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[2024_10_09_04]原発再稼働の賛否「新潟県民の民意を住民投票で示そう」…有志が署名集めへ 選挙じゃ物足りない理由とは(東京新聞2024年10月9日) | ![]() |
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12:00 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、地元の新潟県で県民投票に向けた動きが出てきた。関係条例の制定を知事に直接請求すべく、28日にも住民有志が署名集めを始める。前政権が前のめりになった再稼働にどんな思いを抱くのか。石破茂新首相は所信表明演説で「安全を大前提とした原発の利活用」を打ち出したが、間近に控える衆院選と別に民意を示す意味は。(太田理英子、宮畑譲) ◆県民投票条例の成立を目指し署名20万人が目標 「新潟県民の民意を示す住民投票が今こそ必要。再稼働に賛成の人も反対の人も署名を寄せてほしい」 住民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」の世話人、片桐奈保美さん(75)=新潟市=はそう力を込める。 地方自治法の規定では、有権者の50分の1以上の署名を集めれば条例制定を自治体に直接請求でき、条例案は議会で審議する。会側はこの仕組みを使い、県民投票条例の成立を目指しており、再稼働に賛成か否かを二択で選ぶことになる。 今月2日には県選挙管理委員会に署名活動を申請。28日から約2カ月間、実施する。来年3月までに県に署名簿を提出し、早くて5月の県民投票を思い描く。必要な署名数は約3万6000人(9月13日時点)だが、同会の目標は20万人だ。 ◆柏崎市議会・刈羽村議会では再稼働求める請願も 柏崎刈羽原発は福島で事故を起こした東電の原発だ。3.11後、7基全てが停止した一方、6、7号機は2017年に原子力規制委員会の適合性審査を通過。テロ対策の不備で一時、事実上の運転禁止命令が出たが、23年末に解除された。再稼働に前のめりだったのが岸田文雄前首相。退陣間際の9月6日には原子力関係閣僚会議を開き、避難路拡充などの方針を決めた。 その経過の中で浮上したのが県民投票の計画だ。 「再稼働への圧力が強まる一方、能登半島地震後、原発事故への県民の不安は大きい。現状を何とかしたい」。決める会事務局担当の大矢健吉さん(67)=同市=はそう語る。 立地自治体のうち、柏崎市と刈羽村の議会で今年3月、再稼働を求める請願が採択されており、県の判断が焦点となっている。 ◆花角知事は「県民の信を問う」と言い続けてきたが 前々知事の泉田裕彦氏、前知事の米山隆一氏はともに再稼働に慎重だった。現知事の花角英世氏は「県民の信を問う方法が責任の取り方として最も明確で重い方法」と述べたが、大矢さんは「信を問うと言い続けながら、その方法を一切言及していない」とただす。 同会で柏崎・刈羽地域共同代表を務める本間保さん(73)=柏崎市=は「知事が言う『県民の信を問う』ことを求めるのが今回の活動。知事が再稼働の是非を判断する前に県民の意思をしっかり示す」と話す。「福島第1原発事故から13年たった今、福島の教訓を思い起こし、本当に再稼働をしていいか、県民と議員に考えてもらいたい」 衆院選も県民の意思を示す機会になるが、先の大矢さんは「原発以外の複数の争点があり、シングルイシューを問うことになじまない。県民一人一人が直接賛否を投票し、リアルな意見を示すことが重要だ」と述べ、論点を明確にして民意を可視化する意義を説く。 福島の事故後、再稼働を巡る住民投票を求める動きは各地であったが、総務省などによると実施例はない。新潟でも12年に別団体が6万8000筆の署名を集めて直接請求したが、県議会で条例案は否決された。今も過半数が自民党会派の県議だが、大矢さんは「全県議に請求の趣旨や条例案の内容を書面で送り、賛同を働きかけている」と話す。 ◆地元の同意を取り付けるため、政府・与党は 国のエネルギー基本計画で「立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」と記すように、地元同意には重みがある一方、見過ごせないのが政府や与党の動きもだ。 安倍政権下の2018年の知事選で、自民の支持を受けて初当選を果たしたのが現知事の花角氏。元運輸官僚で、自民党の二階俊博氏が運輸相時代に秘書官を務めたこともある。知事選を前に当時幹事長だった二階氏は「県民の皆さんの気持ちに沿うような県政を進めていくにふさわしい人物」と語っている。 地元同意でカギを握る知事に対しては、他の形でも力が働いてきた。 ◆「次の政権へくさびを打った」岸田前首相 顕著だったのが岸田政権。今年3月には、斎藤健前経済産業相が再稼働への同意を電話で花角氏に要請し、経済産業省資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が県庁を訪れ、同意を求めた。9月には前出の原子力関係閣僚会議を開き、岸田氏は「再稼働の重要性は高まっている。再稼働への理解が進むよう、政府を挙げてさらなる具体的な対応を行ってください」と述べた。 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「岸田氏からすれば、再稼働を望む財界に対し、『次の政権にくさびは打ったぞ』というシグナルにはなる。今後の岸田氏の政治的な影響力を考えると、マイナスにはならないだろう」と読み解く。 ◆総裁選「原発ゼロ」発言から早くも後退した石破首相 では、新首相の石破氏はどうなのか。 自民総裁選の出馬時には、再生可能エネルギーの可能性を引き出し「原発ゼロに近づける努力を最大限する」と発言。しかしその後は電力需要の増大予想を理由に「原発ゼロが自己目的ではない」と後退した。 県民投票に向けた動きに携わる新潟国際情報大の佐々木寛教授(政治学)は「党内基盤の弱い石破氏は、地方の人気を得るためにリベラルを装っただけではないか。もともと石破氏は核共有などに前向きでもあり、原発にアレルギーもないはず」とみる。 ◆「原発を利活用」という所信表明に地元は 今月4日の所信表明演説でも石破氏は「安全を大前提とした原子力発電の利活用」と述べた。佐々木氏は「自民と財界、省庁が長年築き上げてきた『原子力ムラ』の制約は強い。自民党の首相では誰がなっても同じだ」と切り捨てる。 「地方からすると、経済界などの権益が優先され、地方の地域社会、市民社会は置き去りにされているように感じる」 かたや、野田佳彦氏が新代表に就いた立憲民主党。今回の衆院選に向けて7日に発表した公約では、党綱領で掲げる「原発ゼロ社会を1日も早く実現」から後退。「原発の新増設、地元合意のない再稼働を認めない」といった表現にとどまった。 法政大大学院の白鳥浩教授(政治学)は「ロシアのウクライナ侵攻や円安などでエネルギーの価格が上がっているからといって、安易に既存のインフラを使う流れになっている。主要な国政政党のエネルギー政策に選択肢がなくなりつつある」とし、国政選で有権者が判断を示しづらくなっていると訴える。 その一方で「原発を地域の問題として捉え、地域で決めることもあっていい」と述べ、民意を直接示す住民投票の意義を説く。 新潟で実現した場合には「他に原発を抱える自治体の先行事例になる」とし、多くの人が改めて原発問題に意識を向ける機会にもなるとも指摘する。「電力供給を受ける大都市の住民と問題を共有するきっかけになるほか、エネルギー政策をゼロベースで考え直す契機にもなるはずだ」 ◆デスクメモ 福島の事故は民主党政権時に起きた。原発の脅威を語り継ぐ役目を負うのが、民主の流れをくむ立民のはず。だが本文にもある通り、公約での書きぶりは物足りない。反省するよりも「穏健な保守」の取り込みなのか。ひたむきに原発と向き合う人々が一層、まぶしく見えてしまう。(榊) |
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KEY_WORD:能登2024-柏崎刈羽_:KASHIWA_:FUKU1_:NOTOHANTO-2024_:ウクライナ_原発_:再生エネルギー_: | ![]() |
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