[2012_09_03_01]南海トラフ巨大地震 被害 原発防潮堤越える津波 中部電浜岡 影響評価はこれから(福井新聞2012年9月3日)
 死者32万3千人、負傷者62万3千人。国難そのものといえる規模の「最悪の想定」に、列島各地で衝撃が走った。8月29日に発表された南海トラフ巨大地震の被害想定。「津波が来たらどうすれば」。沿岸部の住民に動揺が広がる。原発の津波対策にもあらためて疑問符が付き、行政の防災担当者の受け止めは深刻だ。大動脈の高速道路や新幹線も安全システムの強化が求められる。
 南海トラフの地震による津波は、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)を直撃する。同原発付近は最大19メートルの高さの津波が押し寄せると推計された。海底地形のデータを詳細に検討した紆果、3月に示された21メートルより低くなったが、同社が建設中の高さ18メートルの巨大防潮堤を越える。運転への影響の評価はこれからだ。
 中部電は、防潮堤が未完成で21メートルの津波に襲われても、高台に配置したポンプなどで原子炉や燃料プールを冷却、安全が確保できるとしている。
 ただ、評価は全号機停止の現状を前提としており、津波が防潮堤を越えた場合の影響や、運転中に安全を確保できるかは今後、詳しく検討する。
 四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)、中国電力が計画する上関原発の建設予定地付近(山口県上関町)では、いずれも最大3メートルと推計。
 四国電は、伊方の敷地高さが10メートルなので影響を受けないとし、1〜3号機の安全評価(ストレステスト)では、13・8〜14・2メートルの津波に襲われても、炉心が損傷せずに耐えられるとしている。
 東海第2は震災で約5メートルの津波が襲い、非常用発電機が一部使えなくなったが、残った発電機で冷温停止にこぎ着けた。
 東京電力福島第1原発事故を受け、政府の事故調査・検証委員会が7月にまとめた最終報告では「国の中央防災会議の方針は原発の防災対策にも密接に関連することから、原発を念頭に置いた検討を行うべきだ」と指摘、原発の災害リスクを注視するよう求めた。
 だが、今回の被害想定で、内閣府は「個別重要施設については、個別の設計基準に基づいた津波の推計が必要だ」として、原発の具体的な被害想定には踏み込まず、政府事故調の「警鐘」に応えていない。
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