[2023_02_15_03]「厳格に審査するほど運転期間が延びる」原発60年超運転を認める政府方針が抱える矛盾(東京新聞2023年2月15日)
 
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「厳格に審査するほど運転期間が延びる」原発60年超運転を認める政府方針が抱える矛盾

 2023年2月15日 06時00分
 「原則40年、最長60年」と法律で規定された原発の運転期間の見直しを巡り、原子力規制委員会が13日に多数決で決めた新たな規制制度は、60年を超える運転をどのように規制するかは現時点、白紙だ。採決で反対した石渡明委員は、審査が難航した原発の延命につながる仕組みになっていることも懸念する。老朽原発の厳格な規制ができるのかは見通せない。

 ◆「しっかり規制」具体的ではない

 新制度は、運転開始から30年後を起点に10年以内ごとに劣化状況を審査する。60年までは現行の審査項目とほぼ同じだが、60年超の審査でどのような項目を確認するかは今後に議論する。
 13日の規制委の臨時会で石渡委員は「(60年超の審査内容を)決めずに『しっかり規制する』と言っても具体的ではない。少なくとも見通しは決めるべきだ」と主張。ほかの委員らは「慎重な議論が必要」と応じなかった。
 政府方針は、最長60年の運転制限は維持した上で、審査などによる停止期間を運転年数から除外。60年超運転を可能にする。
 新制度では、再稼働審査が難航して停止が長引いた原発の追加延長期間が長くなり、事故リスクが高い老朽原発の稼働を助長することになる。審査中の10原発は、電力会社の説明が不十分なために長引いているケースが大半。審査でつまずいても、将来的に取り返せる矛盾をはらむ。
 石渡委員は「厳格に審査をすればするほど、運転期間が延びていく。非常に問題」と批判したが、山中伸介委員長は「制度と審査は別の話」と取り合わなかった。

 ◆利用期間は政策判断?規制委の独立性は

 規制委が政府による運転期間の見直しを容認した根拠についても、石渡委員は疑問を投げかけた。2020年7月に決定した見解で「原発の利用期間は原子力利用に関する政策判断で、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではない」と記されている。
 石渡委員は「当時の委員会では、十分に議論していない。この文書をあたかも金科玉条のように使い、40年ルールをなくしていいという議論にはならない」と指摘。田中知委員は「十分に議論したかというと、少なかったかもしれない」と認めた。
 運転期間の延長によるリスクを懸念した石渡委員に対し、山中委員長らは年数で一律には判断せず、個別の原子炉の劣化状況を確認するべきだとの姿勢。性急な手続きに対しては複数の委員から批判があったが、石渡委員の懸念は解消されることがないまま、生煮えの規制制度が決まった。(小野沢健太)
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