[2020_05_04_01]【内閣府の津波予想】詳細な浸水域を示せ(5月4日)(福島民報2020年5月4日)
 
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【内閣府の津波予想】詳細な浸水域を示せ(5月4日)

 内閣府の有識者会議は、東北から北海道の太平洋沖の日本海溝・千島海溝沿いを震源とした地震で想定される津波の高さや浸水域を公表した。福島県で水没が想定される地域は判然とせず、廃炉作業が進む東京電力福島第一原発の浸水状態も明らかになっていない。内閣府は詳細な浸水域を早急に示すべきだ。
 浸水域は自治体ごとに水没の深さを一センチから三十メートルまで色分けして示している。例えば南相馬市は最大一九・〇メートルの津波で広く浸水すると予想しているが、地名や建物などの表記がない。水が押し寄せる場所と、免れる区域の境界も定かでない。他の市町もJR常磐線、常磐自動車道、市役所、町役場ぐらいしか記されておらず、住民にどう活用してほしいと考えているのか首をかしげたくなる。
 福島第一原発北側には、東日本大震災と同程度の一三・七メートルの津波が襲来するとした。しかし、建屋が浸水する深さなど具体的なデータは示さなかった。非公表の理由について「予測結果は出ているが、公表には地元自治体との調整が必要」としている。原子力施設の被害予測は全県民の関心事だ。迅速に立地各町と調整し、詳細なデータを公表する必要がある。
 中でも廃炉作業が進む第一原発に津波が流れ込むのは、なんとしても避けなければならない。建屋内に海水が入れば新たな汚染水も生じる。東電は、千島海溝沿いで巨大地震が発生した場合、一〇・三メートルの津波によって敷地内が最大一・八メートル浸水するとした自社の試算に基づき、海抜十一メートルの防潮堤を建設している。内閣府の津波予測は、それを超える想定だ。東電は防潮堤のかさ上げなど今回のケースに対応する手だてを考えねばなるまい。
 県は三陸沖と、房総沖が震源の東日本大震災クラスの地震による津波高と、二つの地震による浸水域を重ね合わせた地図を二〇一九(平成三十一)年三月に公表した。今回の日本海溝・千島海溝沿いの津波は、三陸沖、房総沖とは到達する波の方向が異なり、これまでの浸水域と違いが生じる可能性があるという。
 あらゆる巨大地震に対応した浸水域を示しておくことが住民の命を守る。県は内閣府からデータ提供を受け、浸水想定区域の見直し作業に入る。一年程度かかる見込みだが、できる限り検証を急いでほしい。災害はいつ発生するか分からない。住民のいち早い避難につなげるため、津波が押し寄せる地域を分かりやすく、速やかに伝えるのは行政の責務だ。(円谷 真路)
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