[2022_12_21_02]大阪地裁の美浜原発3号機差止め仮処分却下に関するコメント これは裁判官の不勉強あるいは意図的な政治判断である 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2022年12月21日)
 
参照元
大阪地裁の美浜原発3号機差止め仮処分却下に関するコメント これは裁判官の不勉強あるいは意図的な政治判断である 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 報道のとおり、美浜原発3号機の運転差止めを求める仮処分申請に対して、大阪地裁は2022年12月20日に、すべての論点について却下する判断を示した。
 論点としては、1.司法審査のあり方、2.老朽化、3.地震、4.避難である。
 このうち老朽化と地震についてはいずれ別の報告があると思うので、ここでは避難について指摘したい。

◎ 裁判所の判断要旨では、避難の問題に関して深層防護の第1〜第4層と第5層の関係について「人格権侵害の具体的危険が存在するか否かにおいて、第1から第4までの各防護レベルの存在を捨象して無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当ではなく、本件では債権者らが避難を要するような事態が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえない」としている。

◎ しかし規制委員会の更田前委員長は、国会答弁で「深層防護でいえば第一層から第四層、要するに、事故を防ぐ、それから万一事故が起きた場合でもその影響を緩和するという、いわゆるプラント側のものについて審査を行っております。
 しかしながら、どれだけ対策を尽くしたとしても事故は起きるものとして考えるというのが、防災に対する備えとしての基本であります」と述べた。
 これに関して仙台弁護士会から「照会」という手続で、個人の発言ではなく委員会としての見解であるという確認をしている。つまり債権者側が立証する義務はないのである。

◎ つまり「第1から第4までの各防護レベルの存在を捨象して無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当ではなく」という裁判所の判断は、とかく事業者寄りと批判される規制委員会すら無視して裁判所が勝手に判断をしたものであり、過去の行政言いなりの判断のコピペに過ぎず、避難計画の不備を理由として東海第二の差止めを認めた水戸判決も全く無視している。

◎ これは裁判官の不勉強あるいは意図的な政治判断である。
 ただし「避難計画が不備である」ことについては否定できなかったようでもあり、債権者側が具体的危険について立証する必要があるという手続き論で逃げているとも言える。
 これに関しては、他地域の原告(債権者)側も裁判官が避難の問題を無視できないような主張を構成するように、今後注意してゆく必要がある。

裁判所の判断要旨は下記「裁判の会」ホームページから見られます。
http://adieunpp.com/takahama/mihama3documents/221220ketteiyousi.pdf

※ニュースは、昨日発信の【TMM:No4658】を参照して下さい。
 ★3.新聞・TVより4つ
 ◆ 福井 美浜原発3号機 運転停止認めない決定 大阪地裁
   (2022年12月20日14時07分「NHK」NEWSWEBより抜粋)
KEY_WORD:MIHAMA_:TOUKAI_GEN2_: