[2022_06_24_01]「電力逼迫」の注意報・警報の欺瞞を見逃すな 原発推進のためには電力危機さえ演出する政府 (上)(2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年6月24日) |
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項目紹介 1.夏・冬の「電力危機」で関係閣僚会議開催 2.3月の「電力危機」 以上2つは本日掲載 3.脆弱すぎる広域連系線 (下)に掲載 1.夏・冬の「電力危機」で関係閣僚会議開催 6月7日、「電力需給に関する検討会合」が開催された。実質たった15分の会議。これはマスコミによると「電力需給のひっ迫に備えるための関係閣僚会議」というのだそうだ。 過去の「電力需給のひっ迫」は、2011年の東日本大震災直後に発生した大規模な発電所の被災に伴い「計画停電」などがおこなわれた。その中心は15基もの原発の停止だった。そのため、3月下旬から気温が下がる度に大規模停電のリスクがあるとされ、節電が呼びかけられた。 震災では火力発電所も大量に停止したが、その年の夏頃には多くが復旧し、夏場のピーク時にはほとんど問題のない状態になっていた。 2012年にかけて、東日本だけでなく全国の原発がすべて停止した。 しかし電力不足や停電は起こらなかった。 ところが、ここにきて政府が「深刻な電力不足」だと騒ぎ出し、「企業も一般家庭も節電せよ」との呼びかけをおこなう事態になっている。 いったい、本当に電力は不足するのか、それはなぜか。 2.3月の「電力危機」 今年3月22日の電力受給体制について、経産省は21日夜、東電管内について「電力需給逼迫警報」を出した。2011年の東北地方太平洋沖地震を除けば初めてだった。 それは、22日の東電管内の電力需給の見通しが「供給予備率」3%以下になる見通しとなったため。 気象庁などは22日の東海、関東地方の予報は雨で、気温も急激に下がり、真冬並みに冷える見通しと発表。予報では東京都心の最高気温は5度以下、標高の高い所は雪が交じるとも報じられた。 この時問題になったのは、直前の3月16日に発生した地震の影響だ。 最大震度6強、マグニチュード7.4の福島県沖の地震が発生し、火力発電所が10箇所以上停止、その後多くは復旧できていなかった。 実は、地震発生時に需給バランスが崩れたため、電力周波数が乱れ、発電所と変電所を守るために系統遮断機が自動起動し、210万戸以上の大規模停電になった。 しかしこちらは地震発生からおよそ3時間後に全面復旧した。 設備に損傷がなければ、復旧は早い。 だが、新地火力(相馬共同火力発電の石炭火力100万kWが2基)、広野火力6号機(東電の石炭火力60万kW)などは損傷が大きく、その後も止まったままだった。 東北電力の原町火力(石炭火力100万kWが2基)も被災しており、東電だけでなく東北電力も逼迫した状態だった。 これらの発電所は、東日本太平洋沖地震の際よりも今回の方が被害が大きかったという。震源が近く、地震動が強く伝わったこともあったのだろう。 このような原因での逼迫は、この季節に急激に気温が下がるなどすると起こり得るので、その場合は節電を呼びかける他はない。 しかし東日本大震災から11年も経っているのに、やはり脆弱すぎるといわざるを得ない。 この時はウクライナ侵攻も関係ないし、燃料不足も起きていない。 この時期にはいくつかの発電所が定期検査に入っていた。 その規模は1000万kWにも上った。冬のピーク時に比べても500万kWもの設備が系列から外されていた。 これが、冬の最大出力5400万kW規模の設備があるのに、4963万kW程度で緊急事態宣言をすることになった理由である。 東日本の発電所は、狭い区域に密集している。特に東京湾岸と茨城から福島にかけて密集している火力発電所は、日本海溝や相模トラフの地震で一度に全滅してしまうだろう。そうなれば、東京から東北電力はブラックアウトを余儀なくされる。 日本海側にいくらか火力や原発があっても意味はない。全く足りないのだから。 実際に3月22日を乗り切ったのは、節電努力に加え、揚水式発電(つまり水力)と広域融通が足りない分を補ったからだ。(下)に続く (初出:2022年6月発行「月刊たんぽぽ舎ニュース」より) |
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