前回の質問者 生越忠様にお答えします 東京電力社長 那須翔 【Page 73】(月刊経営塾1988年12月1日)
 
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※以下は本文をテキスト化したものである
尚活動す可き可能性の大いなる断層」とされたのが初めてであり、文献によりいろいろな設明がなされていますが、いずれにしましても、極めて近い時代にくり返し活動していた断層は、将来も活動する可能性があると評価しているものと考えられます。これまで、地震のくり過し期間は、地域によって異なりますが数十年から数百年といわれています。また、くり返し活動が確認された断層の調査結果からも、くり返し期間は数百年から一万年程度とされています。
 これに対し、原子力発電所では、くり返し期問が五万年までの断層も、安全側の評価として設計用地震動の評価に取り人れることとされています。
 なお、先生は、審査指針での活断層の評価について、A級のものについては一万年前以降に活動した証拠がなければ、原子炉の設置には支障はないことにされている、と解釈しておられるようですが、審査指針・解説においては、A級活断層については活動時期のいかんにかかわらず、全て設計用最強地震または設計用限界地震の発生源として考慮することとされております。

四 原子力発電所の耐震設計について

 原子力発電所の耐震設計に関連して、一般建築物の三倍の地震力で設計すれば安全か、とのご意見ですが.前記の耐震設計審査指針によれば、原子炉施設のうち重要な施設は、一般建築物の設計に用いられる地震力の三倍の地震力だけでなく、前述のようにその地域で考えられる最大級の地震によってもたらされる地震力のうち、いずれか大きいほうを設計地震力とするように定められております。
 また、仮に原子炉建屋の耐震力は十分にあっても、強い地震が起こった場合、基礎岩盤が大きく破壊するのではないか、とご懸念されていますが、原子炉建屋直下及び周辺部の地質状況並びに基礎岩盤の強度等を詳細に調査し、地震を起こすような断層がないこと、並びに、想定し得る最大の地震動を受けても基礎岩盤が健全であることを確認しておりますことから、基礎岩盤が破壊されるおそれはないと考えられます。
 最後に、日本の原子力発電所に地震による事故がまだ起こっでいないことを、どう認識しているか、とのご貿問ですが、原子力発電所の耐震設計では、前述したように、その地域での上限規模の地震を考慮しているほか、過去の大地震による被害を受けた建物の被害原因を調査・検討するなど、原子炉施設に対して十分に耐震対策を施しています。したがいまして、原子力発電所では今後とも地震による事故は起こらないと認識しております。
以上、十一月号において先生からご質問のありました、わが国における原子力発電所の耐震性についてご設明申し上げましたが、私どもといたしましては原子力発電所の建設にあたり、耐震性はもとより安全性の確保をあらゆる面にわたって追求しつつ、国民の皆様のご付托に応えられますよう、努力を重ねてまいる所存であります。