった。
 二〇一四年度の約四百七十トンの約三分の一に減少し、政府と東電が定める廃炉工程表「中長期ロードマップ」で二〇二〇(令和二)年内の達成を目指す百五十トンに近づいた。
 ただ、昨年十一月に制御棒などの放射性廃棄物を保管する建屋への地下水流入量が突如増える事案が起きた。地下水の動きの変化や集中豪雨の発生は事前の把握が難しく、今後も新たな問題が生じる可能性はある。
 東電は今後さらに汚染水の発生量を減らすには、建屋への雨水の流入対策が重要として、東日本大震災の地震や水素爆発で破損した原子炉建屋の屋根の補修を進めている。
 さらに、昨年七月の西日本豪雨をはじめ全国で豪雨災害が相次いでいるのを受け、二十四時間に三〇〇ミリ以上の雨が予想された場合に大型土のうを積み、建屋への流入を防ぐ方針を六月に決めた。
 千年に一回程度発生すると試算される一時間雨量一二〇ミリを念頭に、原発敷地内の浸水区域や斜面崩壊の可能性の解析を進めている。建屋周辺の斜面が崩落した場合、凍土遮水壁などの設備が損傷し、廃炉作業や汚染水対策に重大な影響を及ぼしかねないためだ。
 東電は解析結果を踏まえて具体的な工事計画を二〇一九年度中に策定する予定だが、内容は固まっていない。どの程度の効果が見込めるかは不透明だ。
 汚染水は浄化しても除去できない放射性物質トリチウムを含んだ状態で、原発敷地内のタンクに保管されている。
 処分方法を検討する政府の小委員会は今月九日の会合で、敷地内に一時保管する「長期保管」の議論を本格的に始めたが、「永久保管はできない」との認識が大勢を占めた。何らかの処分が必要との意見が相次いでいるものの結論は出ておらず、汚染水の「出口」は見えない。
 東電は二〇二二年夏にも現在の計画容量約百三十七万トンのタンクが満水になると試算している。しかし、効果的な豪雨対策が施されなければ、タンクが満水になる時期が早まり、処分決定までの議論や判断に影響が出かねない。
 東電は「地下水や雨水の流入対策を進め、汚染水が発生するペースを少しでも抑制したい」とする。
 原子力安全工学が専門の角山茂章県原子力対策監は「降雨時に汚染水の発生量が増えているため、豪雨対策は不可欠だ。雨水の建屋への入り込みを防げればタンクの増設を遅らせることにもつながる」と指摘した。
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