[1998_04_25_01]国側 基準は最高水準で決定 市民側 行政は原発震災対策を 浜岡原発 耐震安全性を討論 県内からも多数参加 東京・参院会館 東海地震は多重震源 石橋教授 講演要旨 津波 地盤高6メートルでも不安(中日新聞1998年4月25日)
 「東海地震の際、中部電力浜岡原子力発電所の安全性は疑問」と問題提起している神戸大学都市安全研究センターの石橋克彦教授が24日、東京都千代田区永田町の参議院議員会館で講演し、東海地震のメカニズムに触れながら、あらためて浜岡原発に与える影響の大きさに懸念を示した。講演に引き続き、原子力安全委員会審査委員ら国側関係者が出席した討論会が開かれ、国側は、1978年に作った「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」について、「現状では見直すことは考えていない」と述べた。

 講演や討論会は、「原発震災を未然に防ぐために」と題し、新社会党書記長の山口哲夫参院議員(比例)の呼び掛けで開かれた。討論会は、市民らも参加して国側の原発についての方針や意見を聞くことが目的。国側から同委員会のほか、科学技術庁や通産省資源エネルギー庁の担当者らも出席。
 討論会では、石橋教授は「起こりうる危険性を全部提示したい」などと述べ、地震科学に基づいた「原発震災」の可能性を主張。これに対し、国側出席者は「安全審査の基準は、最高の科学技術の水準に照らして決めている」などと述べ、原発の耐震についての安全性を強調した。
 討論会には、県内の市民も大勢集まり、「静岡県は、原発震災を前提とした防災対策に全く取り組んでいない」などの行政批判が相次いだ。
 一方、この日、浜岡原発を考える静岡、ネットワーク(長野栄一代表)は、科学技術庁と資源エネルギー庁を訪れ、耐震指針以前につくられた浜岡原発1・2号機の耐震安全性に関するデータを公開するよう求めるなど、二十数項目の質問書を提出した。

東海地震は多重震源 石橋教授講演要旨 津波 地盤高6メートルでも不安

 これまでは溶断層が地震を起こすといわれてきましたが、その表現はきわめて不正確です。地震の源は地下の震源断層面という広大な面に沿うズレ破壊です。ズレ破壊が地表に顔を出すと地表地震断層ができるわけですが、それが数十万年間に累積すると活断層となるのです。
 地表に顔を出さなければ地表調査では活断層はみつけられません。大地震の震源断層面が深くて岩石のずれが地表に現れなければ、地下に大地震発生源があっても活断層はできないわけです。
 1927年、北丹後地震で地表地震断層ができました。地震後、活断層として認識されましたが、地震発生前は活断層とは認識できない状態でした。つまり、活断層がなければ地震は起こらないという認識は間違っているのです。
 次に震源域での岩石破壊についてですが、予測される東海地震などの大地震は多重震源が普通です。1993年の北海道南西沖地震を分析すると、大きく破壊された所が断層面上に飛び飛びにあるのですが、東海地震が起これば確実にこういう多重震源が起きると思われます。またプレート沈み込み境界の巨大地震では枝分かれ断層の活動も起きるはずです。したがって将来予想される東海地震では、プレート境界面で多重震源の破壊が起き、直下の浅発逆断層地層地震も加わることで短周期強震動が増大されると思われます。
 東海地震発生時の浜岡の地殻変動や津波ですが、東海地震で想定されていることが100%起これば浜岡周辺は確実に地盤が隆起し、地盤破壊が起きます。津波に関して中部電力は最大の水位上昇が起こっても浜岡原発の敷地の敷地の地盤高(6メートル)を超えることはないといっていますが、津波は海底変動の構造により変化します。断層がどのくらいの早さで動くかにも影響されます。地盤高6メートルで大丈夫とはいえません。
 フィリピン海プレートの現在の沈み込みが始まって数百万年と考えられています。伊豆半島が本州に付着して五十万年がたっていますが、その時間に比べて私たちが知っている歴史地震の時間はわずか数百年。高性能の観測網ができたのは東海地震説以後22年です。限られた知恵で、現在の知識でできる限り将来を予見する努力はできます。

 石橋克彦教授 東海地震説を最初に提唱したことで知られ、昨秋、科学専門誌に「来世紀半ばまでには確実に発生する巨大地震の震源域の中心に位置する浜岡原発は廃炉を目指すべき」などと主張し、論議を呼んだ。
KEY_WORD:TSUNAMI_:HAMAOKA_:KITATANGO_:HOKKAIDOUNANSEI_:TSUNAMI_: