[2023_12_19_03]東京エリアの需給逼迫は今後、ない 柏崎刈羽原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する 必要は何もない 政府は両原発の再稼働をしたいがゆえに意図して「東京エリア」の「電力供給予備率」を、安全予備率ぎりぎりの3%にした 荒木福則(神奈川県横浜市在住)(たんぽぽ2023年12月19日)
 
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東京エリアの需給逼迫は今後、ない 柏崎刈羽原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する 必要は何もない 政府は両原発の再稼働をしたいがゆえに意図して「東京エリア」の「電力供給予備率」を、安全予備率ぎりぎりの3%にした 荒木福則(神奈川県横浜市在住)

◎ 10月2日の朝日新聞の読者欄で、「これまで電力逼迫が原子力発電が必要な理由に使われて来た。しかし、今夏がこんな猛暑でも大丈夫なら、原子力の必要性はあるのだろうか疑問だ。本当のことを知りたい。」という神奈川県70代男性の投稿を読んだ。

◎ 政府の行う「電力需給見通し」において、10年に1回程度の厳気象における最大電力需要の想定値を「厳気象H1需要」という。これで供給力を除し「想定の電力供給予備率」(100%を超過した部分、以下「予備率」という)を算定する。
 この予備率が、需要の短期的変動(1時間以内)に備えて安全予備率3%を下回らないよう、管理している。「厳気象H1需要」は夏季は「猛暑H1需要」、冬季は「厳寒H1需要」という。

◎ 今夏の予備率は、3月に、他の9電力エリアが十分、余裕がある中で、「東京エリアのみが3.0%で安全予備率ぎりぎりなので予断を許さない。」として予備率4%を目指し(東京エリアの予備率1%は60万kw)、追加供給力を公募した。
 5月には、火力発電1機の応募と一部電源の補修期間の延長との相殺で3.1%だった。今夏の「猛暑H1需要」は前年の「猛暑H1需要」に比べ179万kwhもの過去、最大の上方修正が行なわれていた。

 「東京エリア」の夏季の最大需要の過去7年の実績は、2017年 5,380万kwh、2018年 5, 653万kwh、2019年 5,543万kwh、2020年 5,604万kwh、2021年 5,665万kwh、 2022年 5,930万kwh、2023年 5,525万>kwh。
 同じく「猛暑H1需要」は、2017年 5,550万kwh、 2018年 5,637万kwh、2019年 5,671万kwh、2020年 5,653万kwh、2021年 5,660万kwh 、 2022年 5,752万kwh、2023年 5,931万kwh。

◎ 前年(2022年)の夏季の最大需要実績は5,930万kwhで、最高気温は猛暑H1想定気温を下回ったにもかかわらず「猛暑H1需要」を178万kwh、前年(2021年)の実績を265万kwhと大きく上回った。
 この高い前年実績を1万kwhだけ乗せ、増加要因の説明も曖昧なまま、今夏の「猛暑H1需要」に用いた。
 そして、結果は、史上最も猛暑にかかわらず、最大需要は5,525万kwhで、想定の「猛暑H1需要」の5,931万kwhを406万kwh大きく下回った。
 2018年から2021年の4年間の5,600万kwh前後の水準に戻った。節電要請は出ていた。電力の余っている他の電力エリアからの電力融通は実施しなかった。

◎ 次に供給の方だが、3月の公募に応募し落札した火力発電1機は、広野石油火力2号機60万kwだった。政府が、無くなったものとして隠して来た東京エリアの石油火力の1機だ。
 東京電力と中部電力の火力発電部門を統合したJERAの石油火力の全て15機、1,005万kwは、2020年4月までに長期計画停止に入り、その後、必要に応じ再稼働できるように維持管理は続けていたが、政府は全て無くなったものとして、ここ数年の需給逼迫に際しても一機たりとも再稼働させなかった。
 その後、大井石油火力3機105万kwを2022年3月に、鹿島石油火力6機440万kwを2023年3月に廃止し、広野石油火力4機320万kwと、中部電力管内の渥美石油火力2機、140万kwだけになっていた。カーボンニュートラルや、石油燃料の高価格があっても、需給上の必要を差し置いて石油火力を排斥して良いわけがない。

◎ 広野石油火力2号機を募集した方法は、東電パワーグリッドが実施した「KW公募」だった。「KW公募」とは翌日、需給逼迫が見込まれる場合のみ出力供出に備えておくというものだ。
 この公募において非落札になった電源もあった。
 隠していた広野石油火力2号機を突然、使ったのは、安全予備率ぎりぎりの3%を公募後も変えないために、コントロールし易いので、背に腹は代えられなかったのだろう。

◎ そして、10月に、広野石油火力の残りの1号機(60万kw)、3号機(100万kw)、4号機(100万kw) を廃止した。
 この直前に、JERAの石油火力は全てなくなったと昨年6月に報道させた朝日新聞に、「今夏は石油火力でカバーしたが、今後、高経年の石油火力は問題はある。」と報道させていた。
 廃止した広野石油火力の3号機、4号機の経年数は、稼働した2号機(43年)より若い、それぞれ、34年、28年だ。

◎ GX推進法を強引に通し、女川原発2号機とともにBWR原発再稼働の最初の関門である、東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機と東海第二原発の再稼働を何としてでもしたい政府は、東京エリアの今夏の予備率を、意図して安全予備率ぎりぎりの3%にした。

 予備率算定の分母は高い前年実績を当て込み、分子の供給力は隠していた広野石油火力2号機を帳尻合わせに公募した。
 そして、石油火力が供給力として公然となったからには、今後、両原発の再稼働の邪魔になる広野石油火力1号機と3号機、4号機、計260万kw、予備率にして4.3%を容量市場の道をも閉ざし廃止した。

◎ 「厳気象H1需要」や前年実績から実績が大きく下げたのは前年の冬季(2023年1月)の実績5,179万kwhからだ。電気料金の値上げもあって、省エネと節電が構造的なものとして定着しつつある。
 10月に発表された東京エリアの「今冬の需給見通し」は、「厳寒H1需要」は5,473万kwhで、前年(2023年1月)の「厳寒H1需要」を30万kwh、上方修正し、前年実績(2023年1月)を何と294万kwhも上回る。
 広野石油火力2号機は稼働しない。予備率は4%以上となり、節電要請は出さないということだ。
 今後、電力需給逼迫は無い。

◎ 今後、電力需給逼迫は無いことを更に裏付けるために、太陽光発電が今夏の「東京エリア」の供給に果たした役割を述べる。
 予備率に算入する太陽光発電の想定の発電量(以下、「想定供給量」という)は電力広域的運営推進機関が確率論的に計算した「火力等の安定電源代替価値」から、エリア別、月別に毎時一定の係数を決め、設備能力に乗じて算定している。
 東京エリアの係数は年間平均が10%で、7月は23%だ。7月の「想定供給量」は414万kwh(1,800万kwh×0.23)だった。

◎ 最大電力需要の時、7月18日14時は800万kwh発電した。同日の太陽光発電ピーク時(11時)の発電量は1,500万kwh(設備容量1,800万kwの約8割)だった。
 「想定供給量」を、最大需要時に386万kwh、太陽光発電ピーク時に1,086万kwh、上回った。
 太陽光発電の自家消費がピーク時に200万kwh有り、これが、供給量にも需要量にもカウントされず、節電になっている。
 太陽光ピーク時の発電割合は、自家消費の節電分を含めて31%((1500+200)÷(5,525+200))だった。

◎ 太陽光発電の「想定供給量」を超える発電量は、揚水発電の汲み上げ、火力発電の出力低下で需給対応した。
 公募に落札した広野石油火力2号機は、その発電能力60万kw相当の、太陽光発電の「想定供給量」を超える発電量を、燃料ミニマムで殆ど待機するだけで供給力として生かした。
 東京エリアの企業が持つ2,000万kwの自家発電を太陽光発電の調整に用いる政府からの要請は無かった。

◎ 414万kwhの「想定供給量」が天候が悪く、減少したり無くなった時の逼迫の恐れに関しては、夏は、太陽光発電の出力が、曇天や雨天で伸びない場合は、気温もそれほど上がらず電力需要も伸びない。
 つまり、太陽光発電の出力と電力需要の間には強い「正の相関」があり、夏季は「想定供給量」が減少しても逼迫の心配はない。
 冬季においては、太陽光発電の出力と電力需要の間には負の相関がある。

 しかし、冬は夏の6割ぐらいしか発電しないことと、最大電力需要の時は曇天や雨天であることを織り込み、冬の「想定供給量」の係数は数%しかなく、想定供給量が減少して逼迫する心配は無い。
 「今冬の需給見通し」における「想定供給量」は、僅かに1月は59万kwh(1,800万kwの 3.3%)、2月は9万kwh(1,800万kwの 0.5%)だ。

◎ 原発が夜も無駄に発電するのに対し、太陽光発電は電気の必要な時に発電し、需給への貢献は大きい。
 太陽光発電をフルに生かし抑制を減らすことが重要になる。
 蓄電池の普及やデマンドレスポンスの他に、電気自動車には太陽光電気を電力系統を介さず直接、給電することが肝要になる。
 電気は十分足りている。原子力の必要性はない。他の9電力エリアだけでなく、東京エリアも需給逼迫は今後、ない。
 柏崎刈羽原発6、7号機と東海第二原発を再稼働する必要は何もない。
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