[2024_01_09_02]【能登半島地震】政府調査委、役割を果たせ 活断層への警戒呼びかけず(静岡新聞2024年1月9日)
 
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【能登半島地震】政府調査委、役割を果たせ 活断層への警戒呼びかけず

 11:00
 新年早々、石川県などを直撃したマグニチュード(M)7・6の能登半島地震は、被災地近くの海底活断層で起きたとみられる。能登地方では数年前から地震が群発し「周りの活断層が刺激される」と複数の研究者が懸念を表明していたが、地震の危険度を評価する政府の地震調査委員会は無難な一般論に終始するだけだった。一歩踏み込んで、誘発される大地震や津波を警告すべきではなかったか。
 能登の群発は2020年末から活発化しており、調査委はたびたび記者会見を開いている。
 例えば22年6月19日のM5・4(最大震度6弱)では、翌日夜の会見で地震学者の平田直委員長が「地下で何が起きているのか分からない」などと「分からない」を連発。公表した評価文書は淡々と観測結果を連ね、長期化の可能性を示すにとどめたが、末尾に「能登半島の北岸沖の海底には、活断層が存在することが知られている」と付け足した。
 実は産業技術総合研究所や広島大など複数の調査で長大な活断層がほぼ東西に走っていることが、その時点で分かっていたのだ。断層は海底から南東側に傾いて延びており、地震が起きれば震源は能登の真下になる可能性が高い。1995年の阪神大震災(M7・3)のような直下型地震となる危険がある。
 産総研は調査委に断層図などを提出しており、活断層地震への懸念も出ていた。これに配慮したとみられる。
 23年5月5日、M6・5(最大震度6強)が発生。震源が海底活断層に近く、影響を心配する声はさらに強まった。だが、調査委の評価は「原因不明でしばらく続く」。平田氏の会見も「分からない」づくしで、活断層との関係についても「今後の調査を見ないと分からない」と濁した。
 海底活断層が気になったのか、この時の評価文は末尾に「強い揺れや津波には引き続き注意が必要である」と、津波を登場させた。産総研出身の委員は取材に「活断層でM7級の地震が起きる可能性も否定できない」と話していた。
 だが、公式見解として海底活断層への警戒を強調することはなかった。
 能登半島地震後の2日、平田氏は取材に対し「たまたまここで起きたから『見逃した』とおっしゃるが(地震は)どこにでもある。群発地震(の影響)で活断層が動いたという例は私は知らない」と答えた。
 しかし、ほかの地震学者によれば、先行する小さめの地震で大地震が誘発されたとされる例は珍しくはない。トルコ・シリア大地震(23年)、鳥取県西部地震(00年)のほか、16年の熊本地震や11年の東日本大震災でも似たようなことが起きているという。
 自然災害の進展を見極めるのは至難の業だが、恐れるべきは「空振り」ではなく「見逃し」だ。(共同通信編集委員 鎮目宰司)
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