[2023_06_12_03]使用済み核燃料、関電が仏に搬出へ 中間貯蔵施設県外設置と「同等」(毎日新聞2023年6月12日)
 
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使用済み核燃料、関電が仏に搬出へ 中間貯蔵施設県外設置と「同等」

 関西電力は12日、福井県の原子力発電所に保管している使用済み核燃料の一部を2020年代後半にフランスに搬出すると発表した。また、使用済み燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」を県外に設置するとの福井県との約束に関し、海外搬出により「ひとまず約束は果たされた」との認識を示した。関電から報告を受けた福井県の杉本達治知事は回答を保留した。今後、福井県側が関電の方針を受け入れるかが焦点となる。

 福井知事は回答留保「内容を精査」

 関電によると、高浜原発(福井県高浜町)に保管されている使用済みのウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料約10トンと、通常の使用済み燃料約190トンの計200トンをフランスに移送する。200トンは関電の保有する原発全7基から出る使用済み燃料の約1.5年分に相当する。
 杉本知事と福井県庁で面会した関電の森望社長は、「使用済み燃料が福井県外に搬出されるという意味で中間貯蔵と同等の意義がある。計画地点の確定は達成され、年末としていた福井県との約束はひとまず果たされた」と語った。
 関電の原発が集中立地する福井県は、使用済み燃料の県外搬出を強く要求。関電は21年2月、中間貯蔵施設の計画地を23年末までに確定すると福井県側に約束。約束が果たせなければ「原発の停止もやむを得ない」としてきた。
 今回の関電の主張は、使用済み燃料の海外移送を県外搬出と位置付け、中間貯蔵施設の立地選定を事実上棚上げする形となる。杉本知事は「内容を精査したい。立地市町や県議会などの意見も聞いて判断したい」と述べるにとどめた。
 フランスへの搬出は、使用済み燃料を再処理して製造するMOX燃料をさらに再処理する実証研究の一環。電力大手で構成する電気事業連合会が12日に計画の枠組みを公表していた。
 ただ、フランスに搬出する200トンは、関電が「30年ごろに2000トン規模で操業開始」としていた中間貯蔵規模の1割程度にとどまる。今後も追加で海外搬出できる保証はないが、関電は「(県外搬出の)規模は約束に含まれていない」(幹部)と主張した。
 使用済み燃料の中間貯蔵施設を巡っては、東京電力HDと日本原子力発電が青森県むつ市で中間貯蔵施設を建設し、23年度の受け入れ開始を目指している。一方、関電など中間貯蔵施設を確保していない電力大手も多く、原発稼働の最大の課題となっている。【妹尾直道、田畠広景】

 問題の先送り 政策の苦しさ示す

 電力会社にとって、原発内の貯蔵プールにたまり続ける使用済み核燃料は「悩みの種」だ。極めて高い放射線を出すため、厳重な管理が必要になる。東京電力福島第1原発事故を経験した日本で、関西電力が福井県外のどこに「中間貯蔵施設」を立地できるのか、注目が集まっていた。
 フランスに搬出されることが決まった200トンは、関電が抱える使用済み核燃料のわずか5%。さらに関電は原発の再稼働を進めており、これからも使用済み核燃料は増え続ける。今回の関電の決定は、根本的な解決ではなく、問題の先送りでしかない。
 日本は、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、原発の燃料として再利用する「核燃料サイクル」を掲げる。しかし、青森県六ケ所村の再処理工場はトラブル続きで稼働に至らず、最も効率的にプルトニウムを消費できる高速増殖炉の「もんじゅ」は廃炉が決まった。中間貯蔵施設の需要の高まりは、核燃サイクルが事実上、破綻していることの裏返しでもある。
 福井県は1997年から中間貯蔵施設の県外設置を求め、歴代の関電の社長が県外設置を約束していた。しかし計画地の選定が進まず、関電は約束の期限を何度も延期してきた。2020年12月には、青森県むつ市の他社施設を関電が共同利用する案が浮上したが、むつ市の猛反発を受けて頓挫した。今回の決定で、長年の約束が果たされたと言えるのか。
 政府は原発の運転期間を延ばし、建て替えを進める方針に転じたが、使用済み核燃料の問題は全く解決への道筋が見えていない。今回の関電の決定は、日本の原子力政策の苦しさを如実に表している。【柳楽未来】
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