[2020_10_17_04]「時期尚早だ」「仕事にならない」…海洋放出方針に困惑と憤りの声(読売新聞2020年10月17日)
 
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「時期尚早だ」「仕事にならない」…海洋放出方針に困惑と憤りの声

 東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後に残る「処理水」をめぐり、海洋放出の方針が月内にも決着することになった。実際の放出開始は2年後の見通しだが、漁業者に対する具体的な風評被害対策などは明らかになっていない。本格操業に向けてようやく踏み出した漁業復興の動きに水を差しかねず、現場からは困惑と憤りの声が上がる。
 梶山経済産業相は16日の閣議後記者会見で、「処理水の問題は(保管する)敷地が逼迫(ひっぱく)する中、いつまでも先送りできない」と強調。加藤官房長官は同日の記者会見で「政府内での検討を深めた上で、適切なタイミングで責任を持って結論を出したい」と語った。
 処理水の対応を決めるにあたり、政府は今年4月から7回にわたり原発周辺の自治体や農林水産業関係者などから意見聴取してきた。漁業関係者を中心に反対意見が続々と寄せられていた。
 福島県いわき市漁協の江川章組合長は海洋放出の方針について、「時期尚早だ。現場の漁業者の意見を聞き尽くしたとは思えないし、海洋放出となればウニやアワビ、ワカメなど沿岸漁業への影響は計り知れない」と憤った。いわき市久之浜の漁師の男性(65)も「本当に放出が始まったら仕事にならないのではないか」と不安を募らせた。
 相馬双葉漁協(相馬市)の立谷寛治組合長は「国は処理水の処分方法の議論と並行して風評被害対策を進め、特に若い後継者が安心して漁に出られるようにしてほしい」と注文をつけた。
 国の方針決定について、内堀知事は同日、「まだ具体的な話は聞いていない」とした上で、「県としてこれまで漁業者や地域の方の色んな話を聞き、政府に対して思いを伝えてきた。慎重に、しっかりと対応していただきたいと思う」とコメントした。
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