[2021_02_16_03]福島沖の地震/余震警戒さらに10年/東日本大震災の影響続く(東奥日報2021年2月16日)
 
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福島沖の地震/余震警戒さらに10年/東日本大震災の影響続く

 福島県沖で13日夜に起きたマグニチュード(M)7.3の地震は、日本列島が載る陸のプレート下に沈み込む太平洋プレート内で発生した。2011年の東日本大震災の余震とみられ、M9の超巨大地震が今も大きな影響を及ぼし続けていることを見せつけた。今回は10年前のような揺れや津波は生じなかったが、専門家は「少なくとも今の状態はあと10年は続くと考えている」と、引き続き警戒する必要があると呼び掛ける。

 ▽せめぎ合い

 「今回はぎりぎりだった。震源がもう少し浅く、地震の規模が大きければ大きな津波が起きただろう」。14日夜、臨時会合後の記者会見で地震調査委員会の平田直(ひらた・なおし)委員長(東京大名誉教授)は感想を漏らした。
 今回の地震では、宮城県石巻市で約20センチ水位が上昇するごく小規模な津波が生じた。被害を及ぼさない津波という意味で気象庁は「海面変動」と呼んでいる。約55キロと震源が深く、大津波を起こすほど海底が変形しなかったとみられる。
 平田氏は、震源付近の地震活動が活発であることを紹介した上で「今後の余震によっては、高い津波が発生する可能性がある」と言い添えた。
 東日本大震災は、二つのプレートがせめぎ合う日本海溝で起きた「プレート間地震」というタイプだ。沈み込むプレートの内で起きた今回の地震は「平たい板」を意味する英語を用いて「スラブ内地震」とも呼ばれる。
 地震予知連絡会長を務める山岡耕春(やまおか・こうしゅん)名古屋大教授(地震学)は二つのタイプは周辺の地震活動への影響が違うと指摘する。プレート間地震は、発生するとプレート同士のせめぎ合いに変化を及ぼす危険性がある。
 例えば、静岡−九州沖に伸びるプレート境界「南海トラフ」では、ある種のプレート間地震が超巨大地震の引き金となるとも考えられている。だが、沈み込む側だけで起きたスラブ内地震は「単発で起きることが多い」(山岡さん)という。

 ▽揺れ

 震源は東日本大震災よりも陸に近く、宮城や福島で最大震度6強を観測した。揺れの特性のため震度の割に建物への被害は少なかったと指摘するのは境有紀(さかい・ゆうき)京都大教授(地震防災工学)だ。
 境さんが防災科学技術研究所の観測データを調べたところ、人間が感じやすい1秒間に1〜10回振動する揺れが強く、このため震度も大きくなった。一方、建物の大きな損傷につながる1秒間に0.5〜1回振動する揺れは強くなかった。「建物被害に注目すれば震度5程度の地震だったと言える」としている。
 纐纈一起(こうけつ・かずき)東京大教授(応用地震学)は福島、宮城で比較的揺れが長く続いたと注目する。今回のように比較的震源が深い地震では珍しいといい「震源の断層が長時間ずれ続けた可能性がある」(纐纈さん)。長く揺れた結果、土砂崩れや新幹線の電柱の損傷につながった可能性があるとみる。

 ▽注意

 海外の例などから、超巨大地震の余震は何十年も続くとされる。津波工学が専門の今村文彦(いまむら・ふみひこ)東北大教授は「余震の収束には長い時間がかかる。まだまだ注意が必要」と警戒を緩めない。
 山岡さんは「日本海溝はもともと地震活動が盛んで、大震災以降はさらに活発な状態が続いていることに改めて注意してほしい」と訴えた。
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