[2024_01_28_06]津波 人的被害目立たず 能登地震 地盤隆起 自然の防波堤に 課題は耐震 重い負担(東奥日報2024年1月28日)
 
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津波 人的被害目立たず 能登地震 地盤隆起 自然の防波堤に 課題は耐震 重い負担

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 能登半島地震では、氏名が公表された犠牲者の9割近くが家屋の倒壊により命を落とした一方で、東日本大震災以来の大規模な浸水被害をもたらしたにもかかわらず、津波による人的被害は目立たない。大震災を踏まえ、住民の間で津波に備えた避難訓練が奏功した形となったことに加え、地震による隆起が「自然の防波提の役割を果たした」と専門家は指摘する。
 「古い家は瓦が重くて柱が少ない。1階がペちゃんこな家ばかり」。孤立状態が長く続いた石川県珠洲市大谷地区の住民の笠谷勝治さん(80)がつぶやく。同市によると、年数がたった家島を中心に半数近くが全壊。泉谷満寿裕市長は県の災害対策本部会議で「がれきの撤去費用など財政負担が相当大きくなる」と窮状を訴えた。
 1981年に厳格化した建築基準法は「震度6強程度の地震でも倒壊しない」との新耐震基準を設けており、国は2030年までにおおむね全ての住宅で基準を満たすことを目標にしている。
 被害が甚大だった珠洲市では耐震改修工事に対して最大200万円を助成、輪島市でも最大150万円を支援するが、耐震化率はそれぞれ約51%(18年度)と約45%(19年度)で、同時期の全国平均87%を大きく下回る。
 珠洲市の担当者は「助成額を高額に設定した」とするが「ほかの地域に比べると大きな家が多く改修費用がかさむ。高齢化は深刻。年金を充てるのは負担だろう」ともどかしさを口にした。
 国土交通省によると、津波による浸水範囲は珠洲市、能登町、志賀町で計約190ヘクタールに上る。地面から4メートル程度の高さまで津波の痕跡が確認された地点もあり、多くの場所で被害に見舞われる中、間一髪で避難できた住民も多い。
 珠洲市三崎町寺家の大浜地区で区長を務める舟木茂則さん(68)は、サイレンの音を聞き、周辺住民とともに高台に駆け上がり、後日、住民全員の無事を確認した。海岸沿いの避難所は床下が浸水したといい「『何かあったら高台へ』と伝えていた。さらに訓練を強化したい」と力を込めた。同市では、津波被害想定マップを全戸へ配布して毎年訓練を実施してきた。泉谷市長は「各区長が避難を促した。東日本大震災の教訓が生かされた」と強調した。
 能登半島の日本海に面した地域では、地震により大規模に岩肌が露出した。最大約4メートルの隆起が観測された輪島市。津波警報が出ている輪島港で隆起する海を目撃した浅野勝英さん(50)は「津波が来るから波が引いていると思ったらいつまでも水位が下がったままだった」と振り返る。
 県内では少なくとも15漁港で地盤が隆起し、一部で海底が陸地となって、漁業は壊滅的な被害を受けた。日本地理学会は、輪島市など半島北側で海岸線が約90キロにわたって沖側に移動し、約4・4平方キロが新たに陸地になったと公表している。
 現地調査をした金沢大の平松良浩教授(地震学)は「隆起自体は珍しくないが、予想以上の規模だった」と驚く。07年の能登半島地震による隆起は最大45センチくらいだった。隆起は揺れが終わるまでに完了し、その後に津波が到来したとして「隆起した部分が自然の防波提の役割を果たした面もある」と話した。
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