[2020_03_09_04]福島第1原発の巨大タンク密集 処理水保管の限界迫る(河北新報2020年3月9日)
 
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福島第1原発の巨大タンク密集 処理水保管の限界迫る

 東京電力福島第1原発でたまり続ける処理水の処分方法を巡る議論が大詰めを迎えている。海洋への放出が有力視されているが、地元では風評被害を理由に反対も根強い。水はどのように保管されているのか、これ以上タンクを増やすことはできないのか。事故から9年になるのを前に廃炉の現場を歩いた。
(福島総局・神田一道、写真部・庄子徳通)

■整備 年内まで

 高さ約12メートルのタンクが蜂の巣状にそびえ立つ。間隔はおよそ1.5メートル。限られたスペースになるべく多く配置できるよう、びっしりと並べられている。
 構内の南東側の「G1エリア」は、処理水を保管する66基のタンクの建設が進む。18枚の鋼鉄製の板を組み合わせて溶接。1基を造るのに3カ月かかる。
 「タンクの整備は年内まで。このエリアが最後の造成地になるだろう」。東電の担当者が説明した。
 第1原発では、放射性物質によって汚染された水が1日平均170トン(2018年度)発生する。ほぼ1週間でタンク1基(1000〜1300トン)が満杯になる分量だ。
 汚染水はまず「キュリオン」や「サリー」といった吸着装置で放射性物質のセシウムとストロンチウムが除去される。その後、多核種除去設備「ALPS(アルプス)」で他の62核種の大半を取り除く。
 アルプスでも除去できないトリチウムを含む水はタンクに移送され、貯留される。約1000基のタンクに約118万トン(ストロンチウム処理水を含む)を保管。東電は137万トンまでため続ける計画で、22年夏に満杯を迎えるとされる。

■拭えぬ違和感

 タンクが造成されている敷地にはかつて広大な森が広がっていた。
 「『野鳥の森』という愛称があり、鳥たちも巣作りをした」と東電担当者。原発事故後に木々は切り倒され、跡地はタンクで埋め尽くされた。緑豊かだった構内の風景は北側を除いて跡形もなくなった。東電側は「敷地には限界がある。溶融核燃料(デブリ)の取り出しに向けた施設整備も必要だ」とタンク増設に消極姿勢を示す。政府も小委員会の報告書を受け、地元意見を踏まえてタンクの水の処分方法を決める方針だ。
 ただデブリ取り出しの前提となる1、2号機格納容器のサンプル調査は本年度は着手できず、新年度以降にずれ込んだ。使用済み核燃料の搬出時期も最大5年先送りする。廃炉作業が遅々として進まないのに、処理水放出の検討を着々と進めるのに違和感を覚える。
 丁寧な合意形成を進めるためにも、タンクを増やして処理水保管を続けられないか−。同行した東電原子力・立地本部長代理の八木秀樹氏に率直に尋ねた。
 「敷地の有効活用の方策を探っている。(タンク増設の余地を含めて)検討中だ」と八木氏。検討結果の公表時期に関しては「具体的に見通せていない」と明言を避けた。
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