[2021_10_24_03]防潮堤273億円と試算 東海再処理 建設せず、建物を防水(東奥日報2021年10月24日)
 日本原子力研究開発機構の東海再処理施設(茨城県、廃止措置中)に防潮堤を建設する場合の総工事費は約273億円と同機構が試算していたことが23日、分かった。同施設では極めて強い放射線を出す廃液を保管中だが、同機構は津波対策として防潮堤は建設しないと決めている。「試算額の高低で決めたわけではない。防潮堤に時間をかけて敷地全体を守るより建物に水が入らない対策を優先させる」とする。
 廃液は固めて安定化させる計画だが、トラブルで中断を繰り返し、目標の2028年度末に終了するかどうか分からない。専門家は、想定される大津波の頻度から「防潮提を造らないのは理解できる。だが、固化作業の完了時期を延ばしてはならない」と指摘する。
 原子力施設は通常、津波が来た場合でも敷地に水が入るのを防ぐ対策を取っている。東海再処理施設は最大で地上約8メートルまで水をかぶると想定しており、異例の対応。原子力規制委員会も容認している。
 機構によると、防潮提の設計は委託した会社が15年2月にまとめた。マグニチュード(M)8・7の地震に伴う津波が敷地の東と北の2方向から押し寄せると想定。防潮堤の高さは東側が最大17メートル、北側は15メートル。総延長1・8キロで建設期間は約4年、総工事費は約273億円と試算した。
 機構は「建築資材や人件費の相場が上がり、この金額よりも多くかかる。施設で想定される事故の進展は原発と比べて緩やかで、十分対処可能だ」と説明。廃液を保管する建物に水が入るのを防ぐ「浸水防止扉」を設け、漂流物が健物に衝突するのを防ぐ柵を設置する。対策は23年度中に完了するとしている。同施設は、使用済み核燃料の再処理に伴って出た高レベル放射性廃液約360立方メートル(3月時点)を保管している。廃液は熱を出しており、冷却できなくなると放射性物質が外部に漏れる恐れがある。
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