[2024_01_17_03]能登半島地震に対する規制委員会の反応… 「自らの不明を恥じるどころかまるで人ごと」| 規制委の再稼働審査で考慮していない事態が起きた 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2024年1月17日)
 
参照元
能登半島地震に対する規制委員会の反応… 「自らの不明を恥じるどころかまるで人ごと」| 規制委の再稼働審査で考慮していない事態が起きた 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 04:00
 以下は、東京新聞の1月10日の記事『志賀原発2号機の審査「相当な年数かかる」 規制委、能登半島地震の検証考慮へ 耐震性も「大きくなる方向に」』を元にしています。
※引用者注:当該東京新聞の記事は コチラ

1.規制委は過去の審査で何を言ったか

◎ 原子力規制委員会は10日の記者会見で、北陸電力志賀原発2号機の新規制基準適合性審査について言及した。山中伸介委員長は「能登半島地震を考慮するため、数年単位で長期化する見通しを示した。」という。
 いや、その前に、直前に行っていた現地調査の結果、「問題なし」としてきた自らの不明を恥じて検証するべきなのではないか。

◎ 2023年3月3日、規制委の審査会合において、2022年に行なった現地調査の結果を踏まえて「志賀原発の敷地内断層はいずれも将来活動する可能性のある断層には該当しない」と判断した。
 しかし、その判断が間違っている可能性が高まっている。

 そのうえ、規制庁は志賀原発の新規制基準適合性審査が、今後「それほど長くはかからない」などとしていたという。地震が起きていなければ、規制委は地震対策について問題ないという結論を出しかねない局面にあったのだ。

2.規制委の牧歌的な感想に怒り心頭

◎ 「山中委員長は、今回の地震を引き起こした断層などのメカニズムが専門機関で検証された後、審査にどのように取り入れるかを判断する必要があると指摘。地震の十分な検証には『相当な年数がかかると思う』と述べた。将来的な審査で求める耐震性については、現状の想定よりも『大きくなる方向になると想像する』と話した。」

 いやその前に、志賀原発が立地不適当なのではないかを審査すべきだ。
 現地調査では海岸線に平行に走る福浦断層のトレンチ(断層面を切り出して見えるようにしている溝)を見たはずだ。
 そこには少なくても2m以上の段差が認められている。
 南東−北西方向の応力がかかった逆断層面に沿って海側が隆起した。
 そのわずか1kmほど先に志賀原発が建っている。

◎ さらに福浦断層と平行するように沖合4kmほどには兜岩沖断層が、原発から北には今回の地震でも揺れの強度が変化した境目にある富来川南岸断層が存在し、これら断層は一連の地震活動で動く可能性がある。

 1892年の高浜〜福浦沖の地震は、12月9日と11日に発生したものであり、地震規模はそれぞれ、M6.4とM6.3である。この震源は富来川南岸断層と兜岩沖断層二つの断層の延長上にあり、活動領域が未知の断層である可能性が高い。
 この地震では40cmの段差が生じたという。
 その他、周囲の断層の活動度と海岸線から内陸に掛けて存在する「離水ベンチ」の分布からも、地震の度にメートルオーダーで隆起が起きていることは間違いない。

◎ 今回の能登半島地震において生じた4m以上の隆起は、千年から三千年に一度の規模だと、多くの学者が述べている。
 千年や三千年とは、人間の歴史にとっては長時間だが、地質年代からは瞬時だ。
 志賀原発の前面海底がメートルオーダーで隆起するような地殻変動は、起こらない証明どころか、過去に何度も繰り返してきた証拠ばかりがそろっている。

 そんなときに、キロメートルオーダーの断層を眺めて「動く」「動かない」と論じることのいかに愚かなことか。
 僅かな断層の活動で、地震の揺れを想定し、既に建ててしまった原発の基準地震動をいじってみても、爪の先ほども安全性は高まることはない。

3.地盤変状を考慮して考えよ

◎ 「会見前の定例会合では、地震津波対策の審査を担当する石渡明委員が、能登半島地震で未知の複数の断層が連動した可能性に言及。『地震がどのように起こったかを調べ、審査に生かす必要がある』と指摘した。」
 能登半島地震の断層の連動性については、規制委は知らなかったかもしれないが、研究者の中には指摘したものもあった。

◎ 渡辺満久東洋大学教授の「能登半島南西岸変動地形と地震性隆起」(地理学評論2015年10月)によると、
 「富来川南岸断層の走向はNE(北東)からSW(南西)方向であるが,海域へ連続し,海岸からやや離れた位置で走向をN(北)からS(南)に転じていれば,上記の変動地形学的特長はよく説明できると思われる.原子力安全・保安院(2009)によれば,上記で想定しているような調査地域西方(3〜4km)の海域に,東側隆起の兜岩沖断層の存在が知られている.調査地域の隆起運動は,このような活断層の活動によってもたらされた可能性がある.」との指摘がある。

◎ この断層群が活動したら、原発は海から引きはがされるように持ち上げられ、海底取水口や海底トンネルは崩壊、さらに敷地内にも無数の断層や地盤変異が発生し、冷材却配管や電源設備は全壊するだろう。
 それでも原発の安全は確保できるというならば、それはSFの世界であり、工学でさえない。

 理学を軽視し、工学的安全設備の充実という力業で原発の過酷事故を回避できるとしてきた日本の「世界で最も厳しい水準の安全規制」は、能登半島地震の現実の前に、木っ端みじんに砕かれたと言える。
 日本中の原子力施設や長大なトンネル建設は、メートルオーダーの地盤変状を考慮して造られていない。

 トンネルならば、不幸にして居合わせた人々の犠牲と、インフラとして巨額の費用が無駄になるが、原発はそれでは済まないことを福島第一原発事故で思い知ったのではないか。
 日本中の原子力施設を全部廃止すること、それ以外にカタストロフ(※)を回避する方法はない。

(※)「カタストロフ」(英語表記)catastrophe
  デジタル大辞泉 カタストロフィ(catastrophe)
  [「カタストロフ」とも]
・突然の大変動。大きな破滅。
KEY_WORD:能登2024-志賀原発から9km-動いた富来川南岸断層_:NOTOHANTO-2024_:FUKU1_:SIKA_: