戻る 日本原燃は低レベル廃棄物埋設センターで
一旦許可を得たベントナイト混合率の変更案を提示
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●初めに
 近年、製造業、土木建設業等のあらゆる産業分野で、ヒト・モノ・カネの不足、非正規雇用の増加による技術の継承の途絶等による不祥事が続出しているのは皆さんご存知の通りです。
 日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センター(以下埋設センタと略す)でも、とんでもない不祥事が起きていました。
 現在、埋設センタの1号埋設地はドラム缶の設置が終わり、覆土の工程に入るタイミングとなっています。覆土とは、下層から順に、難透水性覆土、下部覆土、上部覆土を6メートル以上、土をかぶせていきます。
 この中で、難透水性覆土が最重要となります。この覆土にはベントナイト(粘土の一種)が混ぜ合わされ、雨水、地下水等が、地下のドラム缶廃棄物に接触しないようガードをします。ベントナイトの混合比率が高まるほど、水が浸透しづらくなり、安全性が高まると期待されます。
 日本原燃はベントナイト混合率の仕様を20〜30%程度とすると説明して、原子力規制委員会から変更許可処分(2021年7月21日)を受けていた。
 しかし、2023年6月の申請において、突如、事業変更許可時の説明と異なるベントナイト混合率の仕様(12.5%)の覆土を用いると言い出した。
 規制庁と日本原燃の面談で、この仕様に変更しても、透水性の機能が満たせるか十分な説明が出来ず、規制委員会の会議(2024/4/24)に諮られることとなった。
 規制庁の担当者の説明のあと、石渡委員の「これはちょっとびっくりするような、今までこういうものを使いますと言っていたものと新しく提案されたものは、ある意味、全然別物ですよね。これはやはりちょっとまずいと思います。」と発言。
 伴委員が変更に至った背景を尋ねると、規制庁の担当者は「恐らくですが、やはりベントナイトの価格が高騰しておりますので、コスト要因が一番占めているのかなと思っております。」と発言。
 それに対して伴委員は「ここまで露骨なことを本当にコストが理由でやるのであれば、安全文化を正直疑いますので、場合によってはそういう観点からの議論も必要になるかなと思います。」と発言。
 こういった厳しい指摘に対して、5月29日の日本原燃の増田尚宏社長は記者会見で、当初のベントナイト混合率(20〜30%程度)にする表明し、その後、6月12日の規制員会の定例会合で、この原燃の変更案の撤回と、元の混合比率ですすめるとという方針を了承した。
 以下は私の個人的な感想です。
 300年間は機能維持しなければいけない重要な設備で、原子力規制員会との約束を反故にして、コストを重視(日本原燃は否定)し、突っ走ろうとしたこの姿勢はあまりにも恐ろしい。
 もし、石渡委員の指摘が無かったら、変更案のままいったかもしれない、日本原燃は猛省が必要だ。

※記事の赤色下線は編集側(地震がよくわかる会)で加えたものです。


●図一覧

【図1:低レベル放射性廃棄物埋設までの流れ】(*)
 (*) 参照元


【図2:1号廃棄物埋設地に埋設する廃棄体】(*)
 (*) 参照元


【図3:1号廃棄物埋設地】(*)
 (*) 参照元


【図4:埋設地略図】(*)
 (*) 参照元
 ※赤線枠部分は引用者が元テキストを赤枠で囲んだものです。

【埋設後の段階管理】(*)
 (*) 参照元
 ※赤線枠部分は引用者が元テキストを拡大後、赤枠で囲んだものです。


●記事一覧

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●低レベル埋設-覆土の粘土の割合を減らす_
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(1) 規制委 4/24 第5回会議 「原燃(株)廃棄物埋設施設確認申請に対する確認の進め方」議事録
2.経緯
 日本原燃は、第二種廃棄物埋設事業の変更許可に係る申請において、廃棄物埋設施設の技術上の基準に適合させるため、表の1.に示す透水係数、厚さ及び密度を示し、その透水係数を実現するために難透水性覆土のベントナイト混合率の仕様を 20〜30%程度とすると説明していた。原子力規制委員会は、これらを踏まえ、当該変更許可処分をした(令和3年(2021年)7月21日付)
 一方、令和5年(2023年)6月の廃棄物埋設確認申請及びその後の面談での説明では、日本原燃は、表の2.及び3.のとおり、事業変更許可時の説明と異なるベントナイト混合率の仕様(12.5%)の覆土を用いるとしている。このため、事業変更許可時の説明の性能の実現可能性について確認する必要がある。

○石渡委員  これはちょっとびっくりするような、今までこういうものを使いますと言っていたものと新しく提案されたものは、ある意味、全然別物ですよね。これはやはりちょっとまずいと思います。きちんと審査をして、新しいもので性能が保たれるのかどうかということは、これはやはりきちんと評価をしていただきたいと思います。

○伴委員  今、石渡委員が指摘されたように、これは言ってみれば、重要部材の設計を根本から変えるというような話だと思うのですよね。だから、当然、公開会合でしっかり見るべきだと思うのですけれども、そもそも何でこの段になってこういう提案がなされてきたのかという、その背景というのは分かりますか。
○細野原子力規制部検査グループ核燃料施設等監視部門企画調査官 核燃料施設等監視部門、細野でございます。
 恐らくですが、やはりベントナイトの価格が高騰しておりますので、コスト要因が一番占めているのかなと思っております。
○伴委員  余り憶測で物を言うべきではないとは思いますけれども、もちろんこれは民間企業ですから、コストを抑えようとする、そういうインセンティブが働くのは分かるのですけれども、ここまで露骨なことを本当にコストが理由でやるのであれば、安全文化を正直疑いますので、場合によってはそういう観点からの議論も必要になるかなと思います。

(2) 規制委 4/24 規制委_定例会見_4月24日_速記録
○記者 今の原燃が申請を出している内容で、許可が出た段階の水を通さないというような性能が発揮できると委員長はお考えでしょうか。
○山中委員長 これはもう覆土の組成が変わっているわけでございますので、これはもう実験的に証明していただくしかないかなという、私自身はそんな認識でございます。許可が出た数値と、ほぼ一致するような透水性能が出るということを実験的に証明するしかないかなというふうに思います。
記者 ベントナイトの価格も10年間で2倍ぐらいに急騰しているということですが、逆にコスト以外の理由ってあるのですか。
○山中委員長 これはもう事業者の判断なので、分かりません。

(3) 東奥 4/25 覆土変更 原燃に説明要求 規制委 廃棄物埋設施設巡り
 原子力規制委員会は24日、日本原燃が低レベル放射性廃棄物埋設センター(六ヶ所村)で使う覆土の成分を許可後に変更したことを議論し、公開の審査会合で原燃に説明を求めることを決めた。覆土中の粘土の割合を減らすとしており、水が浸透しやすくなる恐れがあるため。
 センターは国内の原発で出た低レベル放射性廃棄物を埋設処分する施設で、1992年に操業開始。廃棄物を入れたドラム缶を地下の鉄筋コンクリート製施設に収納し、外側をベントナイトという粘土鉱物などで覆って水が浸透しないようにする
 原燃は当初、覆土中のベントナイトを20〜30%程度にするとして規制委の許可を受けた。しかし昨年12月に12.5%に引き下げ、小石を混ぜる案を提示した。規制委の担当者は「ベントナイトの価格がこの10年で2倍ほど上昇したからではないか」と推測する。
 24日の規制委会合では「全然別物。まずいと思う」(石渡明委員)「臆測で物を育つべきではないが、ここまで露骨なことをやるなら正直、安全文化を疑う」(伴信彦委員)など原燃の方針に批判が噴出した。山中伸介委員長は定例記者会見で「性能を証明してもらうしかない」と述べた。

(4) 47NEWS 5/29 原燃 覆土の成分変更を中止 青森・六ケ所の放射性廃棄物処分
 日本原燃の増田尚宏社長は29日の記者会見で、低レベル放射性廃棄物を埋設処分する青森県六ケ所村の施設で使う覆土の成分変更を中止し、原子力規制委員会から許可を得た当初の方針で行うと明らかにした。
 原燃は8月の覆土開始を見込んでおり、増田氏は「変更しても性能は満たせる」としていたが、「説明責任を果たすには非常に時間がかかる。覆土が遅れることは避けたい」と釈明した。

(5) 規制委 6/4 原燃_廃棄物埋設施設_公開会合_令和6年06月04日_議事録
1.はじめに
・当社は1992年より1号廃棄物埋設施設に廃棄体を受入れ操業開始。
・2018年8月に事業変更許可申請。
2021年7月の事業変更許可を踏まえ、1号7・8群埋設設備の建設を開始し、現在、1〜6群の覆土完了に向けて準備工事を実施中。
・当社は、1号埋設地内では操業(LLWの定置など)、7・8群建設、覆土を同時に進める必要があり、安全(操業・建設との干渉回避)品質および工期を考慮して覆土の材料・配合・施工方法を2023年4月に選定
 〔適合性審査で許可された性能を満足することを前提に、審査の中で説明した材材料・配合の他にも使用できるものがあると考えていた。〕
2023年6月21日、12月1日に面談を実施したが、規制庁が要求している技術上の基準に適合していること、および性能の実現性について、当社は規制庁の疑問点に対して速やかに回答できていなかった。
・2024年4月24日に規制委員会が開催。
「事業変更許可時の説明と異なるベントナイト混合率の仕様(12.5%)の覆土を用いるとしている。このため、事業変更許可時の説明の性能の実現可能性について確認する必要がある。」
5.今後の対応
<当社がこれまで考えていた覆土に関する施設確認の進め方の反省点について>
・当社は適合性審査で説明したものと異なる材料・配合を使うことについて、規制庁へ相談することなく施設確認の段階に進めてしまったところに問題があった(材料・配合が異なっていても性能を満足すれば十分と考えていた)。
<今後の対応>
・放射性廃棄物埋設施設における覆土工事は、当社として初めての実施であり、安全および品質の面で規制庁の理解を得たうえで、確実な施工を実施するため、適合性審査の中で覆土の要求性能が満足することを説明している材料・配合を採用する

[ 注1:引用者作成 ]日本原燃のHPに1号廃棄物埋設地の がある
以下のアイコンをクリックすると原寸大の図が表示される


(6) 東奥 6/5 覆土成分 変更を撤回 原燃 埋設施設
 原子力規制委員会は4日、原発から出た低レベル放射性廃棄物を最終処分する日本原燃・埋設センター(六ヶ所村)の審査会合を開いた。原燃は、施設を覆う土の成分割合を許可時の内容に戻す方針を示した。規制側はこれを了承した。
 原燃の担当者は「審査で説明した材料や配合のほかにも使えるものがあると考えたが、規制側に考え方を説明し、是非を確認していなかったことは大きな反省点だ」と説明。事前に規制側に相談しないまま、自社で考えた施設の確認方法を提示したことにも問題があったと振り返った。
 覆土は当初計画通り、2027年末までに完了させる。  (加藤景子)

(7) 規制委 6/12 令和6年06月12日_原燃_廃棄物埋設_結果概要_議事録
(8) 東奥 6/13 低レベル廃棄物覆土 原燃の対応を確認へ 原子力規制庁
 原子力規制委員会は12日の定例会合で、日本原燃・低レベル放射性廃棄物埋設センター(六ヶ所村)の覆土について審議した。原子力規制庁は、原燃が覆土の成分を許可時の内容に戻すと報告した上で、原燃に指摘した4項目の対応状況を定期的に確認していくと説明した。
 同センターでは、鉄筋コンクリート製の施設に廃棄物を収納し終えた後、施設を土で覆う。原燃は覆土の成分変更を検討していたが、今月4日の審査会合で撤回した。
 規制庁は原燃に、覆土の詳細な仕様や施工方法のほか、模擬施設で試験を行い要求された性能を満たすことを示すよう、あらためて求めた。変更を検討した原燃が基準への適合性を説明できなかったため、その原因を掘り下げて改善するよう要求した。

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