[1999_09_01_01]原発の耐震基準に不備 地質の違いで発生の異常震域考慮せず 安全性に問題と指摘も 生越・和光大元教授(環境新聞1999年9月1日)
 
 原子力発電所の耐震基準として用いられる計算式に地盤の性質が異なると地震による揺れの状態も異なるという「地質」の概念が含まれてないため、安全性の確立に不備があることが関係者の間で問題視されている。東海地震などが数年内に迫っているという地震学者の説もあり、早急な対応策が求められている。また新たに建設される原発では耐震設計を見直す必要がありそうだ。
 原発を建設する際、原子力安全委員会の安全審査指針に基づき、耐震設計を行うが、現在の安全指針は距離に関係なく「地質」により震度が変化するという概念が含まれていないことが問題になっている。
 耐震設計の元になる計算式は原子力発電所耐震設計技術指針(電気協会)に明記される「村松方式」と呼ばれる計算式で敷地の被害を想定するが、その際、敷地の震度の高低を大きく左右する要素になる「震源の深さ」が考慮されていない。また、地下300メートルの硬石からなる岩盤に設置した地震計の観測結果に基づき考案された「金井方式」で耐震の最強地震を考えるが、実際の原発の基礎岩盤は軟石で最大深度40メートル程度。同方式はこの「地質の違い」か考慮されていないほか、震源距離が短いと震度が異常に高くなる「異常震域」も考慮されていない。
 一方、国内の原発のほとんどがこれまで地震の起きていない地域に建設されているが、同地域の大型地震の発生率は連常の地域より相当高いとされている。
 阪神大震災を初めとする大型地震でこれらの方式を用いた計算値が実測値とかけ離れていた例は多くあったが、政府は「震度七相当の地震にゆられても原発は大丈夫」と主張、方針を改めていない。だが、地震波が阪神大震災の16倍の濃尾地震、11倍の関東大震災、32倍の十勝沖地震などが過去に発生している。
 こうした事態に地質学者の生越忠・元和光大学教授は「震度七程度での地震断層が出現し、地盤が上下、水平に変位するため、揺れの強さが耐震設計基準以内に納まっても安全性の確保は不可能」としている。
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