[2020_02_23_02]原燃・再処理工場ガラス固化技術 操業見据え習熟訓練 運転長期停止で経験者減(東奥日報2020年2月23日)
 
 日本原燃が2021年度上期の完工を目指す六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)の安全審査会合が21日に終了し、原燃は審査対応と並行して操業へ向け社員の習熟訓練を急ぐ。06年に始まったアクティブ試験(最終試運転)が終盤で中断、工場が長期間停止し「運転経験のない社員が増えている」(同社)ため。高しベル放射性廃液を処理する「ガラス固化試験」は不具合が相次いだ経緯もあり、原燃は社員を茨城県東海村に派遣するなどし、技術の継承に取り組んでいる。
 「ガラス固化に関わる社員のうち3割ほどが未経験者。漁業前の使用前検査も控えており、運転員には現場の緊張感も体感してほしい」。原燃・再処理工場ガラス固化課の山崎淳司課長は訓練の意義を強調する。
 使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出す再処理の過程では、放射能レベルの高い廃液が残る。この廃液を、溶かしたガラスと混ぜてステンレス製の容器に入れ、冷やし固めることでガラス固化体ができる。再処理工場では2系統の溶融炉がコンクリートで密開された「セル」と呼ばれる部屋の中に設置されているが、セル内部は放射線量が高く、操作は遠隔で行わなければならない。
 東海村の日本原子力研究開発機構・核燃料サイクル工学研究所には(再処理工場のガラス溶融炉と同じ規模の試験炉(KMOC、ケーモック)がある。KMOCは放射性物質を扱わないため、炉の周辺で内部を確認したり、流れ落ちるガラスをじかに採取して分析したりすることが可能だ。
 原燃は2月まで3カ月にわたり、中堅社員と運転経験のない若手社員計18人を同研究所に派遭。高レベル廃液を模した模擬廃液を使い、運転開始から一連の操作について、温度調整や膨大なデータの評価方法などを学んでいる。
 「工場ではカメラで画像を確認しながら遠隔操作するが、距雛感覚をつかむのが難しい。訓練でいろいろな部分を実際に見て、現場でイメージできるよう習熟してほしい」と山崎課長。「ガラス同化の経験があるのは国内では原燃と機構のみ。しっかり技術力を高めて伝承したい」と述べた。
 原燃は07年11月にガラス固化試験に着手したが、相次ぐトラブルや不具合に見舞われた。
 廃液に含まれる「白金族元素」が底に堆積してガラスが流れ出にくくなる不具合では、KMOCでおよそ2年にわたり、設備や運転方法を検証した。その結果、ガラス温度をコントロールするため、炉内に温度計を5カ所追加する、模擬廃液とガラスが溶けかけてできる落としぶたのような「仮焼層」を制御して温度を維持するーなどの改善策を得た。定期的に炉内を浄化する「洗浄運転」で白金族元素の濃度を薄めるよう運転方法も改善した。ガラス固化試験は13年5月にすべて終了、国の使用前検査が残された。
 アクティブ試験は08年10月までにガラス固化を除く部分の試験を終えている。完工前にはアクティブ試験を再開し、ガラス固化設備の検査を受ける必要がある。ただ、福島第一原発事故を契機に原子力規制の方法が見直され、現段階では、使用前検査がどの範囲で、どのように行われるか決まっていないという。
 ガラス固化以外の主要工程については、今年4月から仏・オラノ社のラ・アーグ再処理工場に約50人を派遣して運転訓練を行う。
     (加藤景子)
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