[2021_10_13_06]「エネルギー基本計画」に対するパブリックコメント 原発は「縮小」「拡大」どっちなの 原発縮小で、核燃料サイクル政策を進めるのは何故 (その1) (4回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年10月13日)
 
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「エネルギー基本計画」に対するパブリックコメント 原発は「縮小」「拡大」どっちなの 原発縮小で、核燃料サイクル政策を進めるのは何故 (その1) (4回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 項目紹介
1.エネルギー基本計画とは …(その1)に掲載
2.エネルギー基本計画の基本は何処に
3.東電福島第一原発事故の反省はあるのか …(その2)に掲載
4.日本の問題点の指摘は、ずれている …(その3)に掲載
5.原発を止めるのか進めるのかが特にあいまい
6.核燃料サイクル政策を進める根拠はさらに薄弱に …(その4)に掲載
1.エネルギー基本計画とは

◎ 3年ごと(法令上*は3年を目指すとしているが間があくこともある。第4次(2014年4月)と第5次(2018年7月)のように。)に国のエネルギー政策についての方向性を定めるための「エネルギー基本計画」(以下「エネ基」)の案が7月に経済産業省資源エネルギー庁により公表され、パブリックコメントにかけられた。
 (*)エネルギー政策基本法第12条第5項「少なくとも3年ごとに、エネルギー基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。」

◎ 国はこれを「エネルギー政策」と規定しているようだが、過去の「エネ基」はいずれも絵に描いた餅状態。従って、方向性を示す程度のことにしかなっていない。
 だが、原発の再稼働や核燃料サイクル政策を進める根拠となっているなど大きな問題があるので、実現可能性はないなどと無視して良いわけではない。
 やはりダメなものはダメと明確に指摘し、実効性のある、真にエネルギーシステムの改革に繋がるような計画に変えていくべきものだろう。

◎ 「第六次エネ基」案の、最も大きな問題点は、地球温暖化対策として原発の活用を進め2030年度の電源構成における原発の割合を20〜22%程度見込んでいることだ。
 なお他の電源を含む構成比は、火力発電41%(LNG20%、石炭19%、石油など2%)、再生可能エネルギー36〜38%、原発20〜22%、水素やアンモニア発電1%としている。
 この数字を達成しようとすれば、原発については「27基が再稼働し、これまでの実績を大きく超える80%という高い設備利用率(原発事故前10年の平均は67.8%)の実現を想定することになる。」(自然エネルギー財団)。
 原発に割り当てられた発電容量は約3350万kWに相当する。
 これは、最も多かった時期の55基、4946.7万kW(2007年度)の設備容量に比べて7割近い水準であり、どこが「可能な限り低減」かと思う。
 こうしたところが、「エネ基」の最大の相互矛盾であり、脱原発派と原発推進派の双方にすり寄った玉虫色の方針の所以である。

◎ 一方で、核燃料サイクル政策を維持するとしており、これもまた原発低減とは真逆の方向性を示しており、「原発依存低減」という名の核推進詐欺である。
 これを実現するのにもう一つ重大な問題は、40年超の老朽原発の稼働も含まれていることだ。
 そもそも2030年代にはほとんどの原発が40年を超えており、リプレースを除外している以上、60年運転延長を前提としなければ成り立たない。
 安全優先と言いながら、危険な老朽原発の再稼働を前提としなければ成り立たない計画は、そもそも安全運転詐偽とも言える。

◎ 核燃料サイクルを推進することは、大規模な放射性物質の放出、拡散を前提としており、事故がなくても汚染が広がる。
 さらに日本海溝から千島列島沿いは、何時巨大地震と津波が発生してもおかしくないと、地震調査研究推進本部が「お墨付き」を与えている地域でもある。
 その目の前に六ヶ所再処理工場を始めとした核燃料サイクル施設群、さらに南に目を転ずれば女川、事故で破壊された福島第一、第二、老朽炉東海第二や東海再処理工場、高速炉「常陽」のほか、核燃料サイクル施設がひしめく東海村がある。何を考えているのかと思う。
 既にとっくの昔に破綻している核燃料サイクル政策の延命をはかろうとしている今回のエネルギー基本計画の問題点を明らかにし、パブリックコメントを送ったので、その内容を紹介する。
                       (その2)に続く
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