戻る 石渡明氏原発60年超運転に反対 臨時会議 議事録 戻る

【 初めに 】
 2月8日の規制委員会の定例会で石渡明委員が原発60年超運転に対して反対を表明しました。それを受けて2月13日、臨時会議が行われました。その時の会議の内容を 会議映像 から、テキストに起こしたものが以下の文章です。


【 注意点 】
・議事録部分は当会(地震がよくわかる会)が 会議映像 から文字に起こしたものです。
・冒頭の事務局と山中委員長のやり取りは割愛しました。
・聞き取りづらかった部分は規制委で作成した 議事録 を参考に修正しました。
・東京新聞の 「<発言詳報>原発運転60年超を容認した規制委で、各委員は何を語ったのか」 を中見出し部分等の参考にしました。
・新聞等で取り上げられた部分、当会で重要と考えた文章には赤の下線を引きました。
・この臨時会議では石渡委員の発言が重要と考え、石渡委員の発言の頭出し機能を全発言ケ所の冒頭に作成しました。
・「●発言頭出し」をクリックすると、石渡委員発言の先頭へ飛びますので、テキスト上で気になる発言がありましたら、映像の方もご覧ください。
・最後の所( 【 今後の課題等 】 )に、当会で考えた今後の課題等をまとめましたので、よろしければ、そちらもご覧ください。


【 臨時会議 内容 】

  開催の詳細 第72回原子力規制委員会 臨時会議

  日時:令和5年02月13日(月)18:30〜19:30

  場所:原子力規制委員会 会議室A

  議事次第
  資料 高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第9回)

  会議映像

  議事録



石渡明委員

【 議事録 】
 
 ◆規制委の運転期間への関わりをめぐり石渡委員が口火を切る(東京新聞)

 13日午後6時半 臨時会を開始。事務局の法案説明の後、5人の委員の議論が始まった。「運転期間をどれくらい認めるかは、利用政策側(推進側)の判断で、規制委は意見を言わない」とする2020年の見解について、石渡明委員が疑問を投げかける。(東京新聞)

[ 山中委員長 ]技術的な観点からの意見頂きたいと思います。いかがでしょうか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】まず、今日の資料について、一つ申し述べたいと思います。今、委員長が引用された、令和2年(2020年)7月29日の参考1となっている、今日の文書(*1)、これはどういう文書かということなんですが。
 表題では「運転認可延長に関する審査と長期停止期間中の発電用原子力施設の経年劣化との関係に関する見解」という文書であります。その1項目めに書いてある、「いわゆる原子力利用の推進の機能に該当するものであって、原子力規制員会であるとかが関わるべき事柄ではない。」というような事はですね、これはもっと大きな事でございまして、延長認可の審査と発電用原子力施設の経年劣化との関係、特定の課題に関する事でないようです。
 そもそも、この文章がどういう場で出てきた文章かといいますと、これは令和2年度(2020年)の第18回原子力規制員会の議題5であります。このときは、5つしか議題がなくて、これは最後の議題、普通は最後の議題は報告とかそういうことが多いわけですけれども、どういう題名の議題だったかと言いますと、「経年劣化関連に関わるATENA(アテナ)」(*2)、これは原子力エネルギー協議会ですか、事業者団体ですね、「ATENA(アテナ)との「実務レベルの技術的意見交換会の結果を踏まえた原子力規制委員会の見解(案)について」という議題の中で、この文書が出てきました。
 ですから、当然、6回行われたATENA(アテナ)との実務レベルの技術的意見交換会の内容を踏まえた文書になっているはずであると思います。実際、そういうATENA(アテナ)との懇談、意見交換を踏まえた内容も当然盛り込まれていておりますが、「原子力規制員会が関わるべき事柄ではない」という、この部分に関する議論はですね、6回の議事録を私は全部検索しましたが、こういう議論が行われた形跡はありません。
 これは、ですから、この文書のこの部分が、どういう経緯で盛り込まれたのか、私は非常に疑問に思っています。この文書は昨年の9月末以来、何回も何回もこの場に出てきましたけれども、この文書はですね、特に「原子力規制委員会は関わるべき事柄ではない」という事について、原子力規制員会がその当時、よく議論をして、これを決めたかというと、私はそうではなかったと思います。これは、あの、杉山委員以外は、皆さんはここにいらっしゃったわけですから。
 ちなみに、この文章、参考1のこの文書の一部でも、ご執筆なさった委員の方はいらっしゃいますか。誰も執筆していないのですね。という事はつまり、更田委員長か、規制庁のだれかが執筆した文章です。
 私は、この文章をあたかも金科玉条のように、使ってですね、原子力規制委員会が係るべき事柄ではないということが、原子力規制委員会の全体の意志として、確固として決定されたものではないと考えますが、皆様の見解はいかがでしょうか。

(*1) 配布資料 の(参考1 「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化との関係に関する見解」(47〜48ページ)の意味。
(*2) ATENA(原子力エネルギー協議会)について
 福島第一原子力発電所事故の後、原子力産業界は、このような事故を二度と起こさないという強い決意の下、原子力安全推進協会(JANSI)や電力中央研究所・原子力リスク研究センター(NRRC)をはじめとした、安全性向上に資する組織による原子力事業者への支援等を通じて、規制の枠に留まらない、より高い次元の安全性確保に向けた取り組みを進めているところです。
 このような原子力産業界の自律的かつ継続的な取り組みを定着させていくことを目的に、原子力産業界全体の知見・リソースを効果的に活用し、規制当局等とも対話を行いながら、効果ある安全対策を立案し、原子力事業者の現場への導入を促す新たな組織として、「原子力エネルギー協議会」(Atomic Energy Association英語略号:ATENA)が設立されました。
ATENAのHPの 「ATENAについて」 より引用
※引用者注:上記説明に続く図でATENAの下部組織は、電事連=電気事業連合会、JEMA=日本電機工業会、電中研=電力中央研究所、原産協会=日本原子力産業協会、メーカーの5団体であると示されている。


[ 山中委員長 ]私の見解を述べさせていただくと、私自身も出席していましたし、前委員長(更田豊志氏)も出席していました。CNO(*1)との会合、これも、3回、この5年間で行われておりますし、その中でも、運転期間というのは、どう考えるべきものであるとか、或いは、運転停止期間をどう考えたら良いのか、という事については、議論をさせていただきました。
 従いまして、運転期間そのものについては、どう考えるべきなのかという事、確かに、あの、石渡委員ご指摘のように、タイトルと、提案の1から6までございますけれども、非常に様々な内容が盛り込まれています。
 運転停止期間についても、劣化が進むものであるという、そういう見解がまとめられていますし、6.については、運転期間そのものについては、政策的に判断すべき事柄であって、原子力規制委員会が、意見を述べるべき事柄ではないという、そういう事項も含まれております。
 これは少なくとも、様々な場での意見交換も含めて、委員も出席し、前委員長(更田豊志氏)も出席した場で、議論がなされた事をまとめた資料であると思っております。私の見解はそういった所です。
 それぞれの委員のご見解を改めて確認をさせていただきたいと思います。
 9月26日に就任をさせていただいて、私が就任した段階で改めて、本件については、杉山委員が参加されていましたので、委員会の場で、この見解でどうですかということは、一度お諮りさせていだいたと思います。で、改めて個別に委員の意見は、いかがでしょうか。

(*1) CNO:米国原子力事業者の最高原子力責任者
  CNO:Chief Nuclear Officer


[ 田中委員 ]令和2年(2020年)の7月29日の委員会のときに、議題の中で5つ目だったのですけれども、こういうのが示されて、石渡委員が言われるように、十分議論したかというと、若干議論が少なかったかも分からないのですけれど、私としても、これを聞いてですね、一つの方向として、こういうので良いのではないかと、その時に思いました。
 また、その後、昨年の9月ごろの、議論が進んでいるときにも、もう一遍、これをじっくりと見たのですが、ここで言っている見解といいましょうか、大きな考え方は、私としては、技術的、科学的に考えても良いのかなと思います。
 もちろん、原子炉等規制法の43条の所に、まあ、運転期間の話と、どのように見ていくかの両方書いているのですが、国会審議で色々、議論があったかと思うのですが、こういうふうな考え、この見解がですね、私とすれば、妥当なものだったかと思いますし、今回の概要とか法改正なんかも、方向かなと思います。

[ 杉山委員 ]私はあの、このペーパーが出た時には、委員ではなかったので、今日、改めて見てどうか、今の原子炉等規制法における、40年プラス20年の定めが、安全確保の上で、ベストかと言われれば、私はそうは思っていなくて。40年が30年だったらいいかと言えば、数字の問題は気にしておりません。
 今の決めだと、最初の使用前検査が終わった段階で、タイマーが始まる。そこからの年齢を数えるわけです。そこに他の制度と組み合わせれば、ある程度は、最新知見を盛り込む事を義務化出来るかも知れないのですけれども、単純な年齢で、非常に抜けが多くてですね。
 要は古い設計で、今、新しく、建設して、今、使用前検査を終えて、最新の炉で40年使えますよというのは、私は正直納得いかないんですね。
 以前から、設計の古さを何とか、判断をしたいという事を申し上げてきたのですが、これは古さとか関係なしに、単純にタイマーがスタートしたら、40年を保証しているかのように、私には見えてですね、その意味で、数字の問題というよりは、決め方が、私は、あまり、規制委員会のやり方とフィットしないような気がします。
 もう一つの問題はですね、先行例といいますか、実際に40年を迎えるにあたって、延長、認可を受けた炉がいくつかございますが、満40歳になるまでに、次の20年の認可を受けなければいけない。我々の立場で言うと、許可をしなければ、そのタイミングで間に合わなければ、もうチャンスはない。廃止措置ですよという、実際、そうなったかといえば、ならなかった、
 それは、やはり、規制委員会が判断に時間をかけて、時間切れになって、はい、だからお終いですよ、というのは、それは我々がある意味寿命を決めたような事になってしまうわけで、当然それは避けたかったのだろうと思いますけれども、ただ、慌てて審査をしなければいけないような、我々の締め切りになってしまう。という今の制度は何かおかしくないかと、外から当時思っておりました。
 だから、審査する側が、締め切りを設けられて、ここまでに合格を出さなければいけないような作りになってしまっている所も、今の原子炉等規制法の本体で決まっているのではないのかも知れませんが、なんか、変な建付けだなというふうに思っておりました。
 まあ、そういう所もあって、今、このペーパー、個人的には、何と言いますか、表現ぶりとかで、必ずしも、100%、アグリーではない所も、ある事はあるのですが、基本的には、この単純な数字で、何年までと決めるというのは、規制委員会のやり方にフィットしないであろうというのは、このペーパーについて、現在の立場で納得している。
 で、その上で、どうするかという議論をしばらくしてきたわけで、私はその、何が一番その、これまでの議論で問題があったかなと振り返ると、やはり、説明が足りなかった。
 規制委員会のたびに、こういう議論をしてですね、先ほど申し上げた、設計の古さとか、或いは、基準を厳しくする事によって、古いものを排除するというような仕組みを作れる、フレームワークとして、用意出来るという事をしたのですが、今回パプコメにかけた資料というのは、あまりにも限定された範囲でですね、我々の規制の全体像が説明されていない。
 それは今まで、いろんな資料をかき集めれば、見えてくるのかもしれないのですけれど、やはり、その議論を進める中で、きちんとそういう所は整理して見せながら、進めるべきだった。今からでもそれをやらなければいけない、と思っております。
 まあ、これが説明だけの問題かというと、そうではないんです。それでも、少なくとも、我々ちゃんとした説明責任を十分に果たせていないと、感じております。

[ 伴委員 ]これをたしか決めた時に、ATENA(アテナ)」との実務レベルの技術的意見交換会という事だったので、本当に、科学的、技術的内見地から、運転期間のカウントの仕方はどうあるべきなのかを、予断をもたずに、議論しようじゃないか、という形で確か、始まった。というふうに理解しています。
 それで、ほんとに科学的技術的な見地から、何年が妥当であり、どうカウントするのが良いのかという事を、規制委員会、規制庁内部、或いは、ATENA(アテナ)」の関係者との間で議論をした時に、結論としては、それは一律に決められないという結論だったと思うのです。
 で、そもそもの40年、60年は技術的見地が全く無かった訳ではないが、やはり政策判断として決められたものであって、科学的技術的な見地から何年が妥当であると、我々は決める事は出来ないという事をここに盛り込んだので、表現上の問題はあるかもしれませんが、その趣旨としては、私もそれで良いのだと理解しています。

[ 山中委員長 ]少なくとも、高経年化に伴う劣化については、年数が経れば、劣化が生じます。ただし、それが一律ではなく、個々の原子力発電所で確認すべきものであって、何か科学的に原子力発電所の寿命が一義的に定まるものではない。
 それ以上、運転期間というのを、我々が一義的に定めていいものであるという事は判断出来ない状況と、私自身は考えます。石渡委員その点について、いかがでしょうか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】この文章というのは、委員会に出されたその場の議論と言いますか、その議題から見て、ATENA(アテナ)との高経年化に関する意見交換のまとめとして、これが出されているわけですね、実際、去年の9月にですね、ATENA(アテナ)が高経年化に関する、自分たちの簡単なパンフレット(*1)みたいのを出したわけですけれども、その中にも、この参考1の資料を引用されておりますが、例えば、第1項目とか、最後の第6項目、このような、「規制員会が意見をのべるべきような事柄では無い」というような文章は入っておりません。
 真ん中当たりの技術的な結論、それだけが引用されています。その意味でですね、「原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない」というのは、今、伴委員がおっしゃったように、技術的科学的にですね、ある年数を決める、というのは出来ないというニュアンスで元々書かれていたと私は理解しました。
 ですから、その、これを根拠にして、例えば、原子炉等規制法の40年ルールを無くしてもいいとか、そういう議論にはならないのではないかと私は思います。以上です。

(*1) 「安全な長期運転に向けた経年劣化管理の取組 2022年9月1日 原子力エネルギー協議会」 の事を示していると思われる。このパンフの4ページに参考1に言及したケ所があり、石渡氏はその部分を紹介したのだと思います。以下、該当部分を引用します。
<<< 引用開始 <<<
 ●原子力規制委員会は、ATENAとの技術的な意見交換を経て、「見解文書」を発出。
『運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化との関係に関する見解』(令和2年7月29日)
 ・ 中性子照射脆化、低サイクル疲労などについては、長期停止期間中はそのような事象が生じる環境にないことから、考慮しなくてもよい。
 ・ コンクリート構造物の中性化や塩分浸透など、長期停止期間中も劣化が進展する事象はあるが、各事業者が、プラントごとに適切に保管及び点検することにより、進展を抑制することができる。
 ・ 規制当局としては、事業者の保管対策及び点検の適切性について、個別プラントごとに確認することが必要である。
>>> 引用終了 >>>
 石渡委員が話すように、確かに「原子力規制委員会が係るべき事柄ではない」云々という言葉は見当たりません。


[ 山中委員長 ]根本から食い違ってきましたが、その辺り、他の委員どうでしょう。

[ 田中委員 ]先ほど、山中委員長が言われたように、各々の個別の実用炉というか、発電所の状況を見て、あと何年、10年延長出来るかどうか個別に考える、科学的判断から決める事であってですね、一律に中々決められないと思うのです。
 同時に石渡委員が言われるように、現在の43条のどこどこの第1項に40年とかあるのですが、その時に、いろんな議論が国会であったかと思うのですが、その時に本当に法体系の中で、あそこに40年の事を書くのは良いのかどうか、その時は国会での議論、なんですけれど。
 今回の法改正の状況をみると、ちょっと別に分けた方が良いのではないか、という観点で今議論されている所だと思うんですね。私自身とすれば、やはり我々が科学技術的な観点から、事業者が提出する長期施設管理計画等に基づいて、しっかりと確認するというのが、原子力規制委員会の大きなミッションであると、こういうような方針が良いのかなと私自身はそう思います。

[ 山中委員長 ]7月29日の段階で、私自身、この考え方に対して、やはり運転期間については、政策的に判断していただくべき事であると、つまり、長くなるか、短くなるか、利用政策上の判断であって、我々規制員会が何か、運転期間を定める、原子力に対して、提言するとか、提言しないとか、という事に対して、もの申す立場ではない、そういう意見を申し上げた。と、私は記憶しております。
 少なくとも、我々がやるべき事は、高経年化した原子力に対する安全規制を確実に行う事、基準に適合しているかどうか、基準に適合していなければ、原子炉の運転は、認可出来ないという事になりますし、適合していれば、認可出来るという事になるわけです。
 現状で、この10年積み重ねてきたのは、40年という延長運転認可制度、1回で20年先まで見通して、60年までの運転を認めるという事を我々は行ってきて、技術的にも、科学的にも、評価として、それは妥当なものであるという、経験を積んできたわけです。
 従いまして、期間がどうなろうとも、我々の任務としては、やはり安全規制をしっかりと行うという事であって、その考え方が、この資料の6番目の項目の考え方であると私自身は考えます。

[ 伴委員 ]参考1の資料の3項目め(*1)ですけれども、ここで40年とは、なんなんだという話になった時に、この時の結論としては、一つの評価を行うタイミングでしかない、タイミングとしての意味しか持ちえないというのが結論だったと思うのですね。
 で、結局その評価の、一遍立ち止まって、しっかり見て、それでさらに運転を延長出来る状態に、あるかどうかをもっときめ細やかに見ていく事で、経年劣化の評価をきちんとしていくという事が、今提案されているやり方だと思っています。
 40年が特別ではなくてですね、30年以降という言い方をしていますが、場合によっては、40年手前であっても、ダメなものはダメだと、きちんと言える、そういう制度にするという意味では、合理的なものだと私は考えます。

(*1) 配布資料 の(参考1 「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化との関係に関する見解」(47〜48ページ)の3.意味。
<<< 引用開始 <<<
3.この制度における原子力規制委員会の役割は、原子炉等の設備について、運転開始から一定期間経過した時点で、延長する期間において原子炉等の劣化を考慮した上で技術基準規則に定める基準に適合するか否かを、科学的・技術的観点から評価することである。運転期間を40年とする定めは、このような原子力規制委員会の立場から見ると、かかる評価を行うタイミング(運転開始から一定期間経過した時点)を特定するという意味を持つものである。
>>> 引用終了 >>>


●発言頭出し 【 石渡委員 】現在の制度でもですね、40年目に特別検査を行うわけですよね。そういう事になっているはずです。で、しっかりした規制を行うというのはもちろん、そのとおり必要な事なんですけれども。
 では60年目に何をするか、今、決まっていないと思います。これを決めずにしっかりした規制を行うと言っても、どういう規制を行うのか、具体的になっていないと思います。そこについてはいかがでしょうか。

[ 山中委員長 ]少なくとも、50年目までは、現行のルールで十分であるという事は議論をさせていただいたと思います。60年については具体的に何か現行の申請項目についてプラスアルファで加える必要があるかどうかについては、今後議論をさせていただきたいという、そういう、これまでの議論だったかと思います。
 その点については、石渡委員がおっしゃるとおり、具体的な項目については、決まっておりませんが、少なくとも50年目までの項目はきちっと見ていくという事で、プラスアルファ、どういう項目を付け加えるべきかという事については、今、決まっていないという事は事実でございます。

●発言頭出し 【 石渡委員 】ただ、こういう提案をされるという事であれば、私は少なくとも見通しぐらいは、こういうような規制をやる方針であるという事ぐらいはですね、現時点で決めるべき事ではないかと考えます。
 あと先ほど説明があった、参考2の電気事業法の話(*1)だと思うのですけれども、これは前回も述べましたが、「安全規制等に関わる法令等の制定や改正、運用の変更に対応するため、運転を停止した期間」は60年にプラスするという案のようなのですが、我々審査に関わっている人間としては、原子力の安全のために審査を厳格に行って、長引けば長引くほど運転期間がその分だけどんどん伸びていく、私はこれは非常に問題だと考えます。以上です。

(*1) 配布資料 の「参考2(6)原子力発電の運転期間に関する規律の整備@【電気事業法】」(49ページ)の意味。


[ 山中委員長 ]そこは三番目に議論しようと思っていた所でして、審査に対する公正性、公平性がそこなわれる可能性がある、いわゆる審査を慎重にやって時間がかかれば、高経年化が進むという、プレッシャーが、審査官にもかかりますし、審査を担当する委員にもかかってしまう。
 それと、高経年化がこのルールでは進んでいくというのは事実でございます。これは審査の問題と高経年化の安全規制の問題と両面はらんでいるかと思いますので、最後の項目として、議論をさせていただきたいと思います。
 次にですね、まず、運転期間に関する考え方というのは、石渡委員と一致しない所があろうかと思いますけれども、少し、議論を先に進めさせていただきたく思います。
 次に高経年化した原子炉の具体的な技術的な議論をさせていただきたく思います。先ほどからお話をさせていただいているように、劣化というのは、原子力発電所の使用期間が長くなればなるほど、当然進んでまいります。
 ただし、我々が責任を持たなければならないのは、期間ではなくて、ある時点で、その高経年化した原子炉について設けた、安全に対する基準が満たされているかどうかを、技術的に判断するかどうかという事につきるというふうに、私自身は考えています。
 ある時点で、例えば40年で、この先20年、運転を継続していいという、現在の制度であれば、そういうルールにもとづいて、我々は審査を行って、認可出来たものについては、運転を認めるし、万が一40年で認可出来なければ、運転をする事は認められない、という制度になっておりますけれども、これからは30年以降、10年毎に、もうけて、きちっと審査をしていこうという制度にしていこうというふうに考えています。
 技術的には40年で行っている仕組みを10年毎に行うという事で、基本的に今まで40年で、取得出来た技術的な経験というのは生かした状態で、評価が出来ると、少なくとも、50年までは項目については変える必要はなかろうと、というのは議論をさせていただいた所です。
 これまでの科学的・技術的な見地からお話しますと、圧力容器、コンクリート、電気ケーブル、などの劣化、これを40年の時点で20年間延長可能であるという事を、科学的に評価をして、認可出来たものについては、実際、実証出来たと我々が検証する事が出来たと考えています。
 それを30年、40年、50年、60年も、当然同じレベルの評価以上のようなものになろうかと思いますが、そのように審査を進めていけば、より厳正に基準を満たしているかどうかの判断が出来ると考えています。
 物理的な特性については、これまでお話ししてきたような、中性子脆化(ぜいか)でありますとか、電気的な性能の劣化でありますとか、或いは、コンクリートの強度の劣化等が重要になってくるかと思います。
 さらに運転期間が延びれば、先ほどから話題に上っているような設計の古さについても、設計思想の転換のような項目については、我々はきちっとバックフィットの制度の中で対応出来るように、考えていく事が必要かと思います。私の安全規制に関する考え方については以上です。委員の先生方から意見をちょうだい出来ればと思います。

[ 田中委員 ]はい、あの大きな考え方とすればそういうものだと思います。もちろん、原子炉によって中性子束が違うとか、行動等が違うから、原子力発電所の特徴をふまえてですね、いかに、科学的・技術的に見るかが大事です。
 これまでも、50年といいますか、60年までは、今までの方針のままでという議論がありました。さらに60年を超える時にはですね、どういう風な項目をどうやったら良いのか、まさしく、科学的な知見をもって、しっかりと見ないといけないと思います。
 そういった意味では、炉によって状況が違いますから、炉の特性を踏まえて、状況をしっかりと見ていき、さらに、長期になってくるとですね、評価項目、評価の視点等々がですね、より厳しくなっていくのは当然であるかと思います。以上です。

[ 杉山委員 ]新しい制度案に基づくと、30年を過ぎた所から、次の10年の認可を与えるといいますか、現行のですね、40年を迎える時に、一気に次の20年を迎えてしまうという方法。
 それに比べると、私はまあ、かなり刻んだ、10年というのは最長10年という意味ですけれども、そういう意味で、そのたびに、きちんとしたその、基準適合性も含めて、劣化も含めてみるという事で、これまでよりは細かく見る事が出来る。
 40年目に従来行ってきたような特別点検を行う、これは、残すわけでありまして、で、60年目に何をするのか決めないという、石渡委員の先ほどのご意見、それはもちろんある程度分かりますけど、そこは、非常に慎重に決めなけれいけないと思います。で、だから、今それを決めたうえで、先に進もうというよりは、まあ、その時までに、じっくりと議論すると、そういう事なのかなと私は思っております。

[ 伴委員 ]今も高経年化の評価を行われる仕組みになっていて、50年の所までは、これまで通りだろうという委員長のご発言がございましたけれども、つまり、そこまでは、いってみれば、今高経年化の評価をやっているものを規則レベルにあげていく、より厳格に審査を行って、長期計画を認可していく、そういう仕組みになるわけですけれども。
 実質的には変わらない、という見方も一方では出来るわけです。それで、石渡委員のご懸念は、だとすると、今までと同じでいいととしても、60年を超える、そこの所でどうするんだと。
 それは杉山委員がおっしゃったように、じっくりと議論すべきだとは思いますが、一方でその、石渡委員にしても、私にしても、原子力工学の専門ではありませんので、そういうものからした時に、じゃあ、それは出来ますか、という問いが出てくるわけです。で、勝算はあるのですか、そこの所を率直なご意見を、他の三人の委員に伺いたいと思います。

[ 杉山委員 ]具体的にこれをもって、設計の古さを判断するという定量化するというのは難しいのですが、今、新しい原子炉、海外に導入されているもの、実用化されているもの、そういったものが備えている機能、そういったものをある程度、義務化するというか。
 測定して得られる数値ではなくて、必要な機能を備えているかどう、私はそういったものを求めていくのかなと思っています。それを入れるというのはすごく大きな判断でして、それを後付けするのは難しいような機能になる可能性は高くて、そうするとですね、今、ある炉が、ダメになるかもしれない。
 それをある程度はやむなしというか、そこを斟酌せずに、必要な機能として我々が決める、そういう所があると思います。ちょっと今の段階ではそれぐらいの事しか言えないのですが。

[ 伴委員 ]すいません、一つ確認なんですけれども、これ、以前、私、発言したんですが、性能規定ではなくて、むしろ、仕様規定(*1)に近いものを入れるという、そういった事ですか。

(*1) 性能規定、仕様規定は建築基準法でよく使われる用語、以下は 用語説明 の文章の引用です。
「安全確保などを目的とする法令の技術基準は、従来、材料や寸法などを具体的に示す「仕様規定」が主流だった。仕様規定は、規制する側とされる側が共通の技術的基盤に立っていれば、確実で紛れがなく一定の安全性を確保しやすいが、新技術の開発を阻害しがちになるなどという欠点もある。このため、一九九〇年代の後半から、政府の規制改革委員会などが中心になり、「国の定める基準認証制度の技術基準は原則として全て性能規定に変えるべき」という改革が進められた。」


 ◆問題点を次々に指摘する石渡委員(東京新聞)

 午後7時10分 議論はかみ合わないまま、話題は60年超の原発の審査手法が白紙であることに移る。 (東京新聞)

[ 杉山委員 ]はい、そういった部分も必要かと思っております。性能というのはですね、なんといいますか、後付けでも、なんだかんだいって、達成出来る部分が多いと思うんです。例えば、リスクを下げると言った時に計算上のリスクを下げるというのはまあ、出来てしまうといいますか。
 ただ、そういった、つぎはぎだらけの施設、それに信頼性を置けるか、確保出来るかという、そういった意味では、最初から、そういったつもりで、作った施設にまさるものはないと考えておりまして、そういう意味で、後付けでなんとか出来る部分、出来ない部分を、ある意味ふるいにかける、そういった思い切った要求は必要になってくると思います。

[ 石渡委員 ]( 首をかしげる ) (東京新聞)

 午後7時半 政府方針の審査による停止期間を運転年数から除外する仕組みが話題に。委員間の規制に対する見解の相違が大きくなっていく。(東京新聞)

[ 山中委員長 ]先ほどの伴委員からの質問に対するお答えをすると、重要な劣化のモードととして、圧力容器の中性子脆化(ぜいか)と、コンクリートと電気ケーブルの特性の劣化の三つをあげましたけれども、その三つについては、少なくとも、劣化については60年以上の実データが手に入っております。
 実際の炉に対して、60年以上運転しても、これぐらいの健全性を評価出来るという、科学的根拠もございますし、論拠もございます。また、ケーブルについて、或いは、コンクリートについても、これまで、破壊検査、或いは加速試験等から、きちっとした予測式も提案されておりますし、劣化をすれば、当然、ケーブルなんかは劣化の予測に基づいて、重要な所は交換する事は出来ますし、また、コンクリートについても、劣化予測式については、十分な精度をもって、予測が出来ます。
 よって少なくとも、現行で60年の運転期間については、十分な評価が出来るかな、或いは、その60年を超えた所で仮に評価をしたとすると、次の10年という事はある程度は担保は出来るかな、というふうに考えております。

●発言頭出し 【 石渡委員 】伴委員がよくおっしゃる設計の古さなんですが、これは伴委員のニュアンスでは、かなり抽象的に聞こえるのですが、これはATENA(アテナ)の資料を見ると、もっと非常に具体的でありまして、要するに50年も60年すると、もう部品が調達出来ないという事(*1)を深刻に考えている。やっぱり事業者ですから、考えてるわけですよね。
 それで、設計の古さというのは、まさに直接的にはそういう所だと思うのですね、それに対する対策というのを、ATENA(アテナ)のほうでは考えているようですが、やはり古いものについては、実際的な障害というものが起きてくる。これは避けられないと思います。
 それで、現在の法律の案では30年から10年毎に検査をすると、ただ、それはですね、10年毎に検査をするとしか書いていなくてですね、要するにどんどん経年化は進んでいくわけですね、これに対して、例えば、40年目、50年目と、その検査する項目といいますか、検査の内容といいますか、これは経年数に応じて変えていく必要はないんでしょうか。ずっと同じ検査でいいわけですか、私は、この案について、そこの所がも疑問に思っている所なんです。

(*1) 「安全な長期運転に向けた経年劣化管理の取組 2022年9月1日 原子力エネルギー協議会」 の事を示していると思われる。このパンフの6ページ目にに製造中止となる部品の問題に言及した所があり、石渡氏はその部分を紹介したのだと思います。以下に該当部分を引用します。
<<< 引用開始 <<<
3−3.製造中止品管理に係る取組
┌─────────────────────────────────────┐
│【従来の取組】                               │
│・既設プラントの安全機能の維持・向上のために、原子力発電所を構成する   │
│ 機器・系統・構築物の保守管理を、定期的かつ計画的に行っている      │
│・運転開始以降、一部の部品やサービスが提供されなくなる事例が       │
│ 出てきているが、これに対しては、事前に調達先から製造中止等の情報を   │
│ 入手し、予備品の確保や代替品の開発、機器の取替等を行うことで、     │
│ 既設プラントの安全機能の維持、向上に取り組んでいる           │
└─────────────────────────────────────┘
 ・今後、長期運転を行っていくにあたって、時間の経過に伴い、一部部品の
  製造中止や既存メーカの撤退による事例が増加していくことが想定される
 ・このような状況が顕在化した場合においても、事業者は、既設プラントの
  安全機能の維持・向上に継続的に自主的に取り組んでいく
 ・ 今後、増加が予想される製造中止品への対応を確実にし、設備の機能を維持
  するために、これまで主に発電所や担当部門単位で情報を入手し、対応を検討
  してきた取組を強化し、事業者が製造中止品情報をプラントメーカー等から、
  継続的に入手・整備し、それを一元的に管理し、事業者が連携して対応する
  仕組みを、ATENAの自主ガイドライン(製造中止品管理ガイドライン)として
  取りまとめ。各社はガイドに基づき、適切な管理の仕組み・体制を構築し、運用中
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[ 山中委員長 ]少なくともその根拠を述べますと、40年の運転延長認可制度で、40年の1回の申請、これは事業者が出してきた、様々な物理的な項目に対して、我々はきちっと審査をして、20年間の先の評価をして、運転延長をしてもいいという、そういう審査結果を出しているわけです。
 これからは少なくとも10年ごとで、これから先、直近でいうと50年という事になりますが、50年で40年でやった評価と同じ評価をしていただいて、そこからまた10年を予測しましょう、既に60年までに予測出来ている事を10年毎にやっていきましょうという、当然、精度も上がりますし、審査の厳正さも上がるだろうと、私は思っています。

[ 杉山委員 ]あの、今の石渡先生のご質問で、年が経つにつれて、評価の仕方を変えるといいますか、これはあくまでも劣化の評価であって、その劣化を考慮した状態で、どんな基準を満たすかという所で、多分、基準の側で、これくらい古いものには、これくらい性能を求めるというような、そういった効果を盛り込むのだと、私は思っております。
 今、ここで定めているのが、あくまでも劣化の評価の話だけが、書かれていて、最初に私が申し上げたように、全体像が見えないというのは、そういう所でして、これと組み合わされる、基準というものを、古いものをふるい落とすような仕組みと合わせる事で、それと合わせる事で、劣化を考慮しても、その時求められる基準を満たすという事、年ごとに、評価しなければいけない。そういう仕組みになると、私は認識しております。

[ 田中委員 ]委員のほうから言われましたけれども、やはり私とすれば、事業者が策定した長期施設管理計画が、劣化事象の進展とか、いろいろな事を考えても、基準に適合しているかという所を、規制委員会がしっかりとそこを見れるかどうか、一番のポイントになってくると思います。
 長期にやってくると、劣化も進んでくるし、予測式があっても、そのとおりに、いかないものが実際にでてくるかもしれない。そうすると、どれくらいの幅をもって、それを考えられるのか、等々、総合的に判断する能力が我々にないとですね、長期施設管理計画も認可出来なくなってくる。それなりに、我々にも大きな責任があると思っています。

[ 山中委員長 ]その他いかがでしょうか、何か石渡委員、いわゆる高経年化の安全規制について、こういう所が不十分だ、という所がもしあれば、ご意見いただければ。

●発言頭出し 【 石渡委員 】ですから、今の杉山委員のお話は、原子炉等規制法という大きな法律ではなくて、その下の法律で決めるという話ですよね。

[ 杉山委員 ]あの実際に、あのなんですか、どういった基準を満たすかという基準の部分は、原子炉等規制法、本体の中ではなくて、その下部で、決めていくのだと思っています。

●発言頭出し 【 石渡委員 】ただ、私としては、例えば、経年数に応じた検査をするとか、そういうような文言があってしかるべきではないか、というふうに思うのですが。ただ、10年毎にやるという、事しか、今、書いていないですね、私はそういう所を申し上げただけです。以上です。

[ 山中委員長 ]当然その、個々の原子炉について、経年劣化の度合いは変わってきますし、当然置かれた環境によって、考えないといけない劣化のモードも変わってきます、それについては、私もそういった発言をさせていただいたかと思うのですが。
 特に時間が経てば経つほど、炉の特徴が出てくるので、少なくとも、60年については、やらなくてはならないというふうに思っています。50年目までは少なくとも、今、40年での予測が出来ているわけですから、50年はその予測が正しいかというのを実データをとって、認可制度の中で見ていくと。
 まあ、これまでも格上げした制度の中で見ていくと、そういうやり方で良いのではないかと思っています。

[ 伴委員 ]今の委員長のご発言ですけれども、そうすると、60年の所に関しては、最大公約数的なといいますか、ミニマムセットみたいなものを、今やっているものをやった上で、あるは炉系であったり、特定の炉毎に、異なる項目を要求する事があり得るという、そういう理解でよろしいですか、

[ 山中委員長 ]要求するか、或いは、事業者が申し述べてきた、自分たちの炉に対する理解、例えば、大きな地震を体験したとか、或いは炉水に大きな変化があったとか、そういった所をきちっと、自分たちのプラントを理解したうえで、申請を出してきてもらう、我々は本当にそうかどうかというのを、きちっと審査をしていく、50年目、60年目で、あるべき姿かと思っています。

[ 田中委員 ]そのへんの具体の所は規則で定めていく事になるじゃないですか。

[ 山中委員長 ]そのとおりだと思います。いかがでしょう。ほぼ論点は出たかなと思います。あの、納得していただいたかは分かりませんが、もう少し、議論を続けたいと思います。
 審査の公正性に対する影響の問題です。私はこれまで通り、厳格な審査を行っていただくという事で、全く問題がないと思っています。仮に審査が長くなっても、そのような点と高経年化を結びつけずに、審査は審査として、厳正に行っていただくという事が我々に求められた正しい姿であると思いますし、それは、地盤関係だけでなくて、プラント関係についても同じだと思います。
 問題があればゆっくりと時間をかけて、きちっと審査をしていただく。仮に、石渡先生が危惧されているような、審査期間を故意に延ばすような、事業者が出てきたような場合には、委員会として、当然、その審査がどのように行わているのかというのは、きちっと観察をしていく。
 今でも、観察しているわけですから、審査の中断、或いは、停止の措置というのを厳正に対応すべきであると考えますし、審査の期間の長さによって、仮に、運転が延長された場合には、厳正に高経年化の審査を行って、基準を満たさなければ、運転が出来なくなるという、運転が出来なくなるというそれに尽きると思います。この点について、他の委員、意見ございますか。

[ 杉山委員 ]例えば審査に要した時間分、後で取り返せる、というふうにも読めますけれども、以前から議論しているように、出力運転中に進む劣化とただ何もしていない時の劣化、止まった時でも進む劣化がありまして、後者のほうは明らかに、その分、劣化は進むわけです。
 そういう意味で、事業者が、時間稼ぎをするメリットは全くないと考えていまして、当然、そんな素振りをみせたら、厳正に我々の側から、警告するといいますか、そういった所で、そういった懸念は排除していきたいと思います。

[ 田中委員 ]はい、今委員長お話ししたように、審査を厳正に行うというのは当然の事でありますので、我々も、審査の効率化という、それなりの努力は、やっているかと思うのですが、いくら、効率化しようとしても、厳正に行う事はもちろんの事でございます。

●発言頭出し 【 石渡委員 】安全規制に関わる法令等の政令の改正、運用の変更に対応するため、運転を停止した期間と書いてあるんですよね、で、例えばですよね、審査上不備があって、審査を中断して、検査に入った、という事例が今までもありました。これは検査に入っている期間も、延びるわけですよね、多分そうなんだと思うのですよ。
 で、要するにですね、我々の責任ではなくて、事業者側の責任でそういう事が起きて、それに対して、我々として、不本意ながらも、審査を中断をして、検査に入らざるを得なかった、それも、後で運転期間延ばしていいよという話なわけですよね。
 それは私は非常におかしいと思うのですね。そういう制度になるのであれば、審査をしている人間としては、これはちょっと耐えられないと思います。以上です。

[ 山中委員長 ]事業者に非常に問題がある場合は、これまでは、検査という形を取りましたけれど、或いは、審査を中断する、停止をするという判断も今後必要になる、と思いますが、そのあたり、石渡委員いかがでしょう。私はその、審査に対して、早くするとか、短くするとか、長くなってはいけないとかは、全く考えておりませんし、審査については、これまで通り、厳正にやっていただければ全く問題ないし、そうでなければいけない。

●発言頭出し 【 石渡委員 】私としても、そのつもりでおりますが、その審査を中断して、検査に入っていた期間も、運転延長していいという事については、私はそれはよくないと考えます。

[ 杉山委員 ]まず、我々審査を行う側が、この利用政策側が、どういった時間をカウントして、何をカウントしないかについては、気にする必要はないと思っています。
 我々が劣化評価する時には、どんな理由で運転していなかったかは、評価上関係ないわけです。私たち審査で掛かった時間をカウントするかしないか、我々の劣化審査には全く影響を与えない事だと思っています。
 そこで影響を与えるとすれば、先ほどから言っていますように、古さをフィルターにかけるように、我々が導入した時に、単純に審査で時間が掛かった理由、不可避な理由だとしても、それはそれで単純に原子炉を建設してから、時間が経っている、そういった所で、審査がより厳しくなっていくはずなので、というか、我々はセットしようとしていますので、そこでつじつまがあうという事にするのだと思います。

[ 山中委員長 ]私も高経年化の審査と、審査そのものとは、別に考えないといけない。少なくとも、高経年化をどういうふうに我々が評価していくか、タイミングの問題というのは、運転期間に対する、利用政策側の判断である。
 私はその結論というのは、これまで通りの見解であるという事ですので、きちっと切り分けて考えないといけない。審査は厳正にやるべきだし、それは、無用に事業者側が延ばすという事があれば、審査をきちっと中断する、というような手続きをする必要はあろうかと思います。そこに高経年化の別の問題を一緒に考えるというのは、別の問題であると、私自身は考えます。

●発言頭出し 【 石渡委員 】今、委員長おっしゃったように、審査で、もし何かそういう不心得な事があれば審査を中断するというのは、もちろんだと思います。ただ審査を中断するのはいいんですが、中断していた期間も、運転期間の延長に加わるわけですよ。
 これは切り分けて、別な話だと、おっしゃいますけれども、やはり、その分だけ、増えるという事で、これは、原子力の安全に関わりますよね、劣化が進むわけですから。時間が経てば進んでいくものがあるわけですから、私はそこを切り分けるというのは…。

[ 山中委員長 ]そこに誤解があるようなのですが、当然、運転期間が長くなれば、劣化は進んでいきます。ただ、我々がするのは、運転期間の制限をかけるのではなくて、やはり、ある期日が来た時に基準を満たしているかどうかという、安全規制をするのだというのが我々の任務だと考えています。
 運転期間をどうのこうのというのを、我々が科学技術的に判断するというのは、これまでの議論とは違うかなと思います。そこはどうも、石渡委員と根本的に食い違っている所かなと思います。

●発言頭出し 【 石渡委員 】私はこの経産省の案に書いてある通りを読み、理解して、私自身の頭の中では、そうとしか理解出来ませんので、そのように申し上げておるだけです。

 ◆「根本的に食い違っている」と繰り返した山中委員長 (東京新聞)

[ 山中委員長 ]運転期間の考え方というのは、私ども委員会で決めた結果というのは、どうも納得出来ないというのは、石渡委員のお考えか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】基本的に40年、60年という枠組みは変えないというのは、この経産省の案ですよね、で、その枠組みを変えないのであれば、我々として積極的に原子炉等規制法を変えに行く必要は、私はないと考えています。

[ 山中委員長 ]少なくとも、原則40年、20年というのは原則ですけれども、運転停止期間をそこに加えるという資源エネルギー庁の案ですから、我々が安全規制を行っていくタイミングというのは、少なくとも60年を超えるケースが出てくるというように考えないといけないと、私自身は思っているのです。
 他の委員いかがでしょうか。2年前に出した結論と少し違うご意見が出ておりますが、その点についていかがでしょう。根本からご意見が食い違っていますので、

[ 杉山委員 ]石渡先生のおっしゃる事が食い違っているとは思っておりませんで、石渡委員のご懸念は先ほどから仰っているように、審査に要した分が後ろにまた追加されてしまう、その分劣化が進むのではないか、当然そうだと思っています。
 劣化を評価する時に、当然不利になるという事で、私はそれまでの話だと思っております。エネ庁側、推進側が書いてある、40プラス20というのは、今までの原子炉等規制法との連続性を維持して、そういう書き方をしていますけれど、事実上、プラス20年ではないという事は内容からして明らかであります。
 原子炉等規制法側の記載とこれは、これはもう一致しておりませんので、原子炉等規制法残して、こちらをこのように改修するというのは、不可能だと思います。

●発言頭出し 【 石渡委員 】私の考えはもうだいぶ述べましたので、それ以上、付け加える事はございません。

 午後7時40分 埋まらない溝が明確になり、山中委員長はまとめに入る。(東京新聞)

[ 山中委員長 ]何か事務方から付け加える事ございますか。

[ 事務局 ]あの、先ほど石渡委員から、年数に応じた評価のような形を組んだら良いのではというお話がありました。今も40年の特別点検がありますけれども、今日の資料の中の24ページ、ご覧いただきますと、劣化評価をどのようにやるのかという事を、書いております。
 石渡委員のご意見のように年数に応じてという表現を使っているわけではございませんが、例えば24ページの5項の所は原子力規制委員会の規則で定める所によるという。
 我々の議論で、それをどのようにやるかというのは、きちんと定める形にしてございます。それから6項の認可の中の要件の中でも、劣化状態を定める基準を規制委員会に適合させる形で、どういう方法であれば良いのかという事についても、そのような形で、設定は出来るように枠組みとしてはなっているという事だけ、事務局からは伝えたい。

[ 山中委員長 ]その他何かございますか。よろしいでしょうか。石渡委員、原子炉等規制法と電気事業法の両方に違う事が記載されている状態は極めて安全規制上、好ましくない状態だと、私は思いますので、これは改正をしないと、いけない。
 むしろ、原子炉等規制法をきちっと改正して、高経年化した原子力発電所の安全規制を行っていくという事を、ルール化するというのが我々の任務だと思うのですが、その点については納得出来ないという、ご意見でよろしいですか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】原子炉等規制法というのはですね、ある意味、原子力規制委員会設置法とペアのような形で、その時に制定された法律だと理解しています。原子炉等規制法というのは従って、原子力規制委員会が守るべき法律であると、思っております。
 そこで、我々としては、科学的技術的な理由、そして、より安全側に変えるという、そういうはっきりとした理由があれば、これを変える事にやぶさかではございませんが、私としては、今回のこの変更というのは、そのどちらでもない、というふうに考えます。

[ 山中委員長 ]おそらく、そう考えられる所に運転期間について、やはり安全規制で考えるべきであるという石渡先生のお考えだと思うのですが、そこに対しての考えが、根本的に食い違っているかなと思うんです。そういう理解でよろしいですか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】それはそうかもしれません。

◆賛成委員も「じっくり議論して進めるべき」「違和感」(東京新聞)

[ 山中委員長 ]その他、委員の先生方から、追加するご意見ございますか。よろしいですか。そうしますと、高経年化した原子力の安全規制について、まず根本の運転期間に対する考え方が、石渡委員と他の委員とが食い違ってしまったので、石渡委員のご信条(*1)というのは、変わることは無いかと思いますので、本日改めて、前回、決を取りましたが、改めて、委員の先生方から、安全規制の概要案と法律の条文案についての賛否をお一人づつお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(*1)山中委員長の「石渡委員のご信条」という発言、信条という言葉が出てくるのは、ここだけである。 辞書 によると、宗教・信仰関連以外では「堅く信じて守っている事柄。」とあり、普通の考えというより、「かたくなに信じている」考えという印象を与える言葉だ。山中委員長のほうが、明らかに「かたくな」態度としか思えないのだが・・。


[ 田中委員 ]はい、まず安全規制の概要の所と法律の改正案については、私はそれでいいと思います。

[ 山中委員長 ]私も両方ともこれで賛成したいと思います。

[ 杉山委員 ]私はこの中身の話、何が書いてあるかについて、この範囲については了承したいと思っています。それに基づいた法案の文案も同じくです。ただ、やっぱり最初に申し上げたように、これは説明が圧倒的に足りないと思うんです。
 そこがすごくまあ、ちょっと言い方が悪いですけれども、気にいらなくてですね。今まで申し上げてきた事が、次の機会の資料に、書き物に反映されていない、この限られた資料だけが最後のアウトプットになってしまっている。
 パブリックコメントに出した時にですね、改めて見た人たちに、これまでの話が、全然伝わっていない、それがすごく問題だと思っています。先ほど、言いましたように、今からでも、そういった説明の資料は、ちゃんと世に出して欲しいです。
 あともう一つですね、これ、言っちゃて良いのかなという所はあるんですけれど。我々は、これを決めるにあたって、外から定められた締め切りを守らなければいけない、そういう感じで、せかされて議論をしてきました。
 そもそも、それはなんなんだという所はあります。我々は独立した機関であって、我々の中で、じっくり議論して進めるべき話ではあるんですけれども、色んな他省庁との関係もあるんでしょうけれども、我々はそういう外のペースに巻き込まれずに議論をすべきであったと思っております。
 ただ、もう一度言いますけれど、この範囲の書き物の中身は、これは特別に凄いものを盛り込んだというよりは、今の制度の骨子の部分をまとめたものであって、それに関して私は賛同いたします。以上です。

[ 伴委員 ]別紙1の安全規制の条文案ですけれども、私は、合理的な変化であるという事で了承します。ただ、杉山委員も指摘されましたけれども、やはり、外枠といいますか、制度論だけが先行してしまって、本来の我々にとって、サブスタンスであるべき所の基準、特に60年超えをどうするんだというのが、後回しになってしまった。そこがふわっとしたまま、こういう形で決めなければいけなくなった事に関しては、確かに私も違和感を覚えています。

●発言頭出し 【 石渡委員 】私の意見は、この改変、法律の変更というのは、科学的、技術的な、新知見に基づくものではない、安全側への改変とも言えない。審査を厳格に行えば行うほど、将来より高経年化した炉を運転する事になる。こういった事により、私はこの案に反対致します。(会場から拍手?)

 午後7時48分 議論が最終盤を迎える。(東京新聞)

[ 山中委員長 ]残念ながら、石渡委員には、ご賛同を得る事が出来ませんでした、運転期間についての、根本的なお考えが違うという事で、この考えは変わる事はないかなと、思います。本日の賛否の結果をもって、委員会の決定と致したいと思います。両案決定させていただきたいと思います。
 その上で、ご反対の石渡委員にも、今後の高経年化の安全規制についての議論には、積極的に参加をしていきたいと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。

●発言頭出し 【 石渡委員 】はい、もちろん委員ですので参加はさせていただきます。

[ 山中委員長 ]ありがとうございます。その他、何か、先生方からご意見ございますでしょうか、どうぞ。

[ 杉山委員 ]あの、私は決をとって進んでしまって良いのかというのは、疑問は感じております、ただ、石渡委員が、今納得出来ない事に対して、きちんと納得のいく、納得させる事が目的ではありませんが、懸念がなくなるような、基準の策定に関して、議論をしていく所存でありまして、その際には、石渡委員の意見もお伺いし続けていきたいと思います。

[ 山中委員長 ]石渡委員、今後もよろしくお願いします。それでは、本日の委員会はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。(抗議の声?)

 午後7時52分閉会 (東京新聞)


【 今後の課題等 】
 
 
(1)「原子力規制員会が関わるべき事柄ではない」という文は事業者側(アテナ)との「実務レベルの技術的意見交換」の中で出てきたものであり、規制委員会の全体の意志として確認したものではないことが明らかになったので、規制委員会はこの文言を単一議題にして、全体の意思の確認をとるべきである。

(2)事業者側(アテナ)が作成した資料にある「製造中止となる部品」問題のように、運転期間が延びるほど、劣化以外の問題も生じてくるので、経年数に応じた検査は必要である。

(3)規制委側の責任ではなく、事業者側の責任で、審査を中断して、審査が長引くというのは、高経年化を進行させることになる、よって、安全側にたつならば、事業者に60年越えの運転はさせてはいけない。

(4)パプコメが出たときには、どうして、このような改正が必要になったかという話が伝わっていない、今からでも、説明資料を作成し、国民に説明すべきである。

(5)今回の法改正は他の省庁との関連もあって、60年越えをどうするのかという、本来一番大事な議論が後回しとなった。「独立した機関」としての議論が出来なかった。今後は原点に立ち返り、外のペースに巻きまれずに議論をすべきである。

(6)法改正は「科学的、技術的な、新知見に基づくもの」があった場合にかぎるべきであり、今回の法改正は正しい筋道ではない。

(7)委員内部で意見が割れたとき、採決で決めていく手法は問題がある。今後、決め方について議論すべきである。


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