[2024_01_02_12]令和6年能登半島地震の評価(地震調査委員会2024年1月2日)
 
参照元
令和6年能登半島地震の評価

 20:00
 令和6年1月2日
 地震調査研究推進本部
 地震調査委員会

       令和6年能登半島地震*の評価

○ 1月1日 16時10分に石川県能登地方の深さ約15kmでマグニチュード(M)7.6(暫定値)の地震が発生した。この地震により石川県羽咋郡(はくいぐん)志賀町(しかまち)で最大震度7を観測したほか、能登地方の広い範囲で震度6弱以上の揺れを観測するなど、被害を伴った。また、石川県では長周期地震動階級4を観測した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 現在も活発な地震活動が継続している。1月1日以降の地震活動は北東−南西に延びる150q程度の範囲に広がっており、1日16 時から2日13時までの間に、最大震度1以上を観測した地震が169回(震度7:1回、震度5強:3回、震度5弱:
6回)発生した。

○ 今回の地震により、輪島港(港湾局)観測点で1.2m以上、金沢(港湾局)観測点で0.9m(いずれも速報値)など、北海道から九州にかけての日本海側で津波を観測している。

○ GNSS観測によると、今回の地震に伴って、輪島観測点(国土地理院)で西南西方向に1.2m程度の変動、1.1m程度の隆起が見られるなど、能登半島を中心に広い範囲で地殻変動が観測された。また、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析によると、輪島市西部で最大4m程度の隆起、最大1m程度の西向きの変動が検出された。

○ 1月1日に発生したM7.6の地震に伴って、志賀町のK-NET富来(とぎ)観測点で2,828gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した。

○ 1月1日以降、地震活動の範囲は広がっている。揺れの強かった地域では、地震発生後1週間程度、最大震度7程度の地震に注意が必要である。特に、地震発生後2〜3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くある。また、海底で規模の大きな地震が発生した場合、津波に注意する必要がある。

○ 今回地震が発生した石川県能登地方の地殻内では2018年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020年12月から地震活動が活発になっており、2021年7月頃からさらに活発になっていた。一連の地震活動において、2020年12月1日から2024 年1月2日13時までに震度1以上を観測する地震が675回、このうち震度3以上を観測する地震が160回発生した。一連の地震活動において、今回の地震が最大の地震である。このほか、2023年5月5日にM6.5の地震を観測した。

○ GNSS観測の結果によると、2020年12月頃からM6.5の地震が発生するまでに、石川県珠洲(すず)市で水平方向に1cmを超える移動及び上下方向に4cm程度の隆起が見られるなど、地殻変動が観測されていた。また、GNSS観測や陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、M6.5の地震に伴って、震央周辺で最大20p程度の地殻変動が見られた。M6.5の地震後に複数の観測点で見られていた地震前の傾向とは異なる変動が時間の経過とともに鈍化し、最近ではM6.5の地震が発生する前の傾向にほぼ戻っていた。

○ 一連の地震活動は、主に能登半島の北東部及び北側の海域を中心に発生していた。1月1日以降の地震活動域は、能登半島の北部を北東−南西方向に縦断し、北東側は能登半島北東海域、南西側は平成19年(2007年)能登半島地震の活動域付近まで達している。

○ 1月1日のM7.6の地震の発震機構、地震活動の分布及びGNSS観測の解析から推定される震源断層は、北東−南西に延びる150q程度の主として南東傾斜の逆断層であると考えられる。

○ 今回の地震は、昭和58年(1983年)日本海中部地震(M7.7)や、平成5年(1993年)北海道南西沖地震(M7.8)と同様に、津波を伴った日本海沿岸の大地震である。

○ 能登半島の北東沖から北岸沖の海底には、複数の活断層が存在することが知られている。これらの活断層は、概ね北東−南西の走向で、主として南東傾斜の逆断層であると推定されている。

○ これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、一連の地震活動は当分続くと考えられる。

*:「令和6年能登半島地震」(気象庁が定めた名称)は、1月1日以降の一連の地震及び令和2年12月以降の能登地方での一連の地震活動を指す。
注:GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。

過去の地震活動

 1700年以降の活動をみると、今回の地震の震央周辺(領域a)では、M5.0以上の地震が時々発生している。2007年3月25日には「平成19年(2007年)能登半島地震」が発生し、石川県珠洲市で22cmの津波を観測した。領域a内の地震により新潟県、富山県、石川県及び福井県で生じた主な被害を下の表に示す。

           震央分布図
 (1700年1月1日〜2024年1月2日10時、深さ0〜50km、M≧5.0)
 2024年1月の地震を赤色で表示。表示している震源は速報値を含む。
 震央分布図中の茶色の実線は地震調査研究推進本部の長期評価による活断層を示す。
 震源要素は、1700〜1884年は理科年表、1885年〜1918年は茅野・宇津(2001)、宇津(1982、1985)による※。


領域a内の地震により新潟県、富山県、石川県及び福井県で生じた主な被害(注1)


(注1)「日本の地震活動」(第2版),地震調査委員会 に加筆
(注2)被害は「日本被害地震総覧」による。
(注3)被害は総務省消防庁による。
※宇津徳治,日本付近のM6.0以上の地震及び被害地震の表:1885年〜1980年,震研彙報,56,401-463,1982.
宇津徳治,日本付近のM6.0以上の地震及び被害地震の表:1885年〜1980年(訂正と追加),震研彙報,60,639-642,1985.
茅野一郎・宇津徳治,日本の主な地震の表,「地震の事典」第2版,朝倉書店,2001,657pp.
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