【記事43040】「揺れを過小評価」 中央構造線から6〜8キロに立地(大分合同新聞2016年5月7日)
 
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「揺れを過小評価」 中央構造線から6〜8キロに立地

 【大分合同・愛媛伊方特別支局】熊本・大分地震で、西日本を横断する国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が注目されている。震源は熊本の「布田川断層帯」「日奈久断層帯」を中心に、大分の「別府―万年山断層帯」へと波及したとみられ、その延長線上にあるのが中央構造線だからだ。近くには再稼働が迫る四国電力伊方原発(愛媛県)も立地する。主な震源は別府市の地下で止まっており、さらに東へと波及する兆候はみられないが、識者は「もしも数カ月か数年の間に別府湾の方で活動が活発化すれば、注意が必要だ」と説明する。

7千年の間に5回
 「一連の地震は(断層の)右横ずれ。中央構造線系の活断層が動いたのは明らかだ」。別府湾などで海底の断層調査を手掛けてきた高知大学防災推進センターの岡村真特任教授(地震地質学)は、こう指摘した。
 中央構造線断層帯は紀伊半島から四国の伊予灘へ続く長大な活断層。地質の境界線としての中央構造線はさらに東西に長く、西は伊予灘から別府湾、熊本、八代海へ抜ける。つまり熊本・大分地震は中央構造線の西端が動いたともいえる。
 中央構造線では、過去約7千年の間に少なくとも5回、大地震が起きたとされる。日本の南の海底では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートへ斜めに沈み込んで押しており、そのストレスを解消するため、中央構造線が横ずれを繰り返してきたという。
 最も新しい大地震が、別府湾を震源とする1596年の慶長豊後地震。数日間のうちに中央構造線に沿って伊予(愛媛県)、さらに伏見(京都府)でも地震が起きたという記録が残る。ただ、四国に関してはいつ動いたか、確定的には分かっていないという。
 地震の繰り返しの歴史「地震履歴」を研究している高知大学理学部の松岡裕美准教授(地質学)は「400年前に(伊予が)動いたのなら連動したことになるだろうが、動いていなければ、エネルギーをため込んでいるかもしれない。3千年くらいの幅でみれば必ず動くと言えるが、今の科学では、いつ、どのくらいの規模で動くかは分からない」と話す。

「経験則を外れる」
 熊本・大分地震では、まず4月14日夜に熊本を震源とするマグニチュード(M)6・5、最大震度7の地震が発生。同16日未明にM7・3、最大震度7の地震が発生、阿蘇や大分でも別々の地震が起こり、気象庁は「14日が前震で、16日が本震」「経験則から外れている」と説明した。
 国内の学者からは「内陸の断層による今回の地震と発生の仕組みは違うものの、東日本大震災の時も2日前に大きな地震があった。今回、気象庁は14日の地震後に『余震』の見通しを発表したが、16日に本震が起き、自宅に戻っていて犠牲になった人もいた。次に何が起きるか分からないのに、東北の反省が生かされなかった」との指摘もある。
 岩手・宮城内陸地震(2008年)などは、活断層が知られていない場所でM7を超える地震が起きた。
 岡村特任教授は話す。
 「日本中、どこでも地震が起きる可能性がある。建物の耐震化や家具の固定など、日頃から被害を軽減する減災が大事。揺れてからでは間に合わない」
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