[2024_01_11_04]【志賀原発の地震被害】相次いだ「想定外」 再稼働審査は長期化(静岡新聞2024年1月11日)
 
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【志賀原発の地震被害】相次いだ「想定外」 再稼働審査は長期化

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 最大震度7を観測した能登半島地震で、北陸電力志賀原発(石川県志賀町、停止中)に大きな被害はなかった。ただ震源域では複数の断層が連動したとみられ、耐震想定の確認など再稼働審査は長期化が避けられない。敷地内外で設備が故障し、事故時の避難に使う陸路は機能不全となり、「想定外」も相次いだ。

 ▽外部電源

 「原発内の設備の不具合が原因で受電できない事態は想定していない」。10日の原子力規制委員会で伴信彦委員が指摘した。志賀原発は地震で1、2号機の変圧器が破損し、外部電源の一部が使えなくなった。全電源を失った東京電力福島第1原発事故を教訓に、電力会社は電源の多様化を進めており、送電鉄塔の倒壊などで外部電源が途絶えても原子炉の冷却は維持できる。だが、施設内の変圧器が先に壊れる事態は想定外だった。
 変圧器からは放射性物質を含まない絶縁油が漏れた。北陸電は2号機分を約3500リットルと説明していたが、後に5倍超に訂正。一部は海に流出した。当初、火災が発生したと規制委に報告し、訂正するなど情報発信にも課題を残した。

 ▽連動

 今回の地震では1号機地下で震度5強を観測。震源域は150キロを超えるともされる。規制委で地震対策を担当する石渡明委員は「いくつかの断層が連動した可能性がある。今後の研究結果を審査に生かすべきだ」と強調した。
 地震の揺れが1往復するのにかかる時間の長さ(周期)や設備の種類によっては、揺れや被害が大きくなる。志賀原発では一部の周期で加速度が設計の想定を上回った。安全上重要な設備に影響がある周期ではなかったが、今後の地震では大きな揺れにつながる可能性もある。
 能登半島は広範囲で地盤の隆起が確認された。志賀原発では海側の物揚場中央部が沈み、最大35センチの段差が生じた。規制委の山中伸介委員長は10日の記者会見で「断層を確定するにも年単位、審査はそれ以上の時間がかかる」と述べ、北陸電が再稼働を目指す2号機の審査長期化に言及した。

 ▽基準

 原発再稼働には事故時の避難計画策定が不可欠だ。しかし今回の地震では各地の道路で隆起や陥没が発生し、渋滞も起きた。放射性物質の敷地外漏えいを監視する放射線監視装置(モニタリングポスト)は、一部が測定できなくなった。
 国内には同様に交通網が脆弱な立地の原発は多い。東北大災害科学国際研究所の奥村誠教授(交通計画)は「避難の実現可能性をチェックし直し、多くの想定を立て、確実に逃げられる経路を多重に確保しなければならない」と訴える。
 規制委の有識者調査団として、過去に志賀原発を現地調査した東京学芸大の藤本光一郎名誉教授(地質学)は「断層が大規模に一気に滑るとは想像できなかった。断層の連動性や地盤隆起を含め、原発の安全性の基準が妥当かどうか見直さないといけない」と指摘。日本海側は海に断層があり津波の危険性があるとして「自然条件で原発の立地に適したところはない」と断じた。
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