[2017_11_16_03]こうして「実績」とやらは作られる NUMOの核ゴミ「説明会」へ日当1万円等 九電やらせメール事件と同質 山崎久隆(たんぽぽ舎)(たんぽぽ舎2017年11月16日)
 
参照元
こうして「実績」とやらは作られる NUMOの核ゴミ「説明会」へ日当1万円等 九電やらせメール事件と同質 山崎久隆(たんぽぽ舎)

◎ NUMO(原子力発電環境整備機構)の核ゴミ説明会(HPでは「科学的特性マップに関する意見交換会」)に、委託を受けた会社が大学生に謝礼やサークル活動への支援を約束して参加を依頼していたことが明らかになった。学生を動員していたのは2次委託先のマーケティング企画会社「オーシャナイズ」。
 問題となったのは東京、埼玉、愛知、大阪、兵庫の5箇所の会場合わせて39人の参加者。NHKによると11月6日にさいたま市で開催された会で学生の1人が「参加すると謝礼をもらえると聞いた」と発言したことから発覚したという。
 NUMOの説明は、さいたま市の会場に来た12人の参加者には1人当たり1万円を払う約束をしたといい、残りの27人については所属するサークルに対し1人当たり5000円相当の支援を約束していたという。
 NUMOの説明では、委託先に対して謝礼を払ってまで参加者を集めよとはしていないし、発言の内容に注文をつけることもないとしている。
 NUMOとは、高レベル放射性廃棄物の処分事業を実施する主体であり、7月に建設場所として調査対象になる可能性がある地域を示した「科学的特性マップ」が公表されたことを受けて、10月から全国各地で市民向けの説明会を主催している。

◎ NUMOの宮澤宏之理事が「意見交換会全体の公平性について不信感を招きかねないものであり、機構としての委託先に対する管理が不十分であったと言わざるをえない。管理不徹底により、このような事案が発生したことに対し、深くおわび申し上げる」と記者会見で述べたそうだが、説明会をやり直すことは考えていないとしている。これは、動員した結果の意見交換会が「成立した」としているのと同じであり、許されない。
 問題が発覚したことで、実際に謝礼等は支払われなかったとされているが、では問題がないのか、いやとんでもない、重大な事件であることに変わりはない。
 第1に、いわゆる「やらせメール事件」で九州電力が強く批判された玄海原発の例が2011年にあったのに、このような「利益供与による動員」を行う企業がまだあるということに驚くと共に怒りが湧く。
 やらせメール事件では再稼働に賛成する意見を、九電の下請け企業の従業員に発信させた事件である。
 第2に、今回のケースでは発言の内容について指図はしていないとする。しかしそんな言い訳が通用するわけがない。
 この種の事件は、下請け企業が参加人数を増やしたいから行う。中身は何であれ一定の人数が参加をしていることが事業の評価を決める重要な要素だからだ。
 第3に、このような説明会の位置づけで「多くの市民が参加をして有意義な意見交換が行われ、高レベル放射性廃棄物の地層処分の意義、重要性が確認された」などと結論づけられるのを補強する。さいたま市の会場では、定員100人に対し動員された学生12人を含む参加者は86人。もし動員が無ければ74人になる。
 「9割近くの参加」と「4分の3弱の参加」では印象は全く異なる。
 信用を失っている機関が、経産省の「マップ」を使って核のゴミはいつかは埋め捨てにすることを国民に押しつけるために実施している意見交換会であることを示した事件だが、そのうえ「一定の成果」まで捏造されることになる。
 第4に、意見交換会が成立しているとされれば、これはまさしく「やったもの
勝ち」ではないか。

◎ やらせメール事件でも真部利応九電社長は当初は辞意を表明していたが、その後撤回し、「『民意』が賛成に向けられるように九電が動いた」と第三者委員会の採取報告で指摘されたテレビ討論会は成立してしまった。
 玄海原発の再稼働は来年早々に迫っている。佐賀新聞社が今月実施した県民世論調査では再稼働に反対と答えたのは49.4%、賛成は42.8%だった。反対が多い中でのやらせメールや参加者の動員、つまりは「やったもの勝ち」になっているのである。

(*)日本語では「原子力発電環境整備機構」とされている。
 しかし、NUMOはNuclear Waste Management Organizationの略称で日本語で言うならば「放射性廃棄物管理機構」であるはずだ。
 略号ではWaste(廃棄物)の言葉さえ消えている。
 原子力では、このような恣意的(騙す)な名があまりに多すぎる。

KEY_WORD:GENKAI_: