[2024_02_01_07]能登半島地震1か月 志賀原発の現状と今後は(NHK2024年2月1日)
 
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能登半島地震1か月 志賀原発の現状と今後は

 06:40
 能登半島地震から1日で1か月です。最大震度7を観測した石川県志賀町にある志賀原子力発電所では、一部が使えなくなっている外部から電気を受ける系統の復旧時期が依然、見通せていません。さらに、再稼働の前提となる審査では、地震に関する新たな知見を反映するため、年単位での長期化が避けられない状況です。

 志賀原発は1号機、2号機ともに2011年から運転を停止していますが、1月1日の地震では1号機の原子炉建屋地下2階で震度5強相当の揺れを観測し、建屋の外にある外部から電気を受ける際に使う変圧器が壊れました。
 この影響で、あわせて3系統5回線ある送電線のうち、1系統2回線が現在も使えなくなっています。
 北陸電力によりますと、2月中旬に詳しい点検を行ったうえで変圧器の復旧方法を検討することにしていて、現在のところ復旧時期の見通しは立っていないということです。
 北陸電力は、ほかの系統から電気を受けられているほか、非常用のディーゼル発電機なども備えていることから、使用済み核燃料を保管するプールの冷却など安全上重要な設備の電源は確保されているとしています。
 一方、志賀原発の2号機について2014年から行われている、再稼働の前提となる審査は、今回の地震の影響で、さらなる長期化が避けられない状況です。
 原子力規制委員会による審査では、焦点となっていた敷地内の断層について、去年3月、「活断層ではない」とする北陸電力の主張が認められ、議論の対象が周辺の断層に移ったばかりでした。
 この中で北陸電力は、能登半島地震の震源域と重なる半島北部の断層について、連動して動く範囲をおよそ96キロと想定していましたが、今回の地震では、政府の地震調査委員会が、およそ150キロの範囲で複数の活断層が関係している可能性が高いと指摘するなど、想定と異なる調査結果が示されています。
 規制委員会は、今回の地震に関する知見を審査に反映させる方針ですが、新たな知見がまとまるまでには年単位の時間がかかると見込まれています。
 規制委員会の山中伸介委員長は、「これまで考えていなかった断層の動きが見られたので、当然新しい知見として採用する必要があり、それまでには半年から1年はかかる。審査の1項目である地震について検討するだけでも年単位はかかるのでないか」と話しています。

 相次ぐトラブル 復旧は

 1月1日の能登半島地震の影響で、北陸電力の志賀原子力発電所では変圧器が壊れ、外部から電気を受ける系統が一部使えなくなっていますが、そのほかにもさまざまなトラブルが相次ぎました。
 先月17日には、非常用ディーゼル発電機に異常がないか確認する試験運転を行っていたところ、5台中1台が自動停止しました。
 この非常用発電機は1月30日に復旧し、北陸電力によりますと、試験運転の手順を見直すなど再発防止策をとったということですが、原子力規制庁は、「北陸電力の手順の確認が足りなかった」と指摘し、今後の検査の中で原因を詳しく調べることにしています。
 また、送電線につながる外部の変電所で、絶縁に使うセラミック製の部品が壊れているのが見つかり、北陸電力がことし6月までに交換することにしているほか、地震によって生じた敷地内の段差や傾いた設備などについては、来年度中の復旧を計画しています。
 さらに、志賀原発周辺に設置されている放射線量を測定するモニタリングポストでは、通信が途絶えるなどした影響で、116か所のうち最大18か所で、一時、データが得られなくなりました。
 いずれも志賀原発から半径15キロから30キロほどの範囲にあり、このうち石川県内の17か所は原発の北側に位置する輪島市と穴水町に集中し、この地域一帯で観測できない状態になりました。
 その後、通信環境の回復や替わりの装置の設置などによって復旧が進み、1月31日、最後に残っていた1か所でバッテリーを交換したことで、1か月ぶりにすべてのモニタリングポストが復旧しました。
 モニタリングポストは、住民の避難などを判断するための重要な設備で、原子力規制庁は、今後、さらに詳しく原因を調べ、対策を検討することにしています。

 複合災害に不安も見直し限定的

 今回の地震で、志賀原発では、周辺で避難や屋内退避が必要な事態にはなりませんでしたが、能登半島では、道路の寸断や建物の倒壊が相次いだことから、地震と原発事故による「複合災害」となった場合の対応に原発を抱えるほかの地域からも不安の声が上がっています。
 このうち、去年原子力規制委員会による事実上の運転禁止命令が解除され、東京電力が再稼働を目指している柏崎刈羽原発が立地する新潟県では、1月、東京電力が開いた住民説明会で、地震の際の避難や原発の安全対策について問う質問が相次ぎました。

 国の原子力災害対策指針では、原発で重大な事故が起きた場合、
 ▽おおむね半径5キロ以内の住民は直ちに避難し、
 ▽5キロから30キロ以内の住民は、自宅や避難所などの建物の中にとどまる「屋内退避」を行ったうえで、地域で計測された放射線量が一定の値を超えた場合に避難を始めるとされています。
 柏崎刈羽原発の再稼働への同意の判断をめぐり、新潟県の花角知事は県の原発に関する防災計画が、国の指針を踏まえて策定されていることを念頭に「屋内退避などは再稼働に関する議論の材料だ」などと述べ、規制委員会による検討の推移を注視する姿勢を示しました。
 こうした声が複数の地域であがる中、原子力規制委員会は2月中旬にも指針の見直しに向けた議論を始めることにしています。
 ただ、山中伸介委員長は1月の記者会見で、原発が稼働している地域では、避難の手段や屋内待避の施設は確保されているという認識を示したうえで、見直しの対象になるのは屋内退避を開始したり解除したりするタイミングに限定されるという考えを示しています。
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