[2017_11_24_03]<東海第2>再稼働の時期、不透明 原電が延長申請(毎日新聞2017年11月24日)
 
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<東海第2>再稼働の時期、不透明 原電が延長申請

 ◇安全対策費メド立たず

 日本原子力発電(原電)が東海第2原発(茨城県東海村)の運転期間延長を原子力規制委員会に申請したのは、再稼働へ突き進むためだ。だがその前提となる巨額の安全対策費をどう確保するか、決まっていない。周辺自治体の理解を得られるのかも分からず、仮に延長審査に合格したとしても、再稼働できるかは見通せない状況だ。
 規制委は東海第2の再稼働審査で、防潮堤の設置など安全対策の工事費用が約1800億円かかると見込んでいる。これとは別に1000億円規模のテロ対策費も必要になる。
 全ての原発が止まっている原電は、売電契約を結んでいる電力5社の基本料金収入が生命線で、財務余力はない。ただ、再稼働の可能性がある東海第2が廃炉になれば、いずれ収入が絶たれ、経営が危うくなる。最悪の事態を避けるためには、電力会社に債務保証をしてもらい、安全対策費を銀行などから借り入れる必要がある。
 しかし、売電先の中心となる東京電力ホールディングス(HD)は、福島第1原発事故の廃炉や賠償などに約16兆円を必要としている。巨額の負担を背負う東電が他社の債務保証を行うことは批判を浴びる可能性もある。東電社内からも「再稼働時期が遅れれば、売電契約の採算が合わない。債務保証のリスクも高すぎる」との声が上がる。
 原発再稼働に向けた地元理解も先行き不透明だ。原電は同原発から半径30キロ圏内の6市村でつくる「原子力所在地域首長懇談会」と原子力安全協定の見直しについて議論を行っている。原電は22日、東海村以外の5市にも再稼働の「実質的な了解権」を認めるとする新たな協定を締結する方針を示した。これまで再稼働した原発は、立地県と立地市町から地元同意を得ていたが、協定の内容次第では幅広い自治体から同意を求められる可能性もある。
 周辺30キロ圏には全国の原発で最多となる約100万人が住んでおり、周辺自治体に義務づけられている避難計画の策定も難航している。【片平知宏】

 ◇日本原子力発電(原電)

 1957年に電力大手9社と電源開発の共同出資で設立された原子力発電専業の会社。66年に国内初の商業用原発である東海原発(茨城県東海村)の営業運転を開始した。保有する4基のうち、東海と敦賀1号機(福井県敦賀市)は既に運転を終え、廃炉作業中。残る東海第2と敦賀2号機は停止しており、再稼働審査を受けている。2011年度までは電力大手5社(東京、関西、中部、北陸、東北)に電力を販売していたが、東電福島第1原発事故後は全原発が停止し、12年度以降の発電量はゼロ。原発維持のため、電力5社から得る基本料金が主な収入源で、17年3月期の連結売上高は1099億円、最終(当期)損益は64億円の赤字だった。連結従業員数は3月末時点で約1800人。

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