[2023_03_30_10]電力販売の完全自由化を"骨抜き"にした『電力カルテル』 違反行為を"主導"した関西電力はおとがめナシ(関テレ2023年3月30日)
 
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電力販売の完全自由化を"骨抜き"にした『電力カルテル』 違反行為を"主導"した関西電力はおとがめナシ

 公正取引委員会は30日、大手電力会社がお互い競争しないよう約束していた独占禁止法違反の疑いで、3つの電力会社に対し、1千億円以上の課徴金の支払いを命じました。
 違反行為は関西電力が中心となっていて、電気代を安く抑えたい消費者の生活を直撃する事態になっていました。

 ■電気料金の「値下げ競争」に歯止めかける違法行為に過去最高額の課徴金

 電気料金の”値下げ競争”に歯止めをかける電力カルテルによる独占禁止法違反の疑いで、関西電力を除く3つの電力会社(中部・中国・九州)に対し、過去最高の合計1000億円を超える課徴金の支払いが命じられました。
 経済担当の鈴木祐輔記者によりますと「私たち、一般消費者はもっと怒った方がいい」とのことなのですが、その理由をみていきます。
 なぜ関西電力がカルテルの中心になったのでしょうか?カルテルに至る経緯を振り返ります。
 電力自由化は2000年から、事業用の企業向けの電力から段階的に始まりました。ガス会社や通信会社など違う業種の企業も、新規参入の「新電力」として競争に参加。値下げ競争が厳しくなる中で2011年の東日本大震災が発生し、原発は全て停止しました。”原発比率”の高い関西電力の経営状態は一気に苦しくなります。
 福島第一原発の事故や、電力の供給不足などをキッカケに、従来の電力を取り巻く仕組みに様々な矛盾や限界が見えてきました。このため電気事業の体制や制度的な枠組みを抜本的に見直すため、2016年に電力は「完全自由化」となります。
 これにより関西電力は新電力会社との競争が激化。2017年に90万件の顧客を失っていた関西電力は、高浜原発の再稼働で値下げ。翌2018年には大飯原発も再稼働して再び値下げしましたが、同時に、「東京電力エナジーパートナー」も関西圏で値下げするなど、さらに競争が激化しました。

 【経済担当キャップ 鈴木祐輔記者】
 「値下げをし過ぎたことにより関西電力は窮地に立たされました。関西電力は原発が多いので本来は価格競争で有利に見えますが、顧客の獲得で増えた収入(440億円)を、電気料金の値下げにより収入が減った額(1080億円)の方が上回るなど、伸び悩みが大いに目立つ事態になったのです。
 カルテルが始まったのは、ちょうどその頃とされます。そこで、関電は他社と『自分のエリアだけで商売をしよう!価格競争はほどほどにしておこう』という流れになっていきます」

 ■”原発”への依存度が高い関西電力は苦境

 もともとは”企業向け”の電力の話なので、一般消費者には関係ないのでは?と思われるのですが…

【経済担当キャップ 鈴木祐輔記者】
「事業者向けの電気代の値上がりは、世の中のモノの値段に直接影響して値上がりにつながります。電力の自由競争が進んでいれば、消費者は広く、色々な電力会社を選べて、電気代をもっと安くできたはずです。
 ”もっと値下げした状態”からの値上がりであれば、ウクライナ危機による電気代の高騰があるとはいえ、ここ最近の電気代の高騰も、もう少し和らいだ可能性もあるわけです」

 ■カルテルの”中心”だった関西電力がなぜ?”おとがめナシ”なのか…

 次に、カルテルの中心だった関西電力が課徴金免除になるなどなぜ今回お咎めなしだったのでしょうか。
 公正取引委員会では、カルテルや談合について「課徴金減免制度」を設けています。最初に自ら申告した場合は全額免除。減免率100%、1銭も払わなくていいというルールです。2番目、3番目の申告でも課徴金の「減免率」をあらかじめ定めているのです。
 事業者同士で結ぶカルテルは表に出にくいものなので、この制度で不正を発覚しやすくし、真相究明を効率的に行うため、日本では2006年に導入されました。関西電力は発覚前に自己申告したので課徴金はゼロ、排除命令もなし。ただ…

  【経済担当キャップ 鈴木祐輔記者】
 「実は関西電力は、電力自由化になっているのに、他地域のシェアをグンと減らしていました。
 『なにかやっているのでは…』と当時から噂されていました。もし”追い込まれての自己申告”でのおとがめナシという話なら、”この制度ってどうなんだろう”と感じる消費者の方も多いのではないでしょうか」
 顧客獲得に制限をかける取り組みは、関西電力と中部電力、関西電力と九州電力、関西電力と中国電力…と、すべて関西電力を媒介してのカルテルだったとのことで、まさに主導的な立場だったわけですね。
 関西電力は他にもこのような行為に及んでいます。
 2020年に分社化した関西電力の「送配電会社」は、本来、新電力事業に参入する会社も、この送配電網を平等に使うべきものとして設立されました。ところが送配電会社は関電の子会社で、親会社である関西電力は、送配電会社の契約データをのぞき見していました。どんな人がどんな契約をしたのかを見ていたのです。

 【経済担当キャップ 鈴木祐輔記者】
 「子会社が持っている情報は多岐に渡ります。電話番号、新電力会社との契約内容、使用電力量、深夜機器情報などです。実際に不正閲覧をしたのは15万件ほどで、そのうち4332件で顧客を関電に引き戻す営業をかけていたことが発覚しました」

 【関西テレビ 神崎博デスク】
 「関西電力と送配電会社の”資本関係”は100%子会社でした。確かに法的には別会社ですが、事実上、関西電力の支配下にあったわけです。この体制に疑義を唱える声は当時からあったものの、監督官庁の経産省は抜本的な見直しをしようとはしてきませんでした」

 【経済担当キャップ 鈴木祐輔記者】
 「送配電の情報をのぞき見した、完全に電力自由化を骨抜きにする行為をした。今回、一番厳しく罰せられるべきは、”課徴金ゼロ・おとがめなし”の関西電力だったのかもしれません」

 “完全自由化”と言いつつ、ガリバーである関西電力の存在が強く影響していたわけで、自由化の制度そのものの見直しも改めて必要なのかもしれません。

(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月30日放送)
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