[2016_08_02_01]【社説】 大飯原発地震動 専門家の意見を聞け(東京新聞2016年8月2日)
 
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【社説】 大飯原発地震動 専門家の意見を聞け

 ◆大飯原発地震動 専門家の意見を聞け
  福井県にある関西電力大飯原発の基準地震動が過小評価との指摘がある。原子力規制委員会の対応は迷走したあげく、見直す必要はないとなった。東日本大震災の教訓を生かした判断といえるのか。
◎ 基準地震動は、耐震設計の目安である。原発に影響を与える断層の面積から地震の規模を推定する。計算式は過去の地震データを使ってつくられる。いくつかの計算式が提案されている。
 大飯原発3、4号機はすでに、適合性審査で最大加速度856ガル(震災前は700ガル)とすることで審査を通っている。このときに使われたのが、入倉・三宅式と呼ばれる計算式だった。
◎ 過小評価ではと疑問を投げかけたのは、地震学者で前規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授だ。
 4月に起きた熊本地震について、入倉・三宅式で計算すると実際よりも小さくなると指摘。その理由として、熊本地震は断層が垂直か垂直に近いことを挙げている。こうした断層は日本海西部に多く、大飯原発も含まれるという。
 規制委はこれまで活断層や基準地震動について厳格に取り組んできたようにみえる。
◎ 活断層調査では、複数の専門家で構成する有識者会議をつくり、現地調査を行った。日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)や北陸電力の志賀原発1号機(石川県)などは「活断層」との調査結果で廃炉の可能性が高くなっている。耐震設計の目安となる基準地震動も大幅に引き上げた。
 今回の問題でも、規制委は指摘を受けて事務局に再計算を命じた。結果は「見直しは不要」だった。だが、島崎氏への説明の中で計算に不備があることが分かり、再計算結果は取り下げることを決めた。それなのに「856ガルは相当大きな設定」だから「見直しは不要」の結論は変えないという。
◎ 熊本地震は、政府の地震調査委員会が「確率がやや高い」とした断層で起きたが、断層は予想外の阿蘇山の外輪山の内側まで延びた。断層が地表で見えていて、調査をしていても、予想通りにはいかない。
◎ 規制委には今、地震学の専門家はいない。活断層調査のように、この問題は地震学会に協力を求めるべきだ。計算式が複数あるのだから、合理的な式の中で最大値を選ぶのが安全サイドに立つ考え方である。地震の規模が大きくなったならば津波も再評価すべきだろう。拙速な結論が原発不信を招くようでは、規制委の存在意義が問われる。

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