[2023_02_08_04]原発老朽化対応の新制度 規制委が決定先送り 委員から反対意見 (NHK2023年2月8日)
 
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原発老朽化対応の新制度 規制委が決定先送り 委員から反対意見

 2023年2月8日 19時09分
 現在の法律で原則40年、最長60年とされている原子力発電所の運転期間を実質的に延長する政府の方針を受けて、8日の原子力規制委員会では、老朽化に対応するための新しい制度を正式に決定するかどうかが諮られましたが、委員の1人から反対意見が出され、決定は先送りされました。
 政府は原則40年、最長で60年と定められている原発の運転期間について、審査などによる停止期間を除外し、実質的に60年を超えて運転できるようにする方針を取りまとめています。
 これを受けて原子力規制委員会は、原発の老朽化に対応するための制度として、運転開始から30年以降は10年を超えない期間ごとに機器や設備の劣化状況を確認して管理計画を策定する案をまとめ、8日の定例会で正式に決定するかどうかが諮られましたが、地震や津波などの審査を担当する石渡明委員が反対しました。
 石渡委員は反対する理由について、運転期間の制限が原子力規制委員会の所管から経済産業省の所管に移ることを踏まえ、「科学的技術的知見に基づいて人と環境を守ることが規制委員会の使命だと思う。運転期間の制限を落とすのは安全側の改変とは言えない」と述べました。
 そのうえで、「審査に時間をかければかけるほど、運転期間が延びる案が提案されているようだが、審査期間が延びると、将来、より高経年化した炉を動かすことになるという二律背反になる」と述べました。
 このため、規制委員会は制度の決定を先送りし、来週改めて議論することになりました。

 一般からは反対意見が多くを占める

 8日の規制委員会では、新たな制度の案について先月20日まで30日間、一般から意見を募集した結果が報告されました。
 寄せられた意見は1749件で、「福島第一原発の事故を受けて盛り込まれた40年という規定は守るべき」とか、「点検や老朽化の評価には限界がある」といった反対意見が多くを占めました。
 これに対し規制委員会は、「原子炉施設の劣化の程度は、使われ方や管理状況などにより異なるため、適切な時期に劣化状況を具体的に把握し、その結果に基づいて基準に適合しているか個々に確認する必要がある」などと回答しています。
 また制度作りをめぐって、事務局の原子力規制庁が推進側の経済産業省と事前に面談し、やり取りしていたことについても、「独立性を放棄するもの」「規制側と推進側が癒着している」などと批判する意見が寄せられました。
 これについて規制委員会は、「面談は、安全規制について事前に協議したり、調整したりといった行為が行われていたものではない」としたうえで、今後の対応について、「透明性を一層高める観点から、原子力利用を推進する行政組織との面談について、議事要旨などを公開することとした」などと回答しています。

 規制委 山中委員長「委員が誤解されている部分も」

 原子力規制委員会の山中伸介委員長は8日の定例会見で、「委員会で反対意見が出ることそのものは、議論を尽くすという意味ではよかったが、石渡委員が誤解されている部分もあると思う」と述べました。
 そのうえで、「説明はするかもしれないが説得はない。委員の間で意見が違うのはいけないことではないし議論していきたい。多数決を取ったことはないし、きょうもできるだけ議論尽くしたいということで、時間的余裕あるなら結論を得たいとしてきた。来週もそのつもりで臨みたい」と話し、来週の定例会で議論し決定を目指す考えを示しました。
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