[2016_02_24_05]NHK「かぶん」ブログ_高浜原発1・2号機 新基準審査に事実上合格(NHK2016年2月24日)
 
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NHK「かぶん」ブログ_高浜原発1・2号機 新基準審査に事実上合格

運転開始から40年がたつ福井県の高浜原子力発電所1号機と2号機について、原子力規制委員会は新しい規制基準の審査に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。原則40年に制限された運転期間の延長を目指す原発で審査書の案が取りまとめられるのは初めてで、今後は、残る延長に必要な審査がことし7月の期限までに終わるかが焦点になります。
運転開始から40年がたつ高浜原発1号機と2号機について、関西電力は原子力規制委員会に去年、再稼働の前提となる新しい規制基準の審査とともに、運転期間をさらに20年延長する認可を申請しました。
このうち24日は規制委員会の定例会で、新基準の審査に関西電力が示した安全対策が事実上合格したことを示す審査書の案が示されました。
この中で、長さ1300キロに及ぶ電気ケーブルを燃えにくい材質のものに取り替えたり防火シートで覆ったりする対策や、作業員の被ばくを防ぐため格納容器の頂部をコンクリートで覆う対策などが新基準に適合しているとされ、審査書の案は全会一致で取りまとめられました。
原発事故のあと導入された運転期間を原則40年に制限する制度のもと、運転の延長を目指す原発の審査書案が取りまとめられるのは初めてです。
規制委員会は25日から1か月、一般からの意見募集を行い、その後、正式に審査書を決定することにしています。
運転期間を延長するには、このほか施設の劣化状況の審査や、設備の耐震性など詳しい設計の審査が残されていて、ことし7月7日の期限までにこれらの審査に合格できるかが今後の焦点になります。
経済産業省は去年、複数の原発が運転を延長することを見込んで、2030年度の原子力発電の比率を20%から22%とするいわゆるエネルギーミックスを決定しており、高浜原発1号機と2号機の合否はその達成に関わるという点でも注目されます。
ただ、合格した場合でも実際の再稼働には安全対策の追加工事などを終える必要があり、関西電力は今のところ、3年以上かかるとしています。

再稼働反対派は抗議の訴え
高浜原発1号機と2号機の審査書の案が取りまとめられたことを受けて、原子力規制委員会が入る東京・港区のビルの前では、原発の再稼働に反対する人たちが「高浜原発再稼働反対」と書かれた紙を掲げながら、「すべての原発を廃炉にしろ」などと訴えていました。
兵庫県から来た73歳の女性は「規制委員会の定例会合を傍聴したが、関西電力の言うことを追認しているだけだった。老朽化した原発の再稼働は許されず、今後も抗議を続けていきたい」と話していました。東京の68歳の男性は「40年超えの運転は例外であるのに、審査書の案をまとめた規制委員会の判断を絶対に許すことはできない。福島第一原発の事故の悲惨さをもう1度思い出し、高浜原発は廃炉にすべきだ」と話していました。

運転期間延長には3つの許認可が必要
高浜原子力発電所の1号機と2号機が40年を超えて運転期間を延長するためには、ことし7月7日までに原子力規制委員会から3つの許認可を得る必要があり、タイムリミットが迫っています。
1つが、24日に審査書案が取りまとめられた「新しい規制基準への適合」で、今後、一般からの意見募集をへて正式に決定されると、「審査に合格した」と認められます。これによって1つの山を越えることになりますが、ほかに「工事計画認可」と呼ばれる設備の詳しい設計などの審査と、古い原発に求められる「運転期間延長認可」という設備の劣化状況などを詳しく調べる審査の2つをクリアしなければなりません。
このうち、今後、大きな焦点となりそうなのが、「工事計画認可」で行う設備の耐震性の評価です。関西電力は、設備に伝わる揺れの計算が詳しくできるとして、従来とは異なる新しい手法を用いて耐震評価を行い、想定を厳しく見直した最大規模の地震の揺れでも耐震性に問題はないとしました。
これに対し、規制委員会は、従来の方法で計算すると一部の設備の設計が「揺れに耐えられない」という結果になることもあり、「新しい手法の適用は妥当か」などと指摘しています。
このため関西電力は、来月、実際に設備を揺らす実験を行い、耐震性の評価の妥当性を明らかにしたいとしていますが、結果によっては、評価手法や耐震対策の見直しが必要になる可能性もあります。

40年超運転への対策と課題
高浜原発1号機と2号機を巡っては電気ケーブルの防火対策など古い原発に特有の安全対策の工事や複数の原発を同時に稼働させるのに必要な対応があります。
運転開始が昭和54年より古い原発は、内部の電気ケーブルが燃えにくい材質になっていないため、新しい規制基準で防火対策をとるよう求められています。昭和49年と50年に運転を始めた高浜原発1号機と2号機でも長さおよそ1300キロに及ぶ電気ケーブルの対策が大きな課題になりました。関西電力は、長時間、高圧の電流が流れるケーブルなどおよそ6割は新しいものに取り替え、残りは一定の基準を満たした防火シートで覆う対策を示し了承されました。
また、すでに審査に合格している3号機と4号機と異なり、1号機と2号機は格納容器の頂部がコンクリートで覆われていません。このため関西電力は事故が起きた際の周辺で働く作業員の被ばく対策として、格納容器の頂部を厚さ30センチのコンクリートで覆う対策を示し、了承されました。
さらに、3号機と4号機は緊急時の対応拠点となる「緊急時対策所」として1号機と2号機側の建物を使う計画を示し、審査に合格しました。このため、関西電力は1号機と2号機を再稼働させるまでに別の場所に新しい緊急時対策所を建設する計画です。これらの安全対策の追加工事には2160億円かかるということです。今のところ関西電力は、3年後の平成31年10月に完了するという計画を示していて再稼働はそれ以降になるとしています。
また、4基が稼働することになれば、福島第一原発のように複数の原子炉が同時に事故を起こした際の対応も求められます。関西電力は、緊急時に必要となる担当者や資機材をそれぞれの号機ごとに確保したうえで、車両や資機材の移動ルートや原子炉を冷やすための海水を取り込む場所などを複数準備するとしています。1号機から4号機で同時に事故が起きたことを想定した訓練は新基準が施行されて以降1度実施されましたが、危機的な状況で速やかに的確な指示を出したり、情報を共有したりする対応力を十分に高めていくことができるかが、課題になります。

全国の原発の審査状況
再稼働の前提となる審査は、これまで建設中の青森県にある大間原発を含めて全国の原発の半数以上にあたる16原発26基で申請されています。
審査はいち早く申請された「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプの原発が先行しています。申請のあったPWRの8原発16基のうち、これまでに鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、それに愛媛県にある伊方原発3号機の3原発5基が審査に合格し、川内原発の2基と高浜原発3号機の3基がすでに再稼働しました。高浜原発4号機は今月20日施設の内部で放射性物質を含む水が漏れるトラブルが起きましたが、関西電力は再発防止の対策を終え26日にも再稼働する計画を示しています。伊方原発は、去年7月に審査に合格し、耐震性など設備の詳しい設計の確認が行われていますが、その後の検査も必要になるため、再稼働はことしの夏以降になる見通しです。
運転開始から39年がたち、運転期間の延長を目指す福井県にある美浜原発3号機は、ことし11月末の期限までに審査に合格する必要がありますが、新しい耐震評価の方法などを巡る議論が続いていて期限までに審査が終わるか見通せない状況です。このほかのPWRでは、北海道にある泊原発3号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、福井県にある大飯原発3号機と4号機の審査がおおむね終盤に入っていますが、いずれの原発も審査での指摘を反映して修正した書類を提出しておらず、合格の具体的な時期は見通せない状況です。福井県にある敦賀原発2号機は、焦点となっている真下を走る断層の活動性から議論を始めることにしていて、審査は始まったばかりです。
一方、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR」=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発は、これまでに8原発10基で審査が申請されています。新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発6号機と7号機を巡っては重要項目の地震の揺れや、敷地内の断層に活動性がないことが了承され、審査は終盤に入っていて、沸騰水型の原発のなかで最も早く合格する可能性があります。そのほかは、まだ中盤から序盤の段階です。

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