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KEY_WORD:エネルギー基本計画:重要なベースロード電源:原子力規制委員会:安倍晋三:今井尚哉たかや主席秘書官
 

原発推進 エネ計画閣議決定 原子力ムラ復権

 政府は十一日、国のエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委 員会の基準に適合した原発を再稼働させ、民主党政権が打ち出した二〇三〇年代の「原発稼働ゼロ」方針を撤回することを正式に決めた。
 計画では、原発新増設も必要な原発の数などを「見極める」と含みを残した。原発輸出は、東京電力福島第一原発事故の教訓を国際社会と共有し、原子力の安 全性向上に貢献するとして積極的に進める考えを示した。将来の原発や再生可能エネルギーの電源比率をどうするかの具体的な数値目標は盛り込まなかった。
 原発事故後、初の計画。政府は一月の決定を目指したが、与党から原案は原発推進の色が濃すぎるとの異論が出て決定が遅れた。
◆エネ計画ポイント
▼原発は重要なベースロード電源
▼規制基準に適合した原発は再稼働を進める
▼原発依存度は可能な限り低減。安定供給などの観点から確保していく規模を見極める
▼再生可能エネルギーは二〇一三年から三年程度、導入を最大限加速し、その後も積極的に推進する
▼もんじゅは高レベル放射性廃棄物の減容化の国際研究拠点にする
◆経産省主導の舞台裏
 安倍政権は「エネルギー基本計画」で原発推進路線を鮮明にした。東日本大震災から三年で、東京電力福島第一原発事故を忘れたかのような姿勢。電力会社や経済産業省という「原子力ムラ」が復活した。 吉田通夫、城島建治
 計画案の了承に向けた与党協議が大詰めを迎えた三月下旬。経産省資源エネルギー庁の担当課長は、再生可能エネルギー導入の数値目標の明記を求められ「できません」と拒否した。
 「その態度はなんだ」。要求した自民党の長谷川岳がく参院議員によると、課長は椅子に反り返り、足を組んだまま受け答えしたという。長谷川氏の激怒で協議は中断した。
 与党は原発を「重要」と位置づける部分は容認し、推進の立場は政府と同じだが、脱原発を求める世論を気にして一部議員は再生エネの数値化にこだわった。
 だが、原発依存度の低下につながるのを懸念した経産省は本文に書き込むのを拒否。目標を拘束力の弱い脚注に入れ、本文にそれを「上回る水準の導入を目指す」との対案を与党に提示し「大幅に上回る」との表現で合意した与党の指示をも拒み「さらに上回る」との再提案で押し切った。
 電力各社も介入した。
 電力各社でつくる電気事業連合会は、自民党が所属議員に計画案への考えを聞いたアンケートに便乗。若手らに原発の維持・拡大につながる核燃料サイクル事業を「着実に推進する」と書くよう説いた。
 原子力ムラの動きの背後には、経産省が影響力を強める首相官邸がある。
 安倍晋三首相の黒子役を務める首席秘書官は、経産省出身でエネルギー庁次長も務めた今井尚哉たかや氏。首相の経済政策の実権は、今井氏と経産省が握っている。
 昨年七月。今年四月から消費税率を8%に引き上げるか迷っていた首相は、税率を変えた場合に経済が受ける影響を試算することを決めた。指示した先は財務省でなく経産省だ。
 歴代政権の大半は「省の中の省」と呼ばれる財務省を頼ったが、安倍政権は経産省に傾斜。その姿勢が原子力ムラを勢いづかせた。

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