[2022_03_17_14]地震【分析】一部で建物被害出やすい1秒以上の周期の揺れ(NHK2022年3月17日)
 
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地震【分析】一部で建物被害出やすい1秒以上の周期の揺れ

 2022年3月17日 17時39分
 16日夜遅く、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震があり、宮城県と福島県で震度6強の揺れを観測しました。
 今回観測された地震波を専門家が詳しく分析したところ、揺れが強かった地域では家具やブロック塀などに被害が出やすい1秒以下の短い周期の揺れが多く含まれていた一方、一部では住宅などに大きな被害が出やすい1秒から2秒程度の周期の揺れも比較的含まれていたことが分かりました。
 専門家は「同じ震度でも周期の特性が変われば建物に大きな被害が出る可能性があり、備えを進めてほしい」と指摘しています。

“周期特性変われば さらに大きな被害も”

 地震の揺れと被害の関係性に詳しい京都大学防災研究所の境有紀教授は、宮城県や福島県などに設置されている防災科学技術研究所の地震計のデータを分析しました。
 その結果、大半の地点では1秒以下の短い周期の揺れが多く含まれていたということです。
 境教授によりますと、短周期の揺れは小刻みで人が感じやすく、室内の家具や屋根瓦のほかブロック塀などに被害が出やすくなるということです。
 一方、震度6強の揺れを観測した福島県相馬市などでは1秒から2秒程度の周期の揺れも比較的含まれていたということです。
 1秒以上の周期の揺れは住宅などの大きな建物への被害が出やすいとされています。
 福島県沖では去年2月にもマグニチュード7.3の地震が発生し、宮城県や福島県で最大震度6強を観測しましたが、境教授によりますと、地震波の傾向は今回の地震と比較的似ているということです。
 境教授は「今回地震が起きた領域は2011年の巨大地震以降、地震活動が活発な場所で、まだまだ安心はできない。同じ震度でも周期特性が変われば、さらに大きな被害が出る可能性があり、決して油断せず備えを進めてほしい」と話していました。

福島の相馬や国見町 宮城の山元町など建物被害が多い可能性

 今回の地震について、防災科学技術研究所が地震計のデータと各地の建物の統計などを使って分析した結果では、福島県の相馬市や国見町、宮城県山元町などで建物被害が多く出ている可能性があると推計されています。
 防災科学技術研究所は、2016年の熊本地震以降、迅速な災害対応に役立てるため
 ▽観測された地震計のデータから推定した各地の揺れと
 ▽建物の建築年代、耐震性能などの統計データを組み合わせて分析することで、
  建物の被害を推計してホームページに公表しています。
 今回の地震の分析結果によりますと、このうち福島県の相馬市や国見町、宮城県山元町などでは、同じ震度6強を観測したほかの地域と比べても、建物の被害が多く出ている可能性があるということです。
 研究所では今回の被害の推計結果と実際に確認された被害とを照らし合わせて検証し、さらに精度が上げることで迅速な被害の把握に役立てていくことにしています。

耐震性低くなっている建物などで倒壊するほどの揺れ

 今回の地震の揺れが建物に与えた被害について専門家がシミュレーションして分析したところ、現在の耐震基準を満たす建物では大きな被害はないものの、老朽化が進み耐震性が低くなっている建物などでは倒壊するほどの揺れだったことが分かりました。
 地震の揺れが与える建物への影響を研究している京都大学生存圏研究所の中川貴文准教授は、今回、福島県相馬市で観測された震度6強の揺れで木造住宅がどの程度の被害を受けたとみられるか、シミュレーションしました。
 中川准教授によりますと、相馬市で観測された揺れは、木造住宅に特に影響を与えるとされる周期1秒程度の成分が大きいのが特徴だったということです。
 中川准教授は、この揺れが
▽現在の耐震基準並みの住宅、
▽耐震基準よりも強い住宅、
▽耐震基準の20%から60%の強度しかない木造住宅に
どのような影響を与えるのかシミュレーションしました。
 その結果、現在の耐震基準やそれよりも強い住宅には大きな損傷はありませんでしたが、現在の基準の20%程度と30%程度の強度しかない住宅は被害を受け、特に20%程度の住宅は倒壊する結果になりました。
 中川准教授によりますと、耐震基準が見直された昭和56年より前の木造住宅のうち、老朽化が進んだものなどには強度が20%程度のものもあり、そうした住宅は倒壊するほどの揺れだったとみられるということです。
 中川准教授は、揺れが強かった地域にある老朽化した建物はたとえ倒壊していなくても被害を受けている可能性があり、今後の地震による被害の拡大にも注意が必要だと指摘しています。
 中川准教授は「老朽化した建物のほか、作業用の小屋や倉庫なども被害を受けている可能性があり、柱が傾くなど傷んでいる建物に近づく際には十分注意して欲しい」と話していました。
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