[2013_08_23_01]「M9.6」削除要求 浜岡再稼働 左右する値 津波対策 中電の想定超える(中日新聞2013年8月23日)
 中部電力がパブリックコメントで内容の削除や緩和を求めた原子力規制委策定の審査ガイド。ここに載せた「参考値」マグニチュード(M)9・6は、内閣府の有識者会議が「巨大地震の中でも最大級」と位置づけたM9・1の妥当性を揺るがし、浜岡原発の再稼働を左右する可能性も指摘されている。
 「まず考えてもらうのが出発点。東京電力福島第一原発事故を踏まえ、どこまで大きいものが起きる可能性があるか、踏み込んだ検討が必要だ」
 二十一日、九州電力川内原発(鹿児島県)が新規制基準に適合しているかどうかを審査する規制委の会合。M9・6による津波の影響評価を「持ち合わせてない」と答えた九電側に、規制委側がくぎを刺した。
 九電側は「考えなければならない」と応じた。ただ、川内原発は海抜13メートルの敷地高に対し、南海トラフや南西諸島海溝の巨大地震でも水位上昇が最大一・九五メートルにとどまると九電側は試算するなど、津波の危険度は比較的低いとされる。
 太平洋に面する浜岡原発はM9・1の南海トラフ巨大地震で最大一九メートルの津波が想定される。中電は二〇一五年三月の完成をめざす海抜二二メートルの防潮堤など、千五百億円を投じ津波対策を進めている。だが、南西諸島海溝との連動によるM9・6の超巨大地震″まで想定対象になれば、積み上げてきた対策の前提が崩れかねない。
 地元住民らが浜岡原発の運転差し止めを求めた訴訟の控訴審で住民側は六月、M9・6を根拠に「少なくとも四二メートル以上の津波を想定すべきだ」と独自の試算を東京高裁に提出出。「防潮堤はまったく不十分。浜岡は想定津波に耐えられない」と攻勢に出ている。
 新規制基準への対応策を検討している中電側はM9・6の参考値に対し「複数の専門家の意見を参考に検討し、適切に対応していく」と明確な方針を示していない。七月の口頭弁論では滝沢泉裁判長が「どんな地震、津波を想定して対策するか、確定してほしい」と促す場面もあった。
    (赤川肇)
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